それぞれの戦い方

 ――鉱山ダンジョン


 前は11階層から入ったが、1階層も構造自体は変わらない。迷路のような構造になっており、その先々にモンスターが出現する。


 1階層から4階層までは廃坑道に出現する坑道モグラや草原ラットの属性違いである坑道ラット、そして各種鉱石によって構成されたゴーレム系モンスターがほとんどだ。たまにゴーレム系のレアモンスターとしてシルバーゴーレムが出現するらしいが確率は本当に稀。ここで出る銀の出処はどうやらこいつのようである。


 さて、まずは坑道ラットと坑道モグラが現れる。まずは前衛の出番というところか。


「おりゃあー! 『鉄拳』! 『添撃打てんげきだ』ァ!」

「グレイ! 『鼓舞』! そして坑道モグラに『連獣爪』だ!」

「――ガルルゥゥァ!!〔『連獣爪』ッ!〕」


 ハルは坑道ラットに対し、一度だけSTRにVITの数値を加算するスキルである『鉄拳』を使用後、【格闘術】の初期アーツである『添撃打』を使用し、そのままダンジョンの天井へと叩きつける。添撃打は通常の打撃に追加で衝撃を与えるというものである。


 グレイは俺の『鼓舞』を受けて、坑道モグラに対して【獣戦術】のアーツである『連獣爪』を発動、文字通り真っ二つに切り裂いていく。


 レベル帯が近いためか、追加効果を付与した攻撃でなんとか打ち倒すことができる。


 なお、ゴーレム系だけは斬撃系統の武器による攻撃が通りづらいという特徴がある。うちのパーティーの場合は、弓を使うミュアと弩弓を使うユキがこれらの系統に当てはまるのだが、実はそう問題ではなかった。


「『エンチャント・ウィンド』! ――『アルファアロー』!!」

「『エンチャント・ウォーター』――『クラスターショット』」


 また新たな敵とエンカウントした際に、ミュアとユキが同時にアーツを発動し、眼前に立ちはだかっていたストーンゴーレムを吹き飛ばしていく。


 斬撃系統が問題ないといったが、ミュアの場合は精霊弓士のジョブスキル、そしてハルの場合は【弩弓術】のスキルにある『エンチャント』を使用することで、スキル使用後の攻撃に属性効果を付与することができるというのが答えである。


 例え斬撃系統に耐性があっても、付与した属性ダメージの方で十分ダメージを与えることができるのだ。


 なお、同じ名前のスキルではあるが、ミュアの方は自身のMPを消費して特定の属性を付与することができるのに対し、ユキの方は特定の属性値を持ったアイテムを消費することで属性矢を生成するというものになる。


 ミュアの場合、付与できるのは自身の精霊種としての属性である風属性のみとなっている。その為、先程発動した『アルファアロー』――アルファの文字のように矢の周囲にオーラがくっついて放たれる【霊弓術】のアーツだ――に風が渦巻いて放たれている。


 ユキの場合、エンチャントの際に水属性の属性値を持つ『井戸水』を特定数消費したことで水属性矢を生成、それを『クラスターシュート』――ひとつの矢から無数の矢をばら撒く、弩弓術版の『アローレイン』である――で用いることでそのアーツに水属性を付与した。


 そうして、ミュアやグレイ、ハルとユキはあっという間に敵を打ち倒していく。さて、今度は俺たち自身の実力も見せないとな、ゼファー。


「よし、ゼファー! 俺たちは一緒に行くぞ! ――『天嵐の息吹ブレース・テンペスト』!!」

『おうよ! 『天嵐の息吹』っ!!』


 俺はゼファーと共に精霊術スキルである『天嵐の息吹』を次にエンカウントしたロックゴーレムの団体に向けて発動する。ゼファーの場合は自身の口から吹き出す形であったが、俺の場合は宝風剣から風を解き放つ形となる。


 これらは風属性の攻撃であるため、土属性のロックゴーレムには効果が高い。宝風剣の補正効果も相まってか、あっという間に粉々に砕け散っていった。うーん、やはりあの古代遺跡を経験してるからか、ダンジョンの敵が弱く感じてしまうな。全然そういうわけでもない筈なのに。


 なお、初期基本属性である火・水・風・土は火→風→土→水→火という形で相性があり、矢印が向く方に対しては弱点となって効果が高くなり、矢印の逆方向に向けてだと耐性となり効果が減衰する。つまり風属性の攻撃は土属性の相手に強く、火属性の相手には弱いということになる。


 まぁ、第一エリアの場合は弱点属性というよりも属性効果という追加効果自体に弱いモンスターが多いようなので、取り敢えず何らかの属性効果を付与しておけば大ダメージが与えられる。


「ユーくんも中々やるわね。なら私も行くわよ! 『サンダーランス』!」


 シグねぇは次のモンスター群に対して杖をかざし、魔術スキルを使用する。スキル名の前半が付与された属性、後半が使用する魔術スキルの種類を表す。『ランス』はおそらく【中級魔術】の魔術スキルだろう。因みに属性付与がなければ魔術スキルは総じて無属性のものになるらしい。


 魔術スキルに属性を付与するには【属性付与】というアビリティを、自身かジョブアビリティで習得しておく必要があり、シグねぇの場合だと習得したジョブである大魔導士のジョブアビリティで基本属性の火・水・風・土・雷までの属性付与を習得していた。最終的には全ての基本属性が扱えるようになるらしい。


 因みに、本来ならば魔術スキルを発動する際には『詠唱』と呼ばれる特定の前口上を唱える必要があるのだが、大魔導士の場合はそれらを唱える必要がないらしい。逆に唱えれば威力が上がるようで、ここぞというときには詠唱を使うとのこと。


 通常は【詠唱破棄】を習得でもしなければ、詠唱を唱えないで魔術スキルを使用することはできない。その【詠唱破棄】に関しては、ナナミさんがついている『魔法使い』を始めとするクラス3の魔術士系ジョブのジョブアビリティにはほぼ確実にあるとのことだが、詠唱なしで発動する場合は通常よりも威力が幾らか減少するというデメリットがあるらしい。そう考えると、大魔導士の破格さがよく分かるというものだ。


 ここまでの戦闘で、俺を始めとしてハルやユキも色々工夫しながら戦闘をしていたのだが、シグねぇの場合はそんな小細工なんて不要だと言わんばかりの圧倒的火力で敵を粉砕していく。明らかにレベル以上の何かが違う気がする。ヤバすぎる。


 ぶっちゃけ、シグねぇ1人居れば後は不要だと言わんばかりの殲滅っぷりである。


 まぁそんなこんなで、1階層から始まった鉱山ダンジョン攻略はあっという間に最初のフロアボスが待ち受ける5階層まで到着することとなる。


 途中で迷路の行き止まりで宝箱を何回か見つけたが、いずれも普通の鉱石アイテムだったので均等に分配することとなった。

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