隠しクエスト前の最後の準備
その後、隠しダンジョンのことをその具体的な場所や精霊石の導きなどをぼかしながら伝えることとなり、そのついででゼファーの存在を説明した結果、案の定パンク状態となる面々。特にエルフ族の設定でのみ存在していたと思っていたユーリカはかなり混乱していた。
「だって精霊よ! 今まで設定でしか居ないと思ってたのに……」
プレイヤーのエルフ族でも、精霊に対して神聖なものを感じるらしく、その存在の力強さになぜ今まで気付かなかったのかと自問自答していた。
それから、しばらくの間は精霊のことやどうやって出会ったのかなどをあまり言い触らさないようにしてほしい旨を伝えると、全員が了承してくれた。ありがたい。
まぁ最悪バレてしまってもいいのだが、それで俺の独自性が奪われてしまったら、なんかそれはそれで嫌だった。
ユーリカだけは最後まで契約の条件や詳細な情報を聞きたがっていたが、あまりにしつこすぎたのでナナミさんに怒られてた。
取り敢えず、精霊石はあるといいかもとだけ伝えておいた。すると、ユーリカはパッと明るくなって「精霊石を探しに行くわ!」と言い出したのでみんなで慌てて止めていた。
これから隠しクエストやるのに離脱だけはやめてくれ!
そして俺とレンは装備の幾つかをサイモンさんに預けることとなった。
イアンの防具も、ダンジョン報酬やボスドロップの装備も強化することが可能ということが分かり、一安心する。
レンも予算内でできる範囲で、大部分をサイモンさんに新調してもらうことに交渉成功したらしい。
しかし、量が量なので出来上がるのに時間がかかるとのことで、受け取れるのは隠しクエストに挑む直前になりそうだった。
それでも、あの量をたった数時間で生産・調整してしまうのだから流石はトップ生産者というべきか。
因みにサザンカさんから、あのとき買おうとしていた『星森のグリップリング』を貰った。いつかのジョブ習得の際に手伝ってくれると言ってくれた事へのお礼だったらしい。
なお、レンもサザンカさんのデメリット込みの武器に興味を示し、黒い刀身に星のような煌めきと白い波紋が走る両刃剣である『星森の剣』と小型ナイフの『星森のナイフ』を購入していた。
星森の剣はSTR+55にINT-20、星森のナイフはSTR+35にINT-20と、それまでのギルド装備よりもかなり強化されることとなった。INTのマイナス補正も剣士系ジョブであるレンにはデメリットたりえない。
「本当ならもう片方も同じ剣が欲しかったが、残念ながら一本しかなかったからな。まぁ変わりにとサイモンさんが持ってきたこの剣がまた面白い性能してるよ」
レンは左手に持った『星森の剣』を一瞥したあとに、右手に持った似たような大きさと形の剣を見る。その刀身は青く、中央には星森の剣にもあるような天の川のような星を模した煌めきがあるが、更に眩く細やかな細石が光を煌めかせていた。
『スターリットソード』と呼ばれるその剣はSTRは25しか増えないものの、AGIが40も増えるというレンの戦闘スタイルによく合ったステータス追加となっている。
レンの依頼から戦闘スタイルを推測したサイモンが、これならばと用意した武器だ。まぁレンの興奮が収まる気配はない。
預けた防具に対応する防具――残念ながら元の防具ほどの性能はなかった――を借りて、俺たち三人はリーサのレベリングを行う。
最初は戦闘人形による戦い方がよく分からずにMP切れでフィーネ共々倒れてしまうリーサであったが、次第にフィーネの動きが分かるようになってきたのか、フィーネを前にして後方から指示をするスタイルを確立していく。
なんか俺より従魔士みたいな感じになっているが、戦闘人形はあくまでアイテムだから、従魔士系では無いはずだった。
気付けばレベルが5以上離れている敵に対しても余裕で勝てるようになり、称号【ジャイアントキリング】を獲得していた。
そんなこんなでリーサは無事にレベル10に到達し、ジョブ習得を迎えることとなった。
後半はあまり手助けする必要も無くなった為、俺とレンは自身のレベルアップの為に奥の方へと足を踏み入れる。
結果として、装備を受け取る時間には俺はレベル20、レンはレベル26となった。
最終的に改修したり、新規に作ってもらったり、既に生産していたりした装備を受け取り、俺たちの隠しクエスト前の準備は一段落となった。
なお、リーサのジョブの傾向を知ったサイモンさんは面白がって幾つかアクセサリーを持ち出してくる。あの、普通に幸運系のアクセサリーもあるんですが……。
リーサはそれらを受け取れないと断りかけたが、俺が依頼した時の代金代わりであった遺跡の宝石の割を合わせる為の帳尻合わせだと言って納得させていた。
いや、その帳尻合わせは俺の方にやってくれないだろうか。
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(7/14)前話で一部設定の修正を行っています。詳しくは対象話の追記部分に記していますので、確認をお願いします。
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