それぞれの報酬
『さて、他には何を求めるかな?』
そう精霊王が問いかけると、皆が考え込む。望みを言えと言われてそうポンポンと出てくるようなものではない。
しかし、ここは戦力の強化だとレンは武器か防具を希望する。精霊装備といえば、エルフ族限定の装備になるが、ここでお願いすれば他種族でも使える装備がもらえるかもしれない。
オークラとリックもその方向で行くようだ。もしエルフ族しかダメなんだと断られれば、何かしらのアクセサリーを所望しようという方向らしい。アクセサリーなら確かに種族限定のものは無いので、何らかのアイテムはもらえるだろう。
『成程な。本来ならば精霊装備は我が末裔に授けるものだが……良かろう。今のお主たちに最適な武器を授けよう。「びっぐさーびす」というやつだ』
そう言うと、精霊王は自らの目の前に光の渦を作り出すと、そこから3つの武器が現れる。
一つは、対になった長剣。刀身から持ち手まで純白である一本と、逆に真っ黒である一本とが、全く同じ造形で揃っている。その名前は『エレメントモノクローム』という。このゲームでは初めて見ることとなる『双剣』として形を成している剣カテゴリーの武器であった。
一つは、大小様々な白い結晶体が散りばめられた純白の巨大な大盾。名前は『精霊王の大盾』というそのまんまなネーミングであった。 それでも防御性能はかなり高そうである。
一つは、真黒な刀身と白い持ち手が特徴的な短剣、というよりも短めの刀だろうか。日本刀に近いが直線的な形状、短剣というには少しだけ刀身が長めとなる。忍者刀と言われる部類の武器だろうか。名前も『精霊王の忍者刀』……精霊王が忍者ってなんか情報が混線してる気が否めないのだが。
因みに武器種に関してはメインカテゴリーとサブカテゴリーが存在し、メインカテゴリーは
それに対して双剣やナイフ、大盾や忍者刀などはサブカテゴリーとなる。これらは同じ得意武器でも同時に装備できるように細分化されたカテゴリーとなる。なお、これらはジョブの特性やアビリティ効果などで関わってくる場合が多い。
補足だが、籠手は本来は武器ではなく手防具なのだが【格闘術】のアーツを扱う際には武器扱いとなる。なお、何も持たないと【格闘術】やその派生の戦闘技能のアーツを扱える。
――閑話休題。
さて、精霊王が与えた武器なのだが、その『精霊王が与えた』という特異性もあってか、どれもユニーク武器扱いとなっていた。つまりは俺が持つ宝風剣と同じようなものとなっている。
どれが誰の武器かは言わずもがなだが、受け取った男3人はここでユニーク武器を入手できたことで喜んでおり、互いに互いの武器の特徴を見ては語り合っている。まぁ、気持ちはわかる。新しいおもちゃとか手に入れたら自慢したいもんな……。えっ、違う?
『さて、次はどうかな?』
「うーん……私の場合は、別に戦闘をしたいわけでもないから、何か人形製作に使えそうな珍しい素材をください!」
『成程成程。それならば、そこな
そう言って精霊王は色とりどりの遺跡の宝石を始めとする様々な宝石や結晶アイテム、他にはおそらく鉱山ダンジョンでは入手できないような鉱石などを色々取り出し、リーサに与える。流石に精霊石はない。
リーサもリーサで、まさかこんなに貰えるとは思ってなかったようで、その素材の多さにあたふたしていた。
しかし、精霊王の言うことが正しければ、人形指揮者も一応成長すれば人形を改造したりできるアーツかスキルを覚えるようなので、一応は人形製作士としての側面も持っているようだ。まぁ最終的にどういう方向に成長することになるかはユニーク故に不明なのだが。
『さて、最後に我が末裔よ。お主は何を望む』
最後に残ったケイルは精霊王に問われ、自分が何を望むのかを考慮する。そしてしばらく考えた結果、ケイルはその口を開く。
「俺は……精霊石が欲しい。上位精霊サマと、契約するために」
そう言うと、ケイルは力強い眼差しで精霊王を見つめる。実はケイルにはゼファーが来たときに精霊との契約について話していた。現地人がどれだけ精霊との契約について知っているのかを知りたかったのだが、その時点で契約に精霊石が必要なことは知っていたので、その精霊石を求めたという形になる。
因みにエルフの国でも精霊石を手に入れられるのは限られたエルフのみであり、ケイルのような孤児院出身だと一生お目にかかることは無いだろう。
だからこそ、この機会に精霊石を手に入れようと思ったのであった。
『成程、精霊石か。確かに私ならば上位精霊が好むであろう純度の高い精霊石を生み出すことができるが……それに対応する精霊に出会えるかどうかは時の運ぞ。時には異なる者に契約の機会を奪われるやもしれぬ。それでもお主は上位精霊との契約を望むか?』
「構わない。精霊サマと契約することが俺の願い。そして、それはより強いものがいい。じゃないと、アイツには追いつけないから」
そう言って俺の方を向くケイル。いやいや、俺なんかより全然強いじゃん。何言ってんの。
しかし、その答えに納得したのか、精霊王は微笑むとケイルに向けて精霊石を渡す。
燃え盛るような赤が石の中で渦巻いている。どうやら火属性の精霊石のようであった。
『……そこな契約者よ。良ければ時間があるときにでも末裔を案内してやってくれ。本来ならそこまで干渉するつもりはないのだが、我が娘の恩人だ』
精霊王が囁かにそう告げるということは、あの隠しダンジョンにもう精霊が住み着いたということだろうか。昨日の今日だというのに、随分早い話だ。まぁゲーム的にもそう時間を開けたくないというのもあるのかもしれない。今のところ、精霊石を所持してるプレイヤーは話に聞かないのだが。
取り敢えず、俺はケイルに隠しダンジョンに案内することを約束し、こうして全てのパーティーメンバーに報酬が渡された。
……自分に何もなかったと文句を言うゼファーだったが、お前は精霊王の眷属だろ。
――――――――――
(7/21)編集途中で投稿時間になっていたので一部修正しています。
(8/18)武器種のルビを変更しました。
『魔本』:マギアブック→グリモワール
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