ワールドアナウンス

 その後、精霊王によって元の場所、というよりも鉱山ダンジョンの入口まで戻される。ご丁寧にHPやMPは全回復、武器の耐久値も回復していた。


 その瞬間、俺以外の全員に称号【精霊王の加護】が与えられ、俺の場合はその称号が【精霊王の祝福】へと変化したというアナウンスが響く。




【精霊王の加護】:精霊王と親交を深め、絆を結んだ証。魔術系統の攻撃により受けるダメージ値を0.5%減少。精霊術、霊弓術などの精霊系統により与えるダメージ値が0.5%上昇。

【精霊王の祝福】:精霊王に認められ、祝福を与えられたことを示す証(ユニーク称号)。特殊使役キャラ【ミュア】の契約者に対する好感度超上昇。魔術系統の攻撃により受けるダメージ値を0.5%減少。精霊術、霊弓術などの精霊系統により与えるダメージ値が0.5%上昇。ユニークジョブ『精霊術士』の習得条件がこのユニーク称号の所持に変化する。




 俺の習得時には完全に伏せられていた【精霊王の加護】であるが、その効果は魔術系統の攻撃によって受けるダメージを少しだけ減らし、精霊系統で与えるダメージを少しだけ上昇するという効果だった。変化した俺の方の称号はその効果に追加してミュアの好感度がめちゃくちゃ上がり、またユニークジョブ『精霊術士』が実質俺しか習得できないという謎の効果が追加されていた。え? いいのそれ?


 前者の方はまだダメージ軽減は使えそうだが、精霊系統の強化は俺とユーリカしか恩恵がないだろう。ケイルにも同じような効果があるらしいが称号ではないので詳細は不明だ。


 しかし、俺の方の変化した祝福の方は本当によく分からない。とにかく分かるのは、俺は精霊王にめっちゃ気に入られていたんだなということ。


 じゃないと、自分の娘のような存在のミュアの好感度が上がる効果を自身の祝福で入れないだろ。なんなんだ? 娘を嫁にやる時にどうぞどうぞする父親か? 精霊王よ。


 あとは、ユニークジョブの話。称号がユニークジョブの習得条件というのはユーリカがリーサの『人形指揮者』を指摘したときにも出てきたが、よくある話である。ただ、ユニーク称号が条件だと本当に俺以外のプレイヤーには『精霊術士』を取ることができない。


 それが将来的に取るプレイヤーなら問題ないだろうが、別に従魔士を辞めるわけでもないので、本当にどうしよう。


 もし、将来的に2つ目のジョブとか習得できれば話は別なのだろうが、今のところはそういう話は聞かない。そもそも実装されていないのではないかという噂さえある。


 ……まぁ、ユニークジョブは習得さえしなければ誰が条件を満たしているかなんて誰も気付かないので、今はこのまま放置することにしよう。


 触らぬ神に祟りなしというやつだ。


「さて、それじゃあ孤児院に向かうか。オヤジに調査員――ミュアの無事を知らせないとな」


 ケイルはそう呟く。入ってきたときよりも人数は増えているが、あれから結構時間が経過しているので誰も気付かない。


 時間を見ればもう20時になろうとしていた。そろそろ晩御飯を食べたいところだ。


 取り敢えずログアウトしたい人もいるだろうし、全員で訪問するのもあれなので、孤児院の方には俺とミュアだけで行くことにした。


 報酬のお金の方は、自分たちは辞退するとオークラさん。ユーリカと同じでこの隠しクエストに参加でき、そして強力なユニークを手に入れることができたので満足だと告げていた。とはいえ申し訳ないので後で幾らか押し付けることにしよう。


 ひとまず俺たちはその時点でパーティーを解散する。これで各自自由にログアウトできる。勿論パーティー結成中でもログアウトはできるが、パーティーからは離脱するので色々不便だ。


 いやはや色々あったなぁ。しかし、ミュアが居る状態でログアウトしたらどうなるんだろう? ゼファーのようにそのまま残ってしまうのだろうか。だったら宿に泊まったりするために、ある程度のお金を渡しておかないといけないかもしれないな。将来的にはホームの購入が必要かもしれない。


 取り敢えず今日のところは孤児院の方にお願いでもしておこう。


 そんなこんなで俺以外のレンやリーサ、フライ・ハイのメンバーは、このまま解散してログアウトしようかなと話をしていたとき、突如としてアナウンスが鳴り響く。


 それも個人向けではなく、全世界のプレイヤーに向けての『ワールドアナウンス』である。




〈ピンポンパンポーン! たった今、チーム『クロノス』他によって、第一エリアボス『ジャイアントハウルベア』が討伐されました! これによって、皆さん待望の『第二エリア』が開放されました! イェイ!〉


〈同時にエリアボスのボスレベルが本来の適正レベルに変動しました。他のプレイヤーのみなさんも頑張って攻略して下さい。いぇい〉





 当時に発せられた二つのアナウンス。その声質はいつもの無機質なものとは全く違う。片方は元気いっぱい、片方は気だるげだ。


 何にせよ、2日目にして第二エリアが開放され、フロンティアは更なる拡張を迎えることとなった。




 ――――――――――

(7/22)称号効果について一部表現を訂正しました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る