VSセラミックゴーレム

 ボスエネミーだけあってその大きさはそれまで対峙していたストーンゴーレムよりもかなりでかい。


 ストーンゴーレムは俺たちより少し小さいくらいだったが、セラミックゴーレムの場合は頭を見るにはかなり上の方まで見上げる必要がある。


「――――ッッ!!」


 セラミックゴーレムが声にもならない咆哮を上げると、瞬く間に戦闘フィールドが広がっていく。


 レンは二本の長剣、俺は精霊王の宝風剣を構える。ゼファーも俺の肩の辺りでやる気満々と言わんばかりの表情のまま浮かんでいる。


 セラミックゴーレムは巨大な右腕を高々と上げると、そのまま俺たちのいた場所へと振り下ろす。


 咄嗟に避けたが、俺の場合は振り下ろされた衝撃で砕けた地面の石粒が幾つか飛んできて【緑の息吹】が無くなり、スリップダメージでHPが2割減った。


 レンの方は、それすらも除けきったようでノーダメージだ。ゼファーも当たっていない。


「くっ、『緑風の弾丸』ッ! ――『鼓舞』ッ! ゼファー、『鎌鼬』だ!」

「あいよー! 『鎌鼬』っ!」


 俺とゼファーは精霊術スキルでセラミックゴーレムの注意を引く。『緑風の弾丸』は固定ダメージなので、当たったところで微々たるダメージにしかならない。


 『鼓舞』からの『鎌鼬』も少し表面に風傷を作る程度で、ほとんどダメージになっていない。


 だが、おかげでヘイトはこちらに向けることが出来たので、その間レンは好きに行動できる。


「行くぜっ、『ダブルスラッシュ』!」


 レンはセラミックゴーレムの背後に回ると、背中にある宝石に向かって双剣士のジョブアーツである『ダブルスラッシュ』を放つ。


 双剣で放つファーストスラッシュ――横薙ぎに敵を切り裂く【剣術】で最初に覚えるアーツ――であり、【二刀流】との相乗効果で同じ連撃のクロススラッシュよりも威力が高い。


 おまけに攻撃したのはゴーレム系のウィークポイントであるエネルギーコアなので先程の俺たちのカスみたいなダメージとは違い、セラミックゴーレムのHPの3割を削る。


 セラミックゴーレムは背後から攻撃してきたレンに対して巨腕を振るおうとしたが、そこにゼファーの『突風』が当たり、腕の軌道はずれてレンには届かなかった。


「よし、よくやったゼファー! もう一回行くぞ!」

「オッケー! って、うわぁぁぁ!」


 その時、ヘイトを稼いでしまったのかセラミックゴーレムはゼファーに向かって石粒を打ち出していく。慌ててゼファーは避けようとするが、幾らか当たってしまったようで、後方に吹き飛んでしまう。


「ゼファーッ!! 『モンスターリンク』! ――HPリンクッ!」


 咄嗟に従魔士のジョブスキル『モンスターリンク』を使うことで、俺とゼファーのHPを共有化することでゼファーのHPを全損する程のダメージを共有する。


 ゼファーは攻撃を食らったものの何とか立ち上がり、再び俺のもとに飛んでくる。取り敢えずHP回復薬を飲んでHPを回復する。


 現状、どちらかが倒されれば共倒れになるため、互いにダメージは受けないように立ち回らないといけない。ゼファーは、さっきのダメージの事が身に沁みたのか、俺の右肩にくっついて離れなくなった。まぁ、確かにこれならゼファーだけヘイトを稼ぐなんてことにはならなさそうだ。


 ちょっとだけ涙目になってるのが可愛らしかったが、今はそんなことを気にしている場合じゃない。


 俺たちがダメージを回復している間、今度はレンがセラミックゴーレムのヘイトを集めている。とはいえ、セラミックゴーレムの攻撃は全くと言っていいほどレンには当たらない。


 セラミックゴーレムはいうほど鈍足ではないのだが、レンはAGIが200を超えている上に【加速術】や【瞬脚】で瞬間的に更に加速することができるため、そのAGIは一時的には300を超えるほどだという。


 だが、自身がヘイトを稼いでいる状態では、レンは背後のエネルギーコアを攻撃することはできない。


 ならばレンがヘイトを稼いでるうちに、俺たちでエネルギーコアを攻撃する必要があるだろう。

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