進化するゼファー
ゼファーのレベリング開始から小一時間が経つ。今のところゼファーのレベリング自体はうまく行っており、既にレベル19まで到達している。
新しい精霊術を覚えたり、アビリティを獲得したりしていたが、何よりも自分自身に自信を持てたことが一番大きいのではないかと思う。
鉱山の村に入るために廃坑道でボスエネミーであるセラミック・ゴーレムと戦い、不意に受けた攻撃で倒れかけた頃と比べると雲泥の差だ。
あの時はかなり落ち込んでたからな。一晩経って戻りはしたが、あれから勝手に飛び回ることも無くなったし、基本的に俺にくっついて離れなくなった。
こちらとしては何処に行ったのかと心配しなくて済むのだが、もう少し活発に遊んでいて欲しくもあったので、こうして立ち直ってくれて本当に良かった。まぁ調子に乗りすぎて攻撃を受けそうになるところは相変わらずだが。
ミュアとの連携も中々様になってきた。『突風』を起こしてミュアの放った矢を加速させたりなどは、中々真似しようにも真似できない。できるとすれば弓士の放った矢にタイミングよく魔術士が風属性の魔術スキルを放つ感じか。
まぁ、それを抜きにしてもミュアがゼファーが攻撃しやすいように矢を放って誘導しているので、ゼファーは効率的に攻撃できていた。
最初は矢を無駄にしてるんじゃないかと思って注意しかけたが、そう言うことならば大歓迎だ。
因みにミュアの場合、精霊弓士の【霊矢生成】というアビリティの効果でMPを消費する設定で自動的に矢を作り出すことが可能となるため、矢を用意する必要はない。まぁそれでも無駄に高いMPの少ししか使わないのだが。
とはいえこのアビリティで生成できるのは攻撃力が低い最低ランクの矢なので、もっと火力を出したければ別途、高ランクの矢を用意する必要はあるのだが。まぁミュアの場合は矢の種類が何でも、武器やアーツによる火力が高いので今のところは問題ないだろう。
取り敢えず、注意しなくて良かった。思いっきり恥をかくところだった。
「くらえー! 『
ゼファーがレベリングの最中に覚えた精霊術スキルを発動すると、その小さな口から猛烈な嵐のよな息吹が解き放たれる。『緑精の大旋風』よりは威力は低めだが、それでも目の前のアッシュウルフを天高く吹き飛ばすだけの威力は持っていた。
そのまま空にかち上げられたアッシュウルフは勢いよく地面に落下する。明らかにおかしな方向に脚が曲がっているので、思わず手で目を隠してしまった。流石にフィルタリングはされてるが見たくないものは見たくないのだ。
〈灰狼の毛皮×2、獣骨【中】×3、魔核【中】を入手しました〉
〈経験値を獲得しました。レベルが1、上がりました。アビリティポイントとステータスポイントが付与されました〉
〈ジョブレベルが上がりました。アビリティ【従魔との絆】、スキル『モンスターエンハンス』を修得しました〉
〈ゼファーのレベルが上がりました。条件を満たしたので、進化可能になりました〉
落っこちたアッシュウルフはそのまま姿を消し、戦闘リザルトが明らかとなる。ちょうど俺のレベルがパーソナルレベルとジョブレベルと同時に上がったようだ。これでパーソナルレベルは24、ジョブレベルは10となる。
新たに習得した【従魔との絆】は従魔との絆が深いほど、モンスターの扱うスキルやアーツの追加効果が発生しやすくなるというものだ。
『モンスターエンハンス』はモンスターのステータスを強化するスキルだ。『鼓舞』と異なりMPは消費するが、一定時間強化するので手数が多い従魔にはこちらのほうが相性が良かったりする。
……と、今はジョブの方よりも気にすべきことがある。
「よくやったな、ゼファー! ついに進化可能だぞ!」
「おー! おいら、もっと強くなるんだな!」
「おめでとうございます! ゼファー様!」
進化ができるということを聞き、嬉しそうに飛び回る。ミュアもお祝いしている。
だがふと考えて、進化させたあとのゼファーはどんな感じになるのだろうかと思ってしまう。もしおおきくなったら流石に肩には乗れなくなるだろうな……。
まぁ、どんな姿になってもゼファーはゼファーだからな。そこまで心配はしていない。
取り敢えず進化する前のゼファーのステータスを確認しておこう。比較は大事。
――――――――――――――――――
名前:ゼファー
レベル:20
種族:精霊【進化可能】
状態:特殊契約従魔
契約者:ユーク
HP:110 / 110
MP: 500 / 500
STR:52【×1.3】
VIT:52【×1.3】
INT:234【×1.3】
MIN:117【×1.3】
AGI:208【×1.3】
DEX:117【×1.3】
・アビリティ
【精霊術・風】【回復術】【木工術】【いたずら心】【飽き性】【頑張り屋】
・スキル
精霊術(『
・アーツ
『突風』『竜巻』『旋風』
――――――――――――――――――
精霊術の中から『鎌鼬』が消えているが、名前が似ている精霊術をレベル20で覚えているので、どうやらその上位互換の精霊術に統合されたようだ。
因みに『緑風の弾丸』と『緑風の大弾丸』は名前は似ているが、別系統の攻撃なので残っている。ただ、精霊術が無くなったのは今回が初めてなので少し動揺している。まぁ多くても扱いに困るので、良かった……のか?
取り敢えず、消費MPが極端に上がったりしてなければ問題はないだろう。威力も上がっていれば重畳だ。
「……よし、ゼファー。今からさっそく進化しようと思うが、大丈夫か?」
「おう! まかせるぞ、相棒!」
ゼファーが了承してくれたので、ステータスの欄から進化ツリーを表示させる。
さっきまでは黒塗りだったが、今はその情報が記載されている。
進化後の種族名は『
一旦迷いかけたが、再度ゼファーの方を見てその眼差しに迷いがないことを確認した俺は、進化を確定させる項目を選択する。
〈進化を開始しますか? YES / NO〉
そして今度は迷わず、『YES』を選択した。
すると、ゼファーの周囲を白い風が覆い尽くす。そして次の瞬間にはその白い風を中心に光が輝き、進化して生まれ変わったゼファーが現れる。
……外見的には特に変わってはいない。ポンチョが銀河のような柄になり、髪の色にインナーカラーとして青が追加された。それ以外はそれまでのゼファーと変化はあまりない。
急激な変化を予想していたが特に変わらずということで、それでも進化したゼファーのステータスは確実な変化を迎えていた。
――――――――――
(7/27)『キャラメイク』にて一部アビリティ関連の説明を修正しました。
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