新しい精霊術とリザルト

「ゼファー、あいつの後ろに回って精霊術を使うぞ。新しく覚えたアレを使う」

「成程、アレだな相棒! 初めて使うけど楽しみだな!」


 ボスエネミーに挑む前、俺がレベル14になったときにゼファーもレベル5になっていたのだが、その時に実は新しい精霊術スキルを覚えていた。


 まだ実際にその効果を確かめたわけではないので、どういうスキルなのかはわからないものの、現状俺たちのスキルの中で高いダメージを与えられそうなのはこのスキルくらいだろう。


 レンのように避け続けることができない俺は、ヘイト役になれば多分すぐにHPが全損してしまうこととなる。ゼファーがもしあの巨腕に当たれば一瞬にして二人ともお陀仏だ。


 だったらここで、やるしかないだろう。


 そのまま移動しても俺の速度では途中で気付かれてしまう。俺は『姿隠し』を使用してセラミックゴーレムの背後に向かう。


 何とか気付かれないまま、背後のエネルギーコアの前に立つ。レンには特に言ってないが、俺がなにかしようとしていることには気付いているようだった。もし、勢いが凄かったら避けてくれるだろう。……多分。


「よし、今だゼファー! 『鼓舞』ッ!」

「いっくぞぉ! 『緑精の大旋風テンペスト・ゼファー』!」


 『姿隠し』を解除し、『鼓舞』を発動するとゼファーが黄色く光る。そしてゼファーは、新しく覚えた精霊術スキルである『新緑の大旋風』を発動する。


 前に向けた小さな掌から緑色の光が溢れ出してからしばらく経つと、エネルギーコアどころかセラミックゴーレムそのものを呑み込みそうな程の竜巻が目の前に向かって吹き出していく。その嵐の中には雷鳴も轟いており、かなりの威力であることを物語っていた。


 レンはスキルの発動の時点で避けていたが、それでもスキルの範囲内にいると気付いたのかスキル発動までの間に全力ダッシュで横の方向に逃げていた。


 その威力は、6割ほど残っていたセラミックゴーレムのHPを一瞬にして全損する程で、一瞬にして竜巻に飲み込まれたセラミックゴーレムはエネルギーコアごと粉々に砕け散っていた。


 俺はそのあまりの性能に唖然としていたが、ゼファーはとても誇らしげだった。まぁほとんどゼファーが倒したようなものだったからな。


 ただ、これだけの威力を放つのだから勿論デメリットは存在するようで、まずは消費MPが300という圧倒的に燃費が悪いという点。MPがかなり高かったゼファーですら一発しか撃つことができない。俺はMPセーブがあるとはいえ、モンスターリンクでMPリンクをしている状態でなければ現状では使えない。


 後はスキルの発動から実際に竜巻が発生するまでにタイムラグがあること。これは、俺が使う場合ならばスキルの待機時間を短縮する【待機短縮】辺りのアビリティを習得すれば何とかなりそうだが、ゼファーが使う場合はそのタイムラグが相手が避ける隙を与えてしまう。


 これをもし、俺が使うとなると、精霊王の宝風剣によって精霊術の相乗効果が発生するわけで間違いなくこれより威力が高くなってしまうのだが、大丈夫なのだろうか……まぁ今のところ使えないので大丈夫か……。


〈戦闘終了。魔鎧の欠片×10、陶芸土×21、セラミック強化剤×8、ゴーレム核【大】を入手しました〉

〈経験値を獲得しました。レベルが4、上がりました。アビリティポイントとステータスポイントが付与されました〉

〈ジョブレベルが上がりました。アビリティ【テレパス】、スキル『スキルスワップ』を修得しました〉

〈習得可能アビリティに【豪胆】【致命の一撃】【強襲】が追加されました〉

〈称号【ゴーレムキラー】【屠る者】を獲得しました。称号【ジャイアントキリング】が【ジャイアントブレイカー】に変化しました〉


 戦闘終了を示す、リザルト結果のアナウンスが鳴り響く。レベル差11のボスエネミーを倒したからか、かなりレベルが上がった。習得可能アビリティも増えたが、後でステータス調整をしながら確認することにしよう。


 何より称号も増えた。ジャイアントキリングはなんか凄い事になっているが、レベル差を思い出して納得する。


 【ゴーレムキラー】はセラミックゴーレムを倒したことの証明で、ゴーレム系エネミーに対するダメージ量が1.2倍になるというものだ。


 【屠る者】に関しては、敵のHPが半分以上残っている状態で一撃で倒したプレイヤーに与えられる称号だが、どうやら従魔の攻撃でも称号の対象になるらしい。まぁそれも当たり前か。


 因みに称号効果は全ての攻撃のダメージ量が1.05倍になるというもの。称号の名前の割にはささやかなものだが、それでも火力アップに繋がるので良しとしよう。因みに従魔はこの称号効果の対象外だった。


 アイテムドロップも二人でボスエネミーを倒したからか、かなりの量がドロップすることとなった。目的の陶芸土も二人合わせて50個を超えたので目標達成だ。


 因みにレンの方は、ゴーレム核を獲得できなかったが変わりに『磁器巨像の魔杖』という武器を獲得していた。ボスエネミーのような特別なモンスターはレアドロップとして武器や防具を落とすことがたまにあるらしく、これはそのレアドロップの一つだった。


『磁器巨像の魔杖(☆3):杖武器。古の魔法使いがセラミックゴーレムを操る際に用いたとされる杖。ゴーレム核を使っているため魔術のキレがいい。セラミック製なので物理的にも使用可能。

 INT +25、STR+10

 レベル制限:レベル18以上』


 魔術士系のジョブならばそれなりに使えるだろうし、物理攻撃武器としても優秀だ。流石に宝風剣に比べるとステータス追加が低いと思ってしまうが、あれは☆7のユニーク武器なのでそもそもの比較対象ではない。


 こういう魔術でも物理でも使える杖は、得意武器を杖にした俺にとっては結構興味がある。


 レンに相談した結果、レンも使えない武器は不要だということで譲ってもらうことになった。


 流石にただで貰うのも気が引けるので、俺の方のレアドロップであろうゴーレム核【大】との交換という形になった。


 ―――――――――――

(8/18)『磁器巨像の魔杖』の武器性能を修正しました。また、アイテム名の『ゴーレムコア』を『ゴーレム核』に変更しました。

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