ダンジョンへ向かおう
その後、俺たちはハルとユキの御所望もあって鉱山ダンジョンへと挑むこととなった。
今回は普通に攻略することとなるため、普通に1階層から始まる。因みにシグねぇたちは既に5階層までは挑戦済みらしい。
今回、シグねぇたちと俺とで4人以上になるために従魔は1人につき2体までしか連れていくことができない。新機能のパーティーコネクトを使おうかと思ったが、そうなるとせっかくの経験値が少なくなってしまう。
「うーん、すまないけどNPC枠として組み込んでいいか? ミュア」
「えっと、私は構いませんよ。ただ繋がりがなくなりそうで、少し哀しいですけど……」
それ言われるとやりづらくなるやつ! とはいえ、ゼファーかグレイを置いていくというわけにもいかない。
どうにも先程、双子からわちゃわちゃされているときに種族の件でミュアも考えることがあった様子で少しばかり不安感を抱いていたようだった。こういった反応を見るとNPCではなく、この世界に生きる存在の一つなのだということをふと考えさせられる。因みに2人ともシグねぇからあまりにデリカシーがないと怒られていた。
無論、こちらで勝手に操作してNPCとして組み込むことはできるのだが、それだと何かこう……モヤモヤする感じになりそうなので、それは避けたいところだ。
取り敢えず、契約者としての繋がり自体は無くならないよと説得することで、NPCとして組み込む事には理解してくれた。済まないな、次からは普通にパーティーコネクトを使おう。
なお、前にも説明したがミュアは特殊使役キャラという従魔・使役モンスターと戦闘NPCの両方の側面を持つ
それ故に、獣魔編成から外すとNPC扱いとなる。その場合でも、契約主である俺の指示は本人の意志に反することでなければ、ある程度は聞いてくれるし、自分で考えて行動もしてくれる。
その後は彼女が求め、そして俺が許可をすれば、ギルドに駐在するお助け用の戦闘NPCのように他のパーティーに組み込むこともできるが、多分今回の様子からすると、しばらくは無理そうだ。彼女自身が他のプレイヤーと触れ合って、交流していけば、いずれは別のパーティーに送り出しても大丈夫なのかもしれないが。……まぁ、難しいだろうな。
たかがゲームのNPCと人は言うのかもしれないが、これだけリアルに思考し、行動しているのだから、もう人として少し寄り添って考えてみるべきなのかもしれないな。人によってNPCの扱いは全然違うわけだし、NPCという存在をどう扱うのかはそれこそゲームにおける今後の課題になりそうではある。特にミュアの種族である『ハーフエルフ』はこの世界的にも割とデリケートな存在だしな。そもそもゲーム内におけるヒト種族以外が総じて姿を現したがらないことから、ある程度の事情は察することはできるわけだ。
……まぁ、ミュアに関する問題は、それこそミュアと契約した俺の役目となるだろうな。
さて、NPCとして入れる場合だが、モンスターとしてのレベルだけでなくジョブやアビリティの経験値も一切手に入らなくなる。とはいえ、今のミュアはモンスターとしてのレベル自体は、カンストなのでさほど問題はないだろう。
あとは、従魔として扱った際のマイナス補正はきれいサッパリ無くなっている。まぁ、同時に従魔士のジョブによる補正も消えるので、結果的には「ちょっとだけ強くなったかな?」程度にはなる。サポートも受けられないが、まぁ心配は不要だろう。逆にこっちがモンスターリンクでミュアとMPリンクができないのというのが不安ではある。
こうしてパーティー編成が完了したが、随分と後衛が多いパーティーになった。前衛はハルとグレイくらいしかいない。まぁ、俺も前衛は出来るが正直来たやつを捌く程度しか出来ないからやめておこう。昨日みたいに出しゃばって集中攻撃浴びかけるなんてことになりかねない。
まぁ、両方に対応できるよう後衛のミュアやシグねぇ、ユキよりは前に出ておく。ゼファーも一緒だ。
ミュアは先程までの雰囲気はどっかへ行ったのか、取り敢えず3人とは仲良く話せるようにはなったらしい。良かった。
弩弓使いのユキだが、弩弓はその大きさ故にAGIが低下しやすいと聞いていたが、ジョブの特性や武器で結構AGIが下がったらしい。
その代わり、ランダムで入手した【健脚】と後はアビリティポイントを使って習得した【快脚】【全力疾走】でAGIの数値を底上げしている。
これらのアビリティは全て元のステータス値を底上げする効果アビリティとなる。その効果の程は【健脚】がAGI+20、【快脚】がAGI+40、【全力疾走】がAGI+60となる。必要なポイントは【快脚】が5ポイント、【全力疾走】が7ポイントだ。順番にしか習得できず、一つでも忘れたらすべての関連アビリティが効果を失ってしまうが、全て合わせてAGIが120は上がる。それでマイナス効果は帳消しどころか、結果としてそれなりに上がっている。
因みにユキがこういうステータス値を上げる効果アビリティの習得できたのは、最初の【健脚】を持っていると特定のNPCがそれに反応して依頼を出してくる事があり、それをクリアしたら【快脚】が習得可能になっていたとのこと。しかもチェーンクエストになっており、2つ目の【全力疾走】はこの鉱山の村にいたNPCによる依頼だった。
今のところはランダム以外には不明となっている最初の【健脚】の習得条件さえ分かれば、レンも続けて習得することとなるだろう。まぁ、今の段階でもかなり速いので増やしたところで……というのもあるが。
「そういえばユーくん、シルバーアッシュウルフのテイムできたのね。良かったわね、念願のもふもふをテイムできて」
「マジ大変だったんだぜ。でも、今は大切な仲間だから……な! グレイ!」
「アォン!!〔はい!!〕」
そう言うとグレイが嬉しそうに吠えてくれる。うん、やっぱいいなこういうの。
「へー! ってことはグレイって、レア個体なのか! あのね、あたしたちもレア個体倒したんだよ! ラピッドラビット!」
「そう。ラピッドラビット。すばしっこくて大変だったんだ」
ハルとユキが楽しそうに話してくる。そうか、あのラピッドラビットを倒したのか。
シグねぇ曰く、めちゃめちゃすばしっこいのに、めちゃくちゃ体力があるから、下手すれば長期戦になってこっちがバテて結局倒せないという事が多いらしい。レア個体なので経験値もドロップアイテムも美味しいのだが、結果として倒せなければ意味がない。最終的には倒しきれずに逃げ出してしまうこともあるらしい。
因みに3人おそろいの靴防具はそのラピッドラビット討伐の際にドロップしたアイテムらしい。今は強化してAGIのステータス追加効果が出ているが、元々は【駆け足】というアビリティを付与する装備だ。
【駆け足】は【早移動】の移動時にAGIが1.5倍の効果が戦闘中の通常移動の際に発動するようなものとなっている。まぁ、その効果は1.25倍と少し弱めにはなっているが。なお、ユキは【早移動】も習得済みだ。それらの習得条件はネットにまとめられているらしいので、後で調べておこう。
「さて、そろそろ鉱山ダンジョンだな。それじゃあ、挑むとしますか!」
「はい、ユークさん!」
「おー!」
「おー」
「お、おー……?」
俺の宣言に元気よく答えるミュアとハル、普段どおり物静かに答えるユキ、そしてどういうテンションで返答すればいいのか分からず疑問符を浮かべてしまったシグねぇ。
ミュアからの好感度が高すぎて、なんかそれはそれで怖いんだがもう気にしないことにしよう。
さて、ダンジョンの攻略開始だ。目指すはまず5階層、そしてその先の10階層だ!
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