武器とプレイヤーメイド

 リーサの武器については、攻撃は全てフィーネが行うことになるため必要ないということ、そして先程防具の購入でお金をほぼ使い果たしたということを考慮して『初心者の短剣』のままとなった。ステータス追加はないものの、耐久値が無いので多少無茶な使い方をしても大丈夫という利点がある。


 因みに武器は耐久値が減ると破損状態になる。刃こぼれなどは軽い破損状態になり、レンの【簡易修復】で修復できるのはこの程度の破損状態までとなる。俺の宝風剣は破損耐性があるため、破損状態にはならない。


 破損状態であれば、鍛治士などがもつ修復系スキルを用いればその場で耐久値を回復させることができるが、破損状態のまま使い続けると最終的に破壊状態になり、その武器は使用することができなくなる。


 破壊状態は鍛治士でも、工房などの施設でアーツを用いながら修復する必要がある。戦闘中に破壊状態になった場合は、当然ながらサブ武器に設定した武器を使用することとなる。


 そのサブ武器だが、今更ながらメイン武器と全く同じカテゴリーの武器種は、基本的に装備できない仕様となっている。ただし、複数の武器種にカテゴライズされている武器もあるため、その全ての武器のカテゴリーが一致した場合のみ装備できない。


 例えばレンの『ブロンズギルドナイフ』は短剣・ナイフのカテゴリーなので、短剣のみの『初心者の短剣』とは同時に装備可能となる。俺の『精霊王の宝風剣』は短剣のみなので『初心者の短剣』とは同時に装備できない。


 また、ジョブによってメイン武器に装備可能となる武器種は決まっており、従魔士は『短剣・杖・鞭』だが、双剣士の場合『剣・短剣・刀・斧』となる。


 参考程度だが、人形製作士は『短剣・槌・杖』となり、人形遣いは『短剣・鞭・糸』となる。『糸』は本来武器ではないが、人形を武器として扱う為の特殊装備扱いで装備可能となる。その人形そのものは武器のカテゴリーには入ってこないのだが、人形指揮者の場合はどうなるかは分からない。


 習得可能ジョブの詳細は、神々の洗礼やジョブチェンジの際にしか確認できないので、リーサがジョブを習得する時にようやく明らかとなるのだ。


 現状は、ジョブ習得前ということで持てる武器種に制限がないことことから、俺がまだ売らずに持っていた『初心者の杖』を渡すことになった。理由としてはメイン武器と同じである。


 因みに初心者装備の売却価格は全て0FG。初期配布装備なので当然と言えば当然だ。売るというよりは廃棄の方が正しいのかもしれない。


 俺は金にならないから売らずに残していたが、レンはストレージの枠を減らすために全て売ってしまっている。革鎧の方は俺もそうすることにしよう。


 アクセサリーについては既にドールリンクバングルで一つ埋まっているために残り4枠となるが、武器同様お金がないため、遺跡の探索中に見つかった良さげなものを装備すればいいだろう。


「しかし、プレイヤーメイドの装備も少しだが出回るようになってきたな。……あんなのを見せられた後は流石に微妙に見えてしまうが」


 レンが、周囲で露天を開いているプレイヤーが売っている装備を見ながら口ずさむ。確かにイアンの防具はここらのファーストロットプレイヤーが作ったであろう防具と比べてもかなりの性能だ。


 しかし、それはあくまでファーストロットプレイヤーが作ったものであり、ただ単に鍛治士や裁縫士にしかならなかったプレイヤーが作ったものだ。


 βテスターを始めとして、明確に生産をやるために情報を集めてきたプレイヤーはクラス2やクラス3のジョブを確実に狙ってくる。総じてクラス3を狙えればいいのだが、生産するものによってはクラス2のジョブが最適な場合もあるので、そこはプレイヤーの方向性による。


 そういうプレイヤーたちは努力を怠らないので、一日もあればイアン程度の装備は作れるようになるのである。


 ただ、そういったプレイヤーは仲間内で装備を作ったり一人でひっそりと生産活動に明け暮れるために、基本的には露天には出さなかったりする。


 そもそも露天で商売するには商人ギルドに登録する必要があって、それが煩わしいと思う人も少なからずいるのである。


 まぁその場合は、商人のロールプレイヤーが買い取って販売する場合もあるが、現状その商人プレイヤーも少ないのでまだ先の話になりそうだ。


 因みに昨日の昼の時点で、ゲーム開始しているプレイヤーは800人程度らしい。まだ500人程はアルターテイルズを始めていないので、増える可能性は無きにしもあらずである。まぁその約500人のうちの一人はリーサなのだが。


「でも、オークラさんの知り合いの生産職さん? が見つかって良かったね。レンもユークも新しい装備、探せるね」


 下ろしたてのおしゃれ着を着てルンルンなリーサが楽しそうに呟く。


 実は、消耗アイテムの補充をしていたオークラさんがβテスト時代に馴染みだったという生産職プレイヤーと偶然再会し、そこで俺たちの事を話したところ、装備を作ってくれるという流れになっていた。


 その連絡が来たのがちょうどイアンの店を出たあたりだった。因みにオークラさんとは先程解散する前にフレンド登録を済ませていたので、その連絡は俺の方に来ている。なお、ユーリカたちは先にログアウトしていたため登録できていない。


 イアンの店では残念な結果であったため、その話はまさに渡りに船ということで、二つ返事でオーケーと返す。


 その直後にお金のことはどうするんだとレンに聞かれたが、リーサから人形製作のときに渡した宝石のことを教えてくれたため、それを使うことにする。


 因みにはじまりの街のNPCの店でも、ギルドショップでもその宝石は換金はできなかった。ランクも☆3なので別にレアアイテムというわけでもないのだが……。


 まぁ、トレードか何かでどうにかならないかな。……ならないかなぁ?




 ――――――――――

(7/24)装備可能な武器種についての説明を一部変更しました。双剣士の装備可能武器種に『細剣』が含まれてましたが、『細剣』自体は『剣』に含まれるので削除、代わりに『斧』を追加しました。人形製作士にも『杖』を追加、また人形遣いの使用可能武器種『糸』について簡単に説明を追加しました。

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