ダンジョンクリア報酬

 再び精霊の隠しダンジョンに戻ってきた。


 ゼファーは戻ってくるなり俺から離れて別の場所へ飛んでいった。一体どうしたのだろうと思っていたら、風のベールに何かを包み込んで運んできた。


「それは何だ、ゼファー?」

「ん。相棒が一応、ここの初制覇者になるから、報酬をな。どうせおいらもここから出ていくし、残してても他の精霊に取られちゃうからな」


 そう言ってゼファーは風のベールを解除すると、そこには大小様々な緑色の宝石と、三個の宝箱であった。この宝石、売ればかなりのお金になるんじゃないか!?


「おおっ! すげぇ!」

「ささ、取り敢えず宝箱は開けちまってくれよ。おいらも中身が何か知らないからさぁ〜」


 ゼファーが催促するので、宝石を回収した後に仕方なく箱の開封を始める。


 まず一つ目の宝箱。その中には黒い外套が入っていた。


 『姿隠しの外套』というアイテムで、装備者の姿を完全に隠す『姿隠し』というスキルが使用可能になるらしい。


 ただし、消費MPが毎秒10消費なので、現状だと20秒で効果切れとなり、スキルも使えない。まぁ解除タイミングは任意らしいので、瞬間的に使えればまだいいのかもしれないが、そんな機会があるかどうかは不明である。


 ステータス効果はMINが20上がるというもので、現状ほとんど上げていなかったので多少はマシになった感じだろうか。


 次に二つ目の宝箱。その中には飾り羽のついたブーツが入っていた。


 『風切鳥のブーツ』というアイテムで、効果アビリティの【早移動】を付与するというもので、これはかなり使える防具だった。


 ステータス効果がないのが残念ではあるが、【早移動】自体が移動時にAGIを1.5倍にするという効果があるので、実質ステータス効果があると思っていいだろう。……まぁ戦闘時には結局無効になるのだが。


 そして三つ目の宝箱。宝箱を開けると光が溢れていたのだが、それまでの白い光とは異なり、今回の宝箱は虹色の輝きをその中から放っていた。


 そして虹の輝きの中から現れたのは緑色の宝玉が刀身に付いた一本の短剣であった。


『精霊王の宝風剣(☆7):短剣武器(ユニーク)。精霊王の眷属たる精霊に与えられた短剣。精霊の力をより増幅させることができる。短剣としてはあまり切れ味は良くないが、精霊術の発動媒体としては最高クラスに近い。――我が眷属に選ばれし契約者が、これを上手に扱ってくれることを切に願う。

 INT+50、DEX+20、アビリティ【MPセーブ(精霊術)】追加

 レベル制限:レベル10以上 装備制限:精霊との契約 破損耐性 武器成長 譲渡不可』


 装備の説明を読んで、思わず気絶しそうになる。危ない危ない。……『緊急ログアウトしますか?』じゃないぞ、システムメニュー。


 まさかまさかのユニーク武器の登場である。ユニークジョブといい、精霊ってやっぱりかなりのレア種族なんだな。


 精霊術の使用を前提としているため短剣としての攻撃性能は皆無に近いが、高いステータス効果に精霊術の消費MPを減少してくれるアビリティ、そして破損耐性に武器成長とかなり強力な武器である。


 破損耐性は武器が破損して使えなくなるのを防ぐ効果、武器成長は使用者のレベルアップに合わせて武器も成長するというもの。譲渡不可も合わせて、ユニーク武器に多い特徴だ。


 精霊との契約がないと使えないので実質俺専用の武器のようなものだろう。まぁ譲渡不可なので渡しようもないのだが。


 うん、メイン武器、こっちにしよう。


 しかし、説明文の最後の文章はやはり精霊王のものなのだろうか……。期待に応えられるかは分からないが、とにかく使わせてもらうぞ。


 因みにアイテムのランクはあの精霊石を超える☆7であった。他の2つは☆4である。それでも序盤よりかなり強い。


 これらの装備をすべて装備したときのステータスが以下の通りである。


 ――――――――――――――――


 名前:ユーク

 Pパーソナルレベル: 10

 種族:人間族

 得意武器:杖

 ジョブ:従魔士テイマー レベル1


 HP:150 / 150

 MP:210 / 210(+50)

 STR:48(+10)

 VIT:58(+35)

 INT:88(+50)

 MIN:43(+20)

 AGI:63(+40)

 DEX:86(+20)〈+30〉


 SP:3


・アビリティ(3ポイント)

【杖術 レベル3】【テイミング レベル3】【友好化】【緑の息吹】【黒龍の印】【観察眼】【起死回生】【不屈】【精霊術】【早移動】【幸運】【MPセーブ(精霊術)】

・スキル

『テイミング』『精霊術』『姿隠し』

・アーツ

『強力杖殴り』『横薙ぎ』


〈ジョブ〉

・特性

 テイムモンスターの全パラメーターステータスが1.2倍。

 テイムモンスターを3体まで連れ歩くことができる。

・ジョブアビリティ

【テイム補助 レベル1】【従魔成長】

・ジョブスキル

『モンスターコール』『モンスターリンク』

・ジョブアーツ

『号令』『鼓舞』


〈装備〉

・武器

 メイン:精霊王の宝風剣(短剣)

 サブ:初心者の杖

・防具

 頭:なし

 胴体:森狼の革鎧(上)◎

 腕:森狼の革鎧(上)

 手:なし

 腰:森狼の革鎧(下)

 脚:森狼の革鎧(下)◎

 靴:風切鳥のブーツ

 外套:姿隠しの外套

・アクセサリー

 幸運の眼鏡

 星森のペンダント

 なし

 なし

 なし


〈称号〉

【ジャイアントキリング】【精霊の守護者】【精霊王の加護】


〈従魔・使役〉

ゼファー【精霊】レベル1


 ――――――――――――――――――


 うーむ。なんかすごいステータスになってるな。まぁ全部装備のおかげではあるんだが。


 とはいえ、βテストでクラス3ジョブを習得していたプレイヤーは、このジョブ習得時点でパラメーターステータスが幾つか100を超えていたなんてことはざらだったらしいので、まだまだなことには違いないのだが。


 【テイミング】のレベルも上がっている。テイム成功はやはり高い経験になるようだ。


 【精霊術】によって覚えた精霊術スキルは、契約した精霊が覚えている精霊術スキルをそのままプレイヤーが使えるというものだ。どんなスキルが使えるかは精霊によって異なり、精霊と同じように唱えることで使用可能となる。詳しい性能は使ってみないと分からない仕様になっている。


 後は、前に覚えられなかった【不屈】を初のジョブ習得で貰えたボーナスアビリティポイントを使って習得した。


 そのジョブ習得で覚えたジョブアビリティ、ジョブスキル、ジョブアーツに関しては簡単に触れることにする。


 まずアビリティ。【テイム補助】は文字通りテイム成功率に補正をかける効果アビリティ。これがあればああまで苦労しなかったんだが……。


 【従魔成長】は従魔を連れ歩いて戦闘した場合に従魔にも経験値が与えられるというもの。これに関してはシステム効果に近い。


 次にスキル。『モンスターコール』は離れた場所にいる従魔を呼び付けるスキル。戦闘では使えないが、探索では従魔に違う場所で採集してもらえるので、そこから呼び出すときに使う。


 『モンスターリンク』は使用することでその戦闘中、従魔一体のゲージステータスの一つを共有化することができるというもの。


 HPが高い従魔とリンクすればプレイヤーの耐久値がかなり跳ね上がるし、逆に低い場合プレイヤーのHPが加わって落ちにくくなる。


 欠点は共有化されてるので、HPの場合はどちらかがダメージを受けても両方のHPが減り、MPの場合は片方がスキルを使っても双方のMPが減少するという点、そして一戦につき一回しか使えないのでHPもMPもどっちも引き上げるということができないという点だ。


 とはいえ使い方によってはトリッキーな戦法も取れる。従魔士の代表的なスキルの一つだ。


 そしてアーツ。『号令』は従魔に号令をかけてこちらの指揮を聞かせる効果を持ち、『鼓舞』は従魔を鼓舞することで次に従魔が使うスキルやアーツの効果を高める効果がある。どちらも従魔を操って戦う上では欠かせないアーツとなるだろう。


 モンスターをいかに上手に操って戦わせるかが、従魔士の腕の見せ所というわけである。……まぁ俺の場合は何か違う方向に進んでいきそうな気配はするのだが。


 後は称号について。


 ゼファーと契約したことによって【精霊の守護者】と【精霊王の加護】の2つの称号を手に入れた。


 【精霊の守護者】は世界で初めて精霊と好意的に契約を結んだプレイヤーに与えられる称号だ。精霊との好感度が上がりやすいという効果がある。まぁゼファーと仲良くなれるのならありがたい。


 次に【精霊王の加護】だが、これについてはハテナがズラッと並んでおり、何がきっかけで習得したのか、そして称号の効果も分からなかった。まぁ、ゼファーが精霊王と関係があることは例の短剣のテキストからして明らかなので、習得理由はそれ関連だとは思うが、表示がこうなっている理由はさっぱり分からない。


 分からないものは放っておくしかないので、今のところはスルーすることにする。

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