リーサのステータス方針

 ちょうどお昼になり、昼休憩もかねて皆一度ログアウトすることとなった。


 その後、昼に再度集合したが残り時間がまだ一日あることから夕方までリーサのレベリングを行ったらどうかとオークラに提案される。


 確かにフィーネの製作で大量の経験値を獲得したが、まだジョブ習得レベルに至っていないため、リーサのジョブ習得のためにレベル上げは必要だった。


 因みにゴタゴタになって聞きそびれていたが、リーサは一応人形指揮者になることを承諾してくれた。せっかくのユニークジョブだからならないと勿体ないというのと、どちらにせよ人形は作れるからというのが理由だった。確かにジョブ習得前にこれだけの人形を作れるならわざわざ人形製作士になる必要はなさそうだ。


 俺も防具の新調も行う必要がある。イアンの防具は本人の弁とは裏腹にまだこのレベルでも十分使えるが、装備していない部位の防具やアクセサリーなど強化できる箇所は多い。


 結果として、全員はじまりの街に戻ることとなった。そこで装備を手に入れてから俺たちはリーサのレベリング、フライ・ハイのメンバーは回復アイテムの調達などをするらしい。


 合流は一度ログアウトしてから、夕方の17時に鉱山ダンジョンの前に集合ということになった。


「さて、取り敢えずまずはリーサの初期ステータスを振り直そうかと思う」


 俺たちは転移によって鉱山の村から、はじまりの街の噴水の前に辿り着いた。流石に戦闘人形のフィーネの姿は珍しいのか他のプレイヤーからジロジロ見られる。ゼファーは、既に透明化して俺の肩に乗っている。多分透明化してなかったら、俺も同じように見られてたんだろうな……。


 そんな中、レンが徐ろに話を切り出す。


 確かにリーサの初期ステータスはかなり平均的に割り振っている様子だったので、やりたい方向性に合わせて切り替えるのが一番だ。


 それが許されるのがレベル10までのチュートリアル期間である。


「戦闘人形は戦闘中、登録者マスターのMPを消費して戦闘を行う――そこまでは正しいかフィーネ?」

『はい、概ねその通りです。レン様』


 戦闘人形の仕様について確認するレン。


 戦闘人形はスキル使用時のゲームの成功率、素材のランク、そして最後に行われる性能抽選によってその性能が決定される。


 フィーネの場合は、☆7というランクから分かるように最高クラスの性能を持つことになる。


 テイムモンスターとは異なり、アイテム枠にある戦闘人形。しかし、プレイヤーの変わりに戦闘をこなす事となる為かパラメーターステータスは設定されており、実は全て400程度ある。かなりの高性能ではあるが、自律して行動する戦闘人形がどれだけそのステータスを利用できるのは定かではない。


 耐久値は単純にステータス換算でHP1000相当はあり、先述のパラメーターステータスと合わせると破格と取れるほどの高性能さだ。


 ただし、戦闘人形が戦闘中に自律稼働するためには登録者たるマスターがMPを消費し続ける必要がある。


 その消費したMPは戦闘人形と一緒に作られたアクセサリーである『ドールリンクバングル』を通じて戦闘人形へと送られる仕様となっている。


 普通に格闘するだけならそこまで大きく消耗することはないが、戦闘人形に備わっているスキルを発動すると当然ながらMPの消耗は激しくなる。


 中途半端なMPでは途中で動けなくなるため、一気にピンチになる。


「取り敢えずリーサの場合、戦闘はほとんどフィーネに任せたほうがいい。幸いにもフィーネの攻撃にはマスターのSTRもINTも関係ない。だったらそこら辺のステータスは全部切り捨てたほうがマシだろう。だから、基本的にMPに特化させる形へと持っていく」


 まさかのMP極振りである。まぁ確かにMPが切れてしまえばそれまでだが、逆にMPがあれば強力な戦闘人形がずっと戦い続けることとなる。


 【魔力操作】も相まって、消費するMPの量は少なくなっているため、より長い期間の稼働が可能になるだろう。


 リーサは早速、ステータスの振り直しを行う。レベルアップで手に入れたステータスポイントは手を付けないでおくこととなった。それはジョブ習得時に補正されるステータスを見て、ジョブの方向性を確かめてから割り振るためである。


 現在のリーサのレベルは6なので、初期ステータスのポイント全てをMPに割り振った結果、225となった。【魔力操作】のレベルはまだ1なので、通常稼働時は『2秒でMP1消費』し、スキル発動時はスキルの種類に応じてMPを10〜30消費する。


 スキルを使わなければ、7分半は戦闘可能となる。


 更に途中で回復すればその稼働時間は更に伸びることとなる。


「取り敢えず、これでレベリングは可能だろう。本来、パーティーを組んでキャリーしながら戦ったほうがいいんだが、現状時間制限はあるが俺たちよりも遥かに強い味方がいるからな。リーサにはソロで戦ってもらうことにする」


 レンがそう言い放ったとき、リーサが絶望で膝から崩れ落ちる。


 まぁ一人は心細いから分かるが、逆に俺たちが入ったら経験値はパーティーの人数分割合で減ってしまう。


 パーティーで効率がいいのは一体あたりの経験値が低くても効率よく倒せる場合のみである。しかも、その場合は最低限他のプレイヤーと同じ程度の活躍をしないともらえる経験値は少なくなる。


 そう考えれば、自律してリーサを守ってくれるフィーネがいれば経験値はすべてリーサのものとなるため、効率がいいのは間違いないだろう。


 仮にフィーネが動けなくなったら、その時は救援要請で助けを求めればいい。そうすれば俺かレンが助けに行ける。


 そういうところも説明して、リーサはようやく納得してくれた。


 よし、次はリーサの防具を手に入れよう。今日は居てくれるだろうか……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る