精霊姫のステータス

 ワールドアナウンスが響いた瞬間、結構近い場所から歓声が上がる。


 俺たちはそれどころではなかったので情報を取り入れそこねていたのであるが、どうやらチーム『クロノス』によってエリアボスのレベルダウンのギミックが発見されたらしく、それを利用して先程挙げられていたチーム『クロノス』によってエリアボスが攻略されたようだ。


 結果として最初の一組が突破したことからエリアボスは弱体化し、次から次に第二エリアに移行しようとするプレイヤーが出てきていた。


 現状の第一エリアのカンストであるレベル30が推奨されているが、実際にはレベル25程度の4人パーティーでも頑張れば行けるくらいには弱体化しているらしい。


 そのため、非戦闘職もチームやパーティーに組み込んでいれば廃坑道のボスエネミーであるセラミック・ゴーレムと同様に、セーフティエリアで待機してもらって倒すのを待ってもらい、その後に一緒に行くということは可能であった。


 実際にその仕様を利用し、掲示板等で募集をかけるという形で、戦闘職1人と生産職や戦闘できない特殊職のような非戦闘職5人が集まってチームを組み、更にそのチームの戦闘職1人がそれぞれ6チーム分集まって組むことでパーティーを形成し、最大30人の非戦闘職を第二エリアへとキャリーしているらしい。これは例の『クロノス』に所属する情報屋データバイヤーというジョブについたプレイヤーの発案らしく、開始早々募集スレはかなりの速度で流れていったらしい。


 因みにチーム『フライ・ハイ』のメンバーは、新たにメンバーになることが決まっていたサイモンさんの用事が終わり次第向かうとのこと。まだ、はじまりの街でリアル技術を教えきるのに、もう1日はかかるという話だったので、少なくともフライ・ハイのメンバーが先に行くのは明後日以降になりそうだ。


 フライ・ハイのメンバーと分かれたあと、俺とレン、そしてリーサはどうするかを話し合うことにした。ゼファーとフィーネにミュア、そしてケイルにも話を聞いてもらおう。


「俺はあと4レベルでカンストだから、攻略難度的には問題ないだろうが、ユークとリーサのレベルはな……それにミュアのステータスもどうなのか気になるところだ」

「そうだな、ミュアのステータスは……」




 ――――――――――――――――――

 

 名前:ミュア

 レベル: 30

 種族:ハーフエルフ

 状態:特殊契約従魔・特殊使役キャラ

 ジョブ:精霊弓士エレメントアーチャー レベル15


 HP:135 / 135〔-20〕【×0.75】

 MP:585 / 585(+30)【×0.75】

 STR:0【×1.3】【×0.75】

 VIT:0【×1.3】【×0.75】

 INT:429(+60)〔+30〕【×1.3】【×0.75】

 MIN:72【×1.3】【×0.75】

 AGI:97【×1.3】【×0.75】

 DEX:156(+40)〔+20〕【×1.3】【×0.75】


・アビリティ(25ポイント)

【霊弓術 レベル10 MAX】【弓術 レベル6】【曲射術 レベル10 MAX】【狙撃術 レベル5】【剛射術 レベル5】【正射必中】【精霊姫】

・スキル

『エレメント化』『エンチャント』『集中』

・アーツ

『ライトニングアロー』『エメトアロー』『シューティングスター』『メテオショット』『シングルアロー』『クイックショット』『アローレイン』『カーブシュート』『スナイプショット』『ムーンサルトシュート』『ヘヴィーシュート』


〈ジョブ〉

・特性

 習得時、INT+30、DEX+20、HP -20

 補正効果:INT+3、DEX+1、MP+1、HP-3、VIT-1【※※※レベル31から補正開始※※※】

 弓によるダメージ量の参照はINTで行う。

 精霊との契約がある場合、【霊弓術】【弓術】のアーツ、ならびにジョブアーツの威力が1.2倍になる

・ジョブアビリティ

【精霊の力】【精霊憑依】【霊矢生成】

・ジョブスキル

『ファイアアロー』『クイックアップ』

・ジョブアーツ

『ミスティックアロー』『ルナティックシュート』『オーバーレイ』


〈装備〉

・武器

 メイン:精霊姫の霊玉弓(成長度3 INT+60 DEX+40 MP+30)【変更不可】

 サブ:なし

・防具

 頭:精霊姫の髪飾り【変更不可】

 胴体:精霊姫の胸当て【変更不可】

 腕:精霊姫の腕鎧【変更不可】

 手:精霊射手の小手【変更不可】

 腰:精霊姫のスカート【変更不可】

 脚:精霊姫の足鎧【変更不可】

 靴:精霊姫の羽靴【変更不可】

 外套:なし

・アクセサリー

 なし

 なし

 なし

 なし

 なし


〈種族特性〉

 レベルアップ時のステータスアップは、HP+3、MP+5、STR+0、VIT+0、INT+4、MIN+2、AGI+3、DEX+3となる(これはジョブ補正は含まれていない)。

 精霊との契約が必要なアビリティ効果やジョブ特性は、契約なしでもその条件を満たす。

 精霊が側にいると、行動ゲージの回復が早くなる。


◎特殊使役キャラ:従魔・使役モンスターとして扱う場合、それらを対象とした効果を受け付けるが、全ステータスが0.75倍になる。戦闘NPCとして扱う場合は通常ステータスのままとなるが、従魔・使役関連の効果は受け付けず、また従魔・使役モンスターとしての経験値は得られない。


 ――――――――――――――――――




 うーん、これは……。


 流石は広義的なモンスター扱いというか、普通のNPCと比べてもかなり強い方なのではないだろうか。まぁNPCのステータスは見ることはできないが。


 まずもって、MPが高い。流石にリーサに比べると低めにはなるだろうが。惜しむらくは精霊弓士はアーツメインのジョブであるために、そのMPを利用するスキルをそこまで覚えていないという点である。これで魔術士系統なら、INTの数値も相まってかなり恐ろしいことになっていた。


 STRやVITは一切ないものの、その分INTがかなり高く、弓による攻撃をINT参照にする精霊弓士には非常に相性がいい。AGIもほどほど、DEXもそれなりにはある。


 プレイヤーとは異なるので、自由に振れるステータスポイントも無ければ、装備も基本的には変更不可である。だが、アビリティポイントは幾つか存在しているので、幾つかアビリティは習得させることはできそうだ。ただ、どうやって習得可能リストを確認するのかは今のところわからない。もしかしたら、はじまりの街みたいなところでの技能教習クエストみたいなものを利用しないと習得可能にならないのかもしれない。要検証だ。


 そしてゼファーと異なるのは、レベルアップ毎にステータスが必ず強化されるという点だ。そのステータス上昇値もジョブ補正抜きでかなり偏ったものとなっている。今のところ、ミュアは現状のカンスト状態なので第二エリアに行かなければレベルアップできない。


 因みに特殊使役キャラという区分は初めて見たが、どうやら従魔・使役モンスターと戦闘用NPCの2つの側面を持つキャラという事らしい。


 その扱いは独特で、テイムモンスターとして連れ歩く場合は0.75倍の弱体補正がかかるものの、従魔士の特性やスキル・アーツの効果の対象となる。これに関しては普通のNPCとステータスが変わらないためのバランス調整的な扱いだと思っている。ちょうど、従魔士の特性込みで素のステータスより少し低い程度になる。


 またNPCとしては元のステータスのまま、自分のパーティーにNPCの枠で入れることもできるし、こちらから許可さえ出せば他のプレイヤーのパーティーにも組み込むことができる。


 ただし、NPCとして参加する場合はたとえ俺と一緒のパーティーであっても従魔士の補正やスキル・アーツの効果の対象にはならないし、モンスターとしての経験値も手に入らないという、NPCと全く同じ扱いという事になるらしい。


 なんとも不思議な立ち位置のキャラクターであったが、どちらにしろ今の俺よりは特徴があって強い存在なのは間違いないだろう。


「……うん、そうだな。俺より普通に強いぞ」

「は? 何言って……うっわマジかよ。流石は精霊姫ってところか……」


 レンが俺が提示したミュアのステータスを見て声を上げる。このステータス自体はNPCであるケイルにも見えるようで興味深そうに眺めている。ミュアは何だか恥ずかしそうだ。


 まぁとにかく言えることは心配するほどミュアは弱くないということ。まぁ力が暴走しそうというくらいには力がありふれていた状態だった筈なので、それくらいは当然なのか……。


 しかし、パワーバランス的にはどうなんだろうか。一応、俺の従魔扱いではあるようで従魔士のモンスターに対するステータス補正はかかっているようだ。一応、『鼓舞』のようなステータス強化系のアーツや『モンスターリンク』の対象にもなるらしい。


 ただ、ミュア自身が元々調査隊でそこまで戦闘慣れをしていないだろうから、こっちが結構指示を出してあげないと難しいのかもしれない。まぁそこは従魔士としての腕の見せ所なのかもしれないな。


「取り敢えず、目下の目標はユークとリーサのレベル上げだな。それから第二エリアに挑戦って感じだ。おそらくだが、今週末辺りに運営が何かイベントをやりそうだし」

「成程な。俺はエリア移動の前に、ケイルの精霊の件と、サザンカさんのジョブ習得の方は終わらせておきたいかな。さっき、フレンドチャットに連絡来てたし、行くのならサザンカさんとはチームを組んでから行きたいし。……あ、あと俺は鉱山ダンジョンとかルプス牧場とかも見ておきたいかな!」

「なんか、やりたいことが多いわね。明日一日でできるの?」

「頑張れば何とか……?」

「無理はするなよ? ユーク。一応、お前が俺たちのリーダーになるんだからな」


 リーダー! そうか、俺が立ち上げるチームだから、俺がリーダーなのか……。なら無理はできないな。やれる範囲で行ってみよう。


 と、そうしてこれからの方向性が決まる。明日は俺とリーサは分かれてレベル上げすることになる。


 特にリーサはレベルが低いため、仮にフライ・ハイと同じくらいのタイミングで向かうなら、かなり効率的なレベリングが必要となる。レンがそのためのプログラムを考えるということで、リーサはみっちりしごかれる事を予感しながらも、少しだけ楽しそうに笑っていた。


 俺の場合、ゼファーとミュアが居るので戦力的には十分だろう。特にゼファーはあまりレベルが上がってないのでミュアとのステータス差も大きくなっている。そっちも効率的に上げてやらないとな。


 それに、ケイルの精霊の件やサザンカさんの武装鍛治士習得の件も第二エリアに行く前にやっておく必要がある。


 まぁケイルの精霊の件は道案内だけなので、レベリングのついでだと思えばいい。


 サザンカさんはサイモンさんのリアル技術の指導を最後までこなし、鍛治士はレベル20に到達してジョブチェンジチケットを入手できたようで、チャットには明日には勇気を出して武装鍛治士の習得に挑戦するという旨が記されていた。勇気が出たようでよかった。


 そちらの方も、ゼファーやミュアが居るので人手的には問題なさそうなので、俺一人で請け負うことになる。あわよくばサザンカさんには俺が作るチームに入ってもらう算段である。


 仮に時間があれば鉱山ダンジョンやルプス牧場には行ってみるということにしよう。何なら第二エリアに行ったあとに戻ってもいいし。


 そういえばさっきも言ったけどエリアボスに挑む前にチームも作っておく必要があるか……。名前どうするかな?


 よし、取り敢えず明日も色々やることがあって、楽しくなりそうだな!


「取り敢えず俺たちは孤児院の方に行ってから落ちるよ」

「おう、じゃあ取り敢えず合流は明後日だな。まぁ育成の進み具合次第だが」

「私、頑張ってレベル上げるからね!」

『私も頑張ります』


 そうして、レンとリーサはログアウトする。フィーネはアイテム扱いなので同時に消える。後に残ったのは俺とケイル、そしてゼファーとミュアだ。


「さて、それじゃあ今度こそ孤児院に向かうとするか。どうせミュアは泊まるところがないんだろうしな」


 そしてケイルの先導のもと、俺たちは孤児院へと向かうのであった。



 ――――――――――

(7/22)近況ノートにお知らせを書いてます。是非ご確認下さい。


(7/22)『精霊王と精霊姫』にて、簡単にではありますが属性についての一部設定の変更があります。ご確認下さい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る