戦闘人形とユニークジョブ

 状況を整理すると、人形製作の最終工程である組み立てに入ったリーサは、最後の仕上げに俺から渡された宝石を使って作り上げた『ウィンマギアハート』と呼ばれるコアユニットを組み込んだら突然外観が変化し、自分で立ち上がったのだという。オマケに話し出すという始末。


 そりゃあ、腰を抜かすだろう。俺だってびっくりする。


EXエクストラマキナドール【名称未定】(☆7):戦闘人形バトルマトン。優れた技工と材料、そして一滴ひとしずくの奇跡により、自我を持つ程の能力を手にした至高の人形。超強化セラミック製。風属性の力に強く影響されている』


 そのランクは驚異の☆7である。ユニーク武器である俺の宝風剣と同じランクだ。それをほぼほぼレベル1のプレイヤーが作ったのだが、ビキナーズラックにも程があるのではないか?


 戦闘人形というのがよく分からないが、戦闘時に役に立つ存在であることは間違いなさそうだ。


「自律動作する小さな人形はβでも見かけたことはあったが、戦闘できるタイプの人形では私も初めて見たな」

「ていうかこれ、普通にユニーク案件なんじゃない? リーサちゃん、称号とかアナウンス来てなかった?」


 ユーリカが呆けたままのリーサに問いかけると、リーサはゆっくりと頷いていた。


 手に入れた称号は【至高のドールメーカー】と【マスター登録】の2つ。


 前者は☆7ランク以上の人形を作り出したプレイヤーに与えられ、後者は戦闘人形を作り出してマスターとなったプレイヤーに与えられる称号だった。


 そしてリーサはやはりユニークジョブの習得条件も満たしていた。そのジョブの名は『人形指揮者ドールコンダクター』だった。


 人形を使って戦うジョブは、クラス3に人形遣いドールテイカーというジョブがあるが、そちらは操糸スキルで人形を操って戦うジョブになる。それに対して人形指揮者は、おそらく戦闘人形を始めとする自律人形を戦わせるタイプのジョブになるのだろう。


 ある意味では、従魔士の人形版みたいなものだった。


「まさか目の前でユニークジョブになる人を見ることになるとは思ってなかったぜ……」


 感慨深そうに呟くリック。俺が二つほどユニークジョブの習得候補者になっていることは誰も知らない。他に精霊と契約したプレイヤーは今のところ居ないので、それらのユニークジョブはまだ習得可能だ。


「あぁ。しかし人形指揮者か……。ジョブ習得までレベルを上げれば、例のクエストでも即戦力になるかもしれないな」


 オークラさんが告げるのと同時に例の戦闘人形がリーサの前にしゃがみ込む。


『マスター、ワタシノナマエヲ、オネガイシマス』

「リーサ、名付けをしてやってくれ」


 どうやら戦闘人形もテイムモンスターと同じように名前をつける必要があるらしい。


 俺の場合、ゼファーは既に名前がついていたので、残念ながらまだ名付けの経験はない。


 リーサは「名前……」と呟き、考え込む。どういう名前にするのか考えているのだろう。ネーミングセンスは人によるからな。適当な名前をつけたら、それが世界中に知れ渡るという場合もあるから注意したい。俺も気をつけないと。


「そうね、あなたの名前は……【フィーネ】」

『【フィーネ】……トウロク完了、最適カ……終了。――これからよろしくお願いします、マスター!』


 名付けと同時に発声機能などの最適化が完了したのか、急に流暢に話し始める戦闘人形ことフィーネ。


 これは心強い仲間が増えたな。

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