道中の戦い

 ――右の分岐


 俺たちはその後もフロアを攻略していくが、何故か道中の敵はおれたちの方しか出てこず、結果的に辿り着いたときにはガチャンという音と共に扉が開放されるという結果になっていた。


 2個目のフロアまでの道はクラストホッパー、群れをなす飛蝗バッタ型のモンスターが現れた。


 リーサは蜘蛛スケイルスパイダーは平気だったのに、クラストホッパーの時にはその光景を見てかなりの悲鳴を上げていたのだが、まぁ人の膝丈くらいの割とリアルなバッタが、大量の群れを成して押し寄せてくる光景はリーサでなくても「うっ」と来るものがある。


 大量に発生するが、ただのでかいバッタだったので対処は簡単だった。俺とゼファーが緑風の弾丸で撃ち落としていき、レンが次々切り裂いていき、それから漏れた個体はケイルが着実に矢で射抜いていった。


 そんな中、バッタが苦手なリーサはフィーネに命令をして次々戦闘人形スキルでバッタを倒していく。流石にそんなにスキルを使って大丈夫か不安だったが、案の定MP切れで倒れ込んでしまう。


 慌てて庇いに行ったところに大量のバッタが押し寄せてくる光景は……よそう、あまり思い出したくない。


 結果として、その時はケイルとレンによってどうにか窮地は切り抜けたが、リーサは見境なしに攻撃をするとどうなるのか分かったと思うのでかなり反省していた。まぁ、気が動転すれば仕方ないということで、次から気をつければいいという話でまとまった。




 3個目のフロアまでの道では、メタリックアントと呼ばれるモンスターが現れた。


 鋼鉄、というよりも銀メッキが貼られたような蟻型のモンスターで、かなりの魔術攻撃耐性があるのか、俺とゼファーが放った精霊術スキルは全て弾かれてしまう。あの緑精の大旋風を放った後にケロッとした様子で立っていたときは軽く絶望したほどである。


 とはいえ所詮はメッキ、物理攻撃への耐久はバッタよりはマシ程度なレベルだったので、レンやケイルの出番となった。


 たまに吐き出してくる蟻酸がまたいやらしく、それが武器や防具にかかると腐食状態となり、武器や防具は耐久値が大きく減り、またステータスへの追加効果の値が一定時間減少してしまう。


 オマケにダメージもそこそこあるので、頭から思いっきり被ったときはかなり焦った。その時、使用していた武器がまだ宝風剣の時だったので、武器の耐久値の方は問題なかったが、ステータスが大きく減少してしまった為に一時離脱。


 その間はゼファーやフィーネに、リーサと共に守ってもらうこととなった。


 なおレンとケイルはそんなもの被るわけ無いだろうと言わんばかりに蟻酸攻撃を華麗に避けていたので、俺もあれくらいはやれなければと誓うのであった。……まぁ、AGIの数値が違うんだけどもね。




 そして3つ目のフロアの扉が開くと、分岐していた道が1つになり、フライ・ハイのメンバーと合流することができた。


 フレンドチャットでは詳しいことは聞かなかったが、どうやらあちらの方でフロアの守護者ガーディアンとして出てきたのはこちらの道で出てきたモンスターを模した機械のモンスターだったらしい。


 最初のフロアは『守護者ガーディアン鋼蜘蛛メタルスパイダー』、2つ目のフロアは『守護者・軍皇飛蝗エンペラホッパー』、3つ目のフロアは『守護者・鏡面蟻ミラーテックアント』と、全て俺たちの戦ったモンスターに対応していた。


 また、3つ目のフロアに着く少し前ぐらいに、突然メタリックアントが出現しなくなったのだが、実はその時点でフライ・ハイの方でフロアの守護者を倒してしまっていたようだ。


 どうやらもう片方のフロアの守護者を倒せば、もう片方で出現するモンスターは出なくなるらしい。


 これならば片方の守護者ルートにほとんどのメンバーで行ってから一人に入口で待機してもらって、守護者を倒してから両方先に進むというのが早かったかもしれない。


 とはいえ、どちらが守護者のルートでどちらがモンスタールートだったのかは入ってみないと分からないし、そもそも2つ目以降も全部そういう形だとは思わなかったので、分かりようがなかった。


 ケイルは結果的に嘘八百になっていた自身の父親に呪詛を送っていた。怖い。


「さて、どうやら目的地はすぐそこのようだぞ」


 警戒しながら前に進んでいると、オークラさんが呟く。罠もないひたすら広い通路の先、今までのフロア以上に開けた場所に佇むその存在は、俺たちの視線を釘付けにする。


 この遺跡の敵対者を排除する最終防衛装置だろうか。『機械仕掛けの守護者王マキナテック・ガーディアン』という名のボスエネミーがそこに立ちはだかっていた。

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