救出

 その間にリーサとフィーネの協力にて何とか立て直したオークラさんたちが、マキナテック・ガーディアンに猛攻を仕掛ける。もはやなりふり構わずという形だ。


 というのも、実はリックが蘇生待ち状態のまま30秒が経過してても死に戻りしてなかったらしい。


 そのことから、オークラさんはこのクエスト中、このボスエネミー戦中は少なくとも死に戻りはしないと判断したらしく、それならば俺が調査員の元に近づけるよう、なりふり構わず攻撃して注意を引き付ける。引き付けられなくても、自分たちの方へ意識を向けざるを得ない状況を作る。


 その為にアーツを連発しながら、マキナテック・ガーディアンの装甲を削っていく。


「くそったれが! 『スナイプショット』ッ!」

「オラァ! 『アローレイン』でも喰らいなさいよ!」

「『ブレードラッシュ・デュアル』!」

『スキル発動、ミサイルサーカス』

「皆には当てさせんぞ! 『エリアバリア』!『シールドエリア』!」


 ケイルが狙撃術アーツで関節部を狙い、ユーリカは複数の矢を形成するアーツで面を狙った攻撃を行う。


 レンは双剣士の持つ連撃系のジョブアーツにより、目にも留まらぬスピードで次々と斬りつけていく。フィーネは各部からミサイルハッチのようなものを開き、内蔵していたミサイルを次々放っていく。


 そしてオークラさんは盾術スキルによる守護結界を2つ作り出し、死にものぐるいで攻撃する仲間たちのダメージを、少しでも軽減するように立ち振る舞う。


 それらは決して大きなダメージにはなっていないだろうが、それでもアーツという通常攻撃よりは強力な攻撃を繰り出されることから、自身が破壊されるわけにはいかないマキナテック・ガーディアンは、攻撃してくる敵の方へとその手を伸ばす。


 アーツの連発は行動ゲージを大きく削るため、時にはスキルを混ぜながら行動していくレンたち。




 そんな彼らの奮闘に、俺はその時は気付くこともなく、ただひたすら機械触手の方へと向かう。


 すると、今度は機械触手の方が俺の方に向けて攻撃を仕掛けてくる。鞭のように触手が向かってくるものの、先程までのマキナテック・ガーディアンの攻撃よりも遅く、またスケイルスパイダーのように、直線的な軌道の為に避けること自体は簡単だ。


 そして、一際デカい触手が横薙ぎで繰り出された時は、左右からも触手が迫っていたことから、止まるわけにはいかず、仕方なくスライディングを行う形で先に進む。触手の先が微かに前髪に触れる。


「ゼファー! 竜巻だ! 上に飛ぶぞ!」

「任せろ! 『竜巻』っ!」


 いよいよ持って目前となったところでゼファーにアーツである『竜巻』の発動を、指示する。


 木枯らし程度の小さな竜巻だが、これに乗ることで一時的に風の力により跳躍力を上げる効果がある。要するに上昇気流を作り出し、それに乗るという形だ。


 しかし、その竜巻が出来上がった瞬間、触手によってゼファーが遥か後方へと弾き飛ばされてしまう。


「ゼファァァーッ! ……っ! 行くぞ!」


 ゼファーを追いかけなければと思ったが、このままゼファーを追えば確実に俺もやられてしまう。竜巻が消えてしまう前に、あの調査員の元に辿り着かなくてはならない。


 俺は、悔しさに歯を噛み締め、そのままゼファーが作り出した竜巻によって勢いよく飛び上がる。そして俺は、機械触手に捕らわれている調査員――長い銀髪の可憐なエルフ族の少女を取り囲んでいる触手に向かって『鎌鼬』を発動する。


 彼女を傷つける事なく、触手だけを切り裂くことに成功し、そのまま解き放たれた少女を抱え込み、落下する。


 何とか無事に彼女を助けることには成功した。


 ……が、その高さはかなりの物で。このまま落ちれば一溜まりもない。俺はそのまま彼女を庇うように抱き抱えて、地面に撃墜する。その瞬間、俺のHPは全損。既にその前の時点で3割を切っていたことから【不屈】の効果も発動せず。


 俺はそのまま蘇生待ち状態に移行することとなった。






〈クエスト特殊成功条件を達成しました。『精霊姫の救出』を終了します。特別報酬を獲得しました。これより特殊成功演出を開始します……〉

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