だから言わなかったんだ

 取り敢えず廃坑道を目指すことになった俺たちは、ひとまずパーティー登録を行う。これをしておかないとバラバラにエンカウントしてしまうことになるので、護衛の意味がない。


「さて、取り敢えずさっさと廃坑道に向かうとしよう。場所は俺が知ってるからサクッと案内するぞ。ユークはリーサを守りながら後ろからの襲撃に備えて、リーサは取り敢えず自分かユークがダメージを受けたらヒールで回復だ」

「了解」

「分かったわ」


 流石はβテスター様だ。的確に指揮していく。


 っと、そうだ。そろそろゼファーを連れ戻さないと。流石にフィールドエリアに行くのに従魔を連れて行かないとかなんのための従魔士だよって話だ。


「『モンスターコール』――帰ってこい、ゼファー」


 突然俺がスキルを使ったため、びっくりするリーサだったが、レンの方は俺が従魔士になったことを知っているので何をしたのかは理解しているようだ。


 俺がそう告げてからしばらくすると、ゼファーが上空から落ちてくる。……俺の顔面めがけて。


「ただいま! 相棒!!」

「むがっ、顔はやめろ顔は! ……ったく、どこまで行ってたんだよゼファー」

「んー? あの山の方?」


 ゼファーははじまりの街の北にある山を指差す。まだ実装されてないエリアじゃないか……。


 どういう光景だったか気になるが、それよりもリーサがかなり驚いたような顔をしている。かなり面白いのでしばらくそのままで……あ、戻った。


 レンの方も、想定していた従魔とは全く違うものが落ちてきた為に驚きを隠しきれていないようだ。そりゃあ、その顔を見るために今までステータスをひた隠しにしてきたようなものだからな。


「ちょっとユーク! 何その子! 超かわいい!」

「ん〜? 相棒の仲間か? おいらはゼファー! 風の上位精霊で、今は相棒の相棒さ!」


 ゼファーはニシシと笑いながら空中を一回転する。そしてリーサの方へと飛んでいく。


 リーサは小動物を触るかのようにのようにゼファーを抱きかかえようとするが、ゼファーには避けられてしまう。


「ハハッ、てっきり俺はフォレストウルフ辺りだと思ってたが、これは流石に想定外だぞ」

「だから言ったろ、ホントたいへんだったって」

「いやお前……まぁいいや、後でちゃんと詳しく教えてもらうからな?」


 ちょっと怒ったような雰囲気を出しながらレンは呟く。おーこわいこわい。


 ゼファーは気付けばリーサに捕まってて、赤ん坊のように抱きかかえられて眠っていた。えっ、いつの間に?

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