ダンジョンの中へ


 転移手形というアイテムは、オークラさんをはじめとして全員が初耳だった。


 どうやら、ダンジョンに入場する際にこの手形を使用すると、ダンジョンを攻略していなくても特定の階層に転移することが可能となるらしい。


 俺やリーサの場合、鉱山ダンジョン自体入場したことがないためにショートカットが使えないのだが、このアイテムを使用すれば関係なく転移できる。


 かつて、古代遺跡の調査隊の一員であったケイリスが調査を行いやすくする為にハーフリングの国と協力して作り上げたというこのアイテム。どうやら、古代遺跡の技術を用いているらしく、この手形一つでエルフの国で高級家屋が買えるくらいの金額だとのこと。


 高級家屋がどれくらいするのかは定かではないが、まぁ俺たちが金を寄せ集めても買えるものでは無さそうだ。……あぁ、遺跡の宝石を使えば話は別かもしれないが、あっちは調査隊を編成してるくらいだからそういうアイテムは数多くありそうだ。


「そうだ。忘れるところだった。俺は案内をメインにすることになるんだが、お前たちの中に斥候スカウト系のジョブはいるか?」


 ケイルが手形を直してから斥候役がいるのかを尋ねてくるので、リックが手を挙げる。


 どうやら、最低限の罠は存在しているらしく、しかも遺跡が稼働している以上、普通の古代遺跡よりも危険な罠が動いていてもおかしくないということなので、気を引き締めされられる。


 リックもそれを聞かされてビビっていたが、ケイルも野伏弓士レンジャーアーチャーという斥候系のジョブであった為、二人で手分けして警戒するという話で纏まった。


 その後、役割の話から隊列の確認という話になり、ケイルもパーティー内にNPC枠として加わることとなる。


 結果、このパーティーでの前衛はレンとオークラさんにリック、後衛は俺とリーサにユーリカ、そしてケイルが先導ということとなった。


 リーサの場合は本人が後ろに居るというだけで、フィーネは前衛として立つこととなる。


 俺も基本的に精霊術スキルをメインに戦うことになるが、【杖術】で近接戦闘も可能であるため、いざという時は前衛でも戦うつもりだ。


 とはいえ、たかだかSTR100ちょっとしかないのであまり意味はないのかもしれない。普通に前衛3人のSTRの数値には遠く及ばないのだ。


 隊列の確認が終わり、いよいよもって準備完了となる。


「よし、それじゃあ行こうかユーク」

「あぁ。行こう」


 ケイルの確認の後、俺たちは鉱山ダンジョンの方へと歩んでいく。


 二日目で鉱山ダンジョンに挑んでいるプレイヤーの順番待ちみたいなものは特になく、入口まで順調に歩いていくと、ケイルが転移手形を取り出す。


 すると、それまで淡い青色で光っていたダンジョンの入口が黄色い光に変化する。


「よし、これで11階層まで行ける」


 そう言ってケイルはダンジョンの入口の中へと入っていく。俺たちもそれに倣って後からついていく。


 視界が暗転し、再び光が戻るとそこは薄暗い洞窟の中のようであった。


「さて、ここから遺跡の入口まで行くが、モンスターは結構出るから気をつけろ。11階層はレベル30以上が普通に出てくるからな」


 そう言って、ケイルは洞窟内の通路を駆けていく。どうやらダンジョン内はエリアのレベル制限に縛られないようだ。


 入口までに死に戻りなんて起こらないようにしないと……。


 特にレベルが低いリーサは過酷な事実に、息を呑み込んでいた。




 ――――――――――――――――――――


(7/15)『俺たちのステータス』において、ゼファーのステータスの数値が間違っていたので変更しました。なお、精霊はレベル5毎にステータスが上がります。

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