必殺系アーツ

 二人はゼファーとフィーネによって別方向に吹き飛んだスケイルスパイダーに向けて、アーツを発動する。どうやら吹き飛ばされて動きが止まっている内に、発動まで時間がかかるが強力な攻撃を放つことができる必殺系アーツを使用するつもりのようだ。


「――『バニシングスナイプ』ッ!」


 ケイルは自ら持つ弓矢にエネルギーを集中させ、やがて爆発的エネルギーを込めた光の矢を作り出す。そしてその光の矢を渾身の力で引き、スケイルスパイダーに狙いを定めて打ち放つ。


「――『バーストスラッシュ』!!」


 レンは2つの剣の刀身にエネルギーを纏わせると、そのエネルギーを維持したまま2つの剣を重ねる。やがてそのエネルギーが1つに重なると、巨大な長いエネルギーの刃が形成される。その刃をレンは勢いよく、スケイルスパイダーに向けて叩きつける。


 ――ズガァァァァン!


 諸々が砕け散るかのように響き渡る破壊音。


 色々オーバーキルのような気もする、2つの必殺系アーツにより、2体のスケイルスパイダーは跡形もなく消し飛んでいた。


 必殺系アーツは一言で言えば、「超ド派手」である。あんなエネルギーとかどうやって練り上げるんだとか色々ツッコミどころはあるものの、それなりに様になっているのでやはり必殺技はかっこいい。


 これが【格闘術】なら某格闘ゲームのように闘気を纏めて敵に叩きつけたりすることができるし、【抜刀術】であれば某剣客漫画みたいに抜刀しながら大量の斬撃を相手に叩きつけたりすることができる。


 まぁ、発動に色々と制限があったり、発動までに時間がかなりすぎるので実用的ではないという、最大にして最悪の欠点があるのだが。


 それでも、動けない敵に対しては放つならば、必殺系アーツの待機時間はあまり関係ない。だからこそ、ここぞというときに発動する。今がその時だったという話だった。


 必殺系アーツは、基本的に戦闘技能アビリティのレベル最大で習得するので、俺の【杖術】もどんな技を覚えるか楽しみだ。


〈戦闘終了。現在、特殊イベント進行中なのでドロップ・経験値は獲得できません〉


 戦闘終了を知らせるアナウンスが響く。やはりというか、最初に俺が吹き飛ばしたスケイルスパイダーはあの時点で絶命していたらしい。必殺系アーツよりもあっさり倒してしまっていたことに、ケイルとレンから冷たい目で見られていた。


 しかし、レベルが表記されていなかったこともそうなのだが、アナウンスによるとどうやらこの隠しイベント進行中はドロップや経験値は入手できないらしい。残念だが仕様なのでは仕方がない。


 ケイルが落胆する俺とレンの姿を見て首を傾げている。イベントNPCにはアナウンスは鳴らないようなので、これはプレイヤー来訪者だけの現象だと説明しておいた。


 スケイルスパイダーの素材がどういうものなのか気にはなったが、一応鉱山ダンジョンにも居るということなので、そちらの方で確かめることになるだろう。


 そして俺たちはその後もやってくるスケイルスパイダーを今度はちゃんと連携して蹴散らしながら先に進んでいく。


 スケイルスパイダーが突進する時、どうやら途中では曲がれないようで、直線ならば十分な間合いがあればリーサでも簡単に避けれるので、それで避けてしまえば壁に激突して隙だらけになる。そうなると後はみんなで袋叩きである。


 あとは普通に俺とゼファーの精霊術スキルで削っていく。『緑風の弾丸』程度は鱗で弾いてしまうが風の刃である『鎌鼬』の方は効果抜群のようで、スパッと真っ二つになった。それを真似してレンも『スラッシュエッジ』という斬撃をエネルギー状にして飛ばすアーツを利用して切り刻んでいった。


 作業になりつつある戦闘を行ってると、一戦目の苦戦はホント何だったんだと思ってしまう。


 そして俺たちはようやく一際広いフロアに到着するが、そこでは特に何も起こらずに次のフロアへの道に続く扉が開く。


 ケイルはその様子を見て、確証に至ったのか語りだす。


「おそらく、もう片方のルートでギミックに対応したのだろう。俺たちが到着したから、両方の扉が開いた」


 つまり、俺たちが手間取っていたから先にフライ・ハイのメンバーがたどり着いてギミックを対処したということだ。


 先を越された事を悔やむレンだったが、仕方もない。チャットによれば向こうは道中に敵が出てこなかったらしいので、フロアまで直行だったらしい。


 取り敢えず、まずは一つ。ケイルが分岐以外はケイリスから渡された構造図と同じだと予想しているので、残りは二区画。


 果たして先程と同じか、また別の感じになるのか。先にいかないと分からない。


 時間はまだあるとはいえ、急ぐことには変わらなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る