第三章『新たな出会い』

頼まれ事と新たな仲間

3日目の始まり

 ――ダイブイン、アルターテイルズ


 ゲーム開始から3日目の朝。今朝はなにもないところでくしゃみをしたので夏風邪を心配したが、特に体調に異変はなかったので普段通りアルターテイルズにログインすることとなった。


〈第二エリア開放に伴い、本日よりメニュー機能『パーティーコネクト』『レイドコネクト』が開放されました〉


 俺は最後にログアウトした鉱山の村の広場に立つ。すると、いつものアナウンスが鳴り響く。どうやら第二エリアが開放されたことで一部の機能が開放されたらしい。


 『パーティーコネクト』は2つのパーティーを1つのパーティーとして扱う機能で、最大人数12人で一つの敵に対して攻略することが可能になる。ただし、この機能を利用すると経験値が使用時にまず8割に減少し、更にパーティーの人数が7人以上から5%ずつ減少、ダブルフルパーティーだと合わせて最大50%減少する。戦闘効率は良くなるが、経験値は減ってしまうため使い所は考えものだ。なお、従魔の最大数に関してはそれぞれのパーティー毎で通常通り計算されるらしい。


 『レイドコネクト』は特定のモンスターに対して最大10パーティーで挑むことができるようになる機能だ。こちらは経験値の減少などは起きないが、使い所が特定のモンスターと限られていることから、レイドボスやレイドイベントのようなものが第二エリアで発生するものだろうと推測できる。


 因みに、ソロプレイヤーはパーティーではないのだが、従魔士のような使役モンスターを利用するプレイヤーは従魔編成を行う都合上、ソロでもパーティー扱いになるため、他のパーティーとパーティーコネクトをすることは可能である。


 特に【連れ歩き数+】はあくまで他にプレイヤーがパーティーにいない状況でのみ効果を発揮するアビリティなので、他のプレイヤーと組むと必然的に2〜3体に制限されてしまう。なので、4体以上連れて他のプレイヤーと共闘する場合、このパーティーコネクトが役に立ちそうだ。


 まぁ、まだ俺の場合は2体しか従魔はいないのだが他の従魔士は結構テイムしているらしいので、俺も負けないようにしないといけない。


 新機能を確認した俺は、取り敢えずミュアとゼファーを迎えに行くついでにケイルの精霊の件を済ませたいので、ケイルのアドレスに連絡を入れる。返事はすぐ帰ってきた。大丈夫だそうだ。




 その後、迷うことなく異種族孤児院の方へと向かうと、庭で遊んでいた孤児院の子供たちから出迎えられることとなる。みんな元気だなぁ。


「あー! せーれーのおにーちゃんだー!」

「わー! ケイルに知らせよー!」


 子供たちは俺の周りを取り囲むとワイワイと騒ぎ出す。獣人の子供はケイルを呼びに行ってくれた。うん、いいこだ。


 そしてしばらく経つと、ニコニコ顔のケイルとミュア、そしてそんなミュアに抱きしめられて魂の抜けていそうな顔のゼファーが現れる。


 ……ん? どうしたゼファー? 子供たちに振り回されたか?


「おはようございます! ユークさん!」

「あぁ、おはようミュア。ゼファーはどうしたんだそれ?」


 俺がそう聞くとケイルが代わりに答える。


 まぁ予想した通り子供たちに振り回されたのは合っていたのだが、なおかつミュアの猫可愛がりによって地味にダメージを受けており、なおかつ寝るときにはしっかりとミュアに抱きしめられていたのだとか。


「おい相棒! こいつどうにかしてくれよ! おいらのこと、人形かなんかだと思ってるぞ!」

「そんなゼファー様! 私はゼファー様を敬愛して……」


 ミュアは無実を主張するが、ゼファーから避けられている事実は変わらない。


 まぁ、ゼファーが苦手意志を持つのは珍しいのでそのまま見ててもいいのたが、仲間内でギクシャクしてしまうと今後の連携に問題があるため、ミュアにはゼファーに対する過度なスキンシップはしないようにお願いした。流石にへそを曲げて契約破棄なんて起きたらシャレにならないからな。


 ミュアも不承不承な感じがありありと伝わってはくるが、取り敢えず了解してくれた。


「さて、ユーク! 早速精霊サマに会いに行こう! 善は急げだ!」


 一方、ケイルがあまりにも楽しみすぎるのか、早く行こうと急かし始める。いや、遠足に早く行きたい小学生かよ。


 取り敢えず、そこまで焦っても失敗するだけなので、落ち着かせるために一発頭を叩いておいた。少しは目が覚めてくれるといいが。


 俺はケイル

に場所を教える代わりに、行く前後でヤバそうならサポートしてくれるよう頼む。まぁ、あの場所でレベリングをするつもりではあるから問題はなさそうだけども、念の為。


 ケイルは問題ないと言ってくれたので、さっそく移動することになる。ケイル自身は噴水の転移ゲートを使えないため、森林エリアの入口で落ち合うこととなった。

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