廃坑道へ行こう

 草原エリアに出現するモンスターは、正直俺の敵ではなかった。既に適正レベルを越えているのだから当たり前といえばあたり前なのだが、レベルが低いリーサでさえ、短剣術を使いこなしてなんとか敵と戦えているのだからその適性レベルの低さを実感してしまう。


 まぁ、俺の場合はゼファーがいるからほとんど動いてないのだが。


 基本的に敵が出てきてもレンが剣の一振りで切り捨てるか、ゼファーが『緑風の弾丸』やアーツの『突風』で吹き飛ばしてしまうので、こちらに攻撃は来ない。


 そのくせ経験値やアイテムドロップは普通に獲得するので、なんかやるせない。まぁそれはリーサも同じだろう。彼女の場合は完全におんぶにだっこ状態だからな。


「ねぇ、ユーク。あの子あんなに強いのにどうやってテイムしたの?」

「あー、なんていうかアスレチックを遊んで、クリアしたらめっちゃ懐かれたって感じ?」

「はぁ?」


 意味分かんないと言わんばかりのリーサだが、俺だってよく分かってないんだから仕方ないだろ。


 まぁ多分、友好化あたりが微妙に作用してそうな気もするんだよな。まぁ一番はゼファーを満足させられたというところなんだろうが。


「よし、そろそろ着きそうだな。一応言っておくが、坑道内の適正レベルは18になる。ユークは絶対リーサにダメージを負わせるなよ」


 えっ、ちょっと待って。いきなり適正レベルそんなに上がるのか!?


 まぁ、βテスターの5人組がさっきまで攻略していたって言ってたから、そうなんだろうな……。


 森林エリアといい、初心者殺しの感じがひしひしと伝わってくる。


 幸いにも陶芸土は入口近くでも採集することができるため、取り敢えずまとまって行動しつつ採集していけばいいだろう。


 廃坑道の奥にはボスエネミーが居るらしいが、レンたちは連続ログイン時間の制限で挑戦できなかったらしい。まぁ今回は、リーサの人形の素材集めなので、無駄な戦闘はノーセンキューだ。


「リーサはともかく、ユークも採集したことがなさそうだから説明しておくが、採集は下三角の採集ポイントが付いてる場所で可能になる。たとえばあそこみたいな感じだな。取り敢えず繰り返し掘っていくと採集ポイントのマークが消えるから、そうしたら別の採集ポイントを探す。必要数が手に入るまで、これの繰り返しだ」


 そうレンは語ると、俺たちに小型のスコップを渡す。採掘スコップというアイテムで、これを使うと地面にある採掘タイプの採集ポイントでの採集速度が速くなり、採集量が増えるというものだ。まぁ、あくまで最初の方のアイテムなので、スピードも量も微増する程度らしいが。


 いつの間に用意してたのかと思ったが、さっきまで例のメンバーと坑道の方を探索していたので、その坑道で使えそうな採集用アイテムをギルドで一通り揃えていただけのようであった。まぁその時は使う機会がなかったようだが。


 あと、使えるかどうかわからないがゼファーにもスコップを渡してみた。


 ゼファー本人はそれを剣のように扱って遊んでいる。取り敢えず、採集用アイテムはちゃんと持てるようだ。


 その様子を見てリーサは悶えていた。


「だいたい一体の人形に必要な陶芸土の量は……150個か。失敗することも考慮すると、3倍量は欲しいところだから、そうなると450個か。まぁ、情報によれば掘削の場合はほとんど陶芸土らしいから、ひたすら掘っていけば大丈夫だろうな。よし、掘って掘って掘りまくるぞ!」

「「「おー!」」」


 レンの掛け声に合わせて俺、リーサ、ゼファーも掛け声をあげる。よし、採集開始だ!




(6/21)

 指摘があったので、採掘スコップについての説明を修正しました。

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