遺跡の入口

 結果として言うと、入口に着くまでに問題などはなかった。


 モンスターの出現率が高いため、少し進んだらモンスターが現れるようになる。


 しかし、戦闘フィールドになるやいなや、先んじて前に出たレンによって次々切り刻まれる。


 その後ユーリカが連続で矢を放って一瞬ヘイトを自身の方へと移すも、そのヘイトをオークラさんが【ヘイト集中】というアビリティで無理やり反らし、そのまま攻撃を仕掛けようとするモンスターの攻撃をオークラさんが盾で受けきる。


 そして隠密スキルで死角を取ったリックによるアサルトアタックで止めをさす、という流れが出来上がっており、ほとんど俺とリーサの出る幕は無かった。


 いや、たまに複数体出てくるときがあったので、撃ち漏らしや、オークラさんの【ヘイト集中】がうまくかからなかったりするモンスターが出てきたりしたので、そういう時は俺とゼファーの精霊術で攻撃したり、フィーネが力尽くで捻り潰したりしていた。


 フライ・ハイとレンの連携はケイルも感心しており、あれなら遺跡でも問題はないなと太鼓判を押していた。


「……さて、ここが遺跡の入口となる」

「ん〜? 何にもないぞぉ?」


 ただの行き止まりでケイルが立ち止まり、ここが遺跡の入口だと言うが、理解できずにゼファーが声を上げる。


「何かしら、隠し扉でもあるのかしら」

「いやいや、忍者屋敷じゃないんだし」


 入口の構成について意見を述べるユーリカと、それに突っ込むリック。


『破壊しますか? マスター?』

「へ? だ、ダメよフィーネ!」


 フィーネはガントレットを展開し、目の前の石の壁を叩き砕こうとするが、リーサが止めようとする。


 おいおい、叩き壊して崩落とかはやめてくれよ……。


「お前らは何を言ってるんだ? そんなんで遺跡の扉が開くかよ。……遺跡には遺跡。この鍵を使うんだよ」


 そう言ってケイルはメカメカしい構造の鍵の形をしたデバイスを取り出す。


 するとそのデバイスが青く光り出し、同時に目の前の何も無いはずの石の壁にも同じような色で輝き出す。やがてその光は複雑な幾何学模様を構成していき、やがてパズルのピースがズレていくかのように人が一人通れそうな大きさの入口が開く。


 おお……なんというか、すごく近未来的なギミックだ……。これは制作側に、サイバーチックな作品が好きな人がいたんだろうな。開発側の愛情を感じられる。


「さぁ、いよいよここからが本番だ。おそらく目標となる調査員はこの遺跡の最奥に居るはずだ。なるべく最短で行けるように、索敵と罠は一緒にやるぞリック。皆も気を引き締めろ」

「お、おうよ! 任せてくれ!」


 そして、俺たちは古代遺跡の中に足を踏み入れる。これがおそらく、本サービス開始後初のプレイヤーによる遺跡調査となるのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る