激突、スケイルスパイダー!
――右の分岐
俺たちはレンとケイルが前衛、そして俺とリーサが後衛という形で進むこととなる。いつ何が飛び出してくるか分からないので、ゼファーは俺の肩に乗ってるし、フィーネもリーサの側を離れず歩いている。
ケイルは先程までと変わらず、通路に仕掛けられた罠を対処するために、注意深く周囲を見ている。
「……どうやら、こっちの方はオヤジに教えてもらった通りの構造みたいだな。起動したことで、2つに分裂したのか?」
ケイルはそう言いながら目の前の床の特定の箇所に向かって石を投げようとするが、それをレンが止める。一応【投擲】のアビリティを持っているので、代わりに投げようということだった。
ケイルは「そう言うなら……」とレンに石を投げる役を与える。あいつは、単純に【投擲】のレベル上げがしたかっただけだろうが敢えて言うまい。
石が目的の床の場所に落下すると、カチリという音と共に火柱が上がる。MINのステータスを上げてない俺やレンだとひとたまりもないかもしれない。
あ、レンは【火傷耐性】を持ってるから多少は火属性ダメージに強いのか。じゃあ丸焼けになるのは俺だけか。ちくしょう。
焼豚になるのだけは勘弁だったので、ケイルには今後も積極的に罠の解除をお願いしたいところだ。
そんな中、この鉱山の遺跡に入ってから初めてのエンカウント! 敵は強固な鱗を持つモンスターである、スケイルスパイダーが3体。レベルは不明となっている。……不明?
ケイルの見立てでは、どうやら鉱山ダンジョンから侵入してきた奴のようだ。
「どういうことだ? 遺跡の入口ってあそこだけじゃないってことか?」
「俺たちが入るのに一番てっとり早い入口があそこだったってだけだ。後はモンスターが入れるような隙間しかないからな。そこから入ってきたんだろう」
ケイルは俺の疑問に対し、弓を構えながら答える。どうやって繁殖したのかは不明だ。共食いでもしたのだろうか……。
俺たちも武器を構える。レンは種類違いの二本の剣、俺は魔杖、リーサは念の為の杖だ。そしてゼファーとフィーネも臨戦態勢に移る。
戦闘フィールドが広がっていくが、スケイルスパイダーは格下の俺たちのことは気にも止めないのか、ただそこに佇んでいるだけだった。
リーサは戦闘開始後からMPが消費し始めるため、少しでもその消耗を抑えるためにMP継続回復薬【小】を使用する。
フィーネはただ動いて肉弾戦をするだけなら、現在のリーサのMPなら17分近くは稼働できるのだが、戦闘人形スキルを使用するとなるとその稼働時間はゴリゴリ削られていってしまう。MPを30も消費すれば、それだけで1分近くは稼働時間が減ってしまう。
たかが1分、されど1分。ということで、使えば使うだけリーサの戦闘時間は短くなる。おまけにうっかりMPが切れてしまったら、その時点でリーサは魔力欠乏で動けなくなるため、かなりの隙になってしまう。そうならないために、MP継続回復薬で減る速度を緩やかにしようということだった。
このMP継続回復薬は、ユーリカが知り合いの
「クソッ、かてーなこいつ!」
レンがスターリットソードと星森の剣を振りかざして斬りつけるが、鈍い音が響く。
俺は、強固な鱗を持った蜘蛛のモンスターなので、多少は攻撃が通るであろう打撃武器である魔杖を選択した。ケイルの弓もレンの剣も斬撃武器なので、ゴーレムと同様に硬い敵には向いていない。
現に、先程レンが攻撃する前に先制として放ったケイルの弓矢はカランという乾いた音と共に明後日の方向に飛ぶ。スケイルスパイダーは当たったことさえ気付いてなさそうだ。ケイルは露骨に嫌そうな顔をしていた。
レンの場合、このまま無理を押し通せばダメージを与えられそうだろうが、もう少し武器を大事にしろ!
その時、スケイルスパイダーの目が光る。あれは……なんか嫌な気がする。
すると、スケイルスパイダーが3体まとめて勢いよく突進を仕掛けてくる。
「代われレン! ――『横薙ぎ』、『強力杖殴り』!」
俺は咄嗟にレンと場所を変わり、纏まって走ってきたスケイルスパイダーの動きを見てから、以前アッシュウルフとの戦いで利用したダブルアーツを放つ。
1体のスケイルスパイダーはその攻撃が直撃して壁の方向へと吹き飛び、そのまま動かなくなる。やはり、あの時もそうだがこの使い方、かなりのダメージになるみたいだ。
しかし、もう2体はかすかに掠った程度であり、多少動きは鈍くなるがそれでも止まらない。
咄嗟に後方に下がろうとするが、スケイルスパイダーの動きは思ったよりも早い。
――しまった!
「相棒! ――『突風』っ!」
『発動、アサルトバレット』
その時、ゼファーの放った『突風』とフィーネが発動した『アサルトバレット』が這い寄る2体のスケイルスパイダーに命中し、吹き飛ぶ。
アサルトバレットについては、フィーネの左腕がロケットパンチの要領で飛んでいっていたので、そういう技なんだろう。リード線のような物が繋がっていて、勢いよく引き戻されていく。
リーサの方を見たら、想定してたものと違っていたのか、せっかくの可愛い顔が驚きで歪んでいた。
仕切り直しでまた前に出ようとすると、ケイルから頭を小突かれる。
「アホか、無茶しやがって」
どうやら俺が勝手に前に出てきたことを怒っている様子。まぁ確かに勝手だったよな……。
しかし、ケイルはそれ以降は怒ってこなかった。
「とはいえ、お前が出てこなかったら、レンだけじゃ対処できずに軽防御の俺やリーサがやられてただろう。その点はよくやったよ」
あの加速度的に、あそこで止めなければあっという間にケイルやリーサのところにたどり着いていたので、結果オーライというやつだった。
一旦止まった状態だったからこそ、ゼファーもフィーネも対応できたのだ。
「さて、あとは俺たちに任せろ。ぶっ倒してやる」
「……大丈夫か?」
「少なくとも無理して前に出てきたお前に言われたくはないな。……任せろ」
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