神々の洗礼

 気がつけば、俺とゼファーは再びキャラメイクをしたあの神殿のような場所に立っていた。


 そこにはあの時と同じ女神の姿があった。


 ゼファーはこの光景が見慣れないのか、辺りをキョロキョロ見回していた。


 まぁ俺もレベル10になったら強制召喚されるなんて思ってもいなかったから、びっくりしてるけど。


『来訪者ユークよ。度重なる試練を乗り越え、強くなったようですね。それでは私からあなたへと洗礼を与えましょう。さぁ、あなたが望むジョブを宣言するのです』


 そう女神が告げると、目の前にめちゃくちゃでかい羊皮紙のスクロールが宙に浮かんで現れる。


 どうやらその中に俺のジョブが記されているようだ。ゼファーも興味深げに見つめていた。




 ――――――――――――――――――


 プレイヤー:ユーク 習得可能ジョブ


・クラス1

 戦士ファイター 剣士ソードマン 騎士ナイト 弓士アーチャー 魔術士マジシャン

 工作士クラフター 調合士ブレンダー 鍛冶士スミス 裁縫士テーラー 調理士クッカー

 商人マーチャント 召喚士サモナー 冒険者アドベンチャー 回復術士ヒーラー 強化術士エンハンサー


・クラス2

 重装戦士ヘヴィファイター 軽装戦士ライトファイター 魔導士ウィザード 仙術士ハーミット

 合成士ミクスチャー 農家ファーマー

 従魔士テイマー 神官プリースト 侍僧アコライト


・クラス3

 仙闘士ハーミットファイター 蒐集家コレクター


・ユニーク

 精霊使いエレメントテイマー 精霊術士エレメントスペラー


 ――――――――――――――――――




 思った以上にクラス2のジョブの習得条件を満たしていて驚いたのと、まさかクラス3ジョブも条件が満たせていたものがあるとは思わなかった。


 とはいえ、片方はアイテムを集めることに特化したようなネタジョブなので、なんとも言えないのだが。


 どうやら仙術系のジョブは杖での物理攻撃がトリガーになっていると見て良さそうだ。


 そして、転移前のアナウンスで気づいていたが、どうやらユニークジョブの習得条件を満たしていたらしい。


 ユニークジョブは、ゲーム中の特定の条件を満たした一プレイヤーだけが習得することができるジョブのことだ。


 これだけは条件を満たすとジョブ変更用のアイテムを使わなくても変更することができる。逆にそこで変更しないと、次に同じ条件を満たしたプレイヤーに習得資格が移ってしまう。


 なお、次にジョブ変更アイテムを使ったときに、まだ条件を満たしたプレイヤーが他にいなければ習得可能である。


 精霊使いはおそらく精霊をテイムしたことによるものだろう。ジョブの特性も従魔士に似ているが、こちらはモンスターに対する補正が精霊種にのみ与えられるようになる。補正効果はかなり高いが、現状ゼファーしか精霊がいないため、宝の持ち腐れになりそうだ。


 もう一つの精霊術士は、どうやら強制習得となった【精霊術】アビリティがきっかけになっているようだ。単純に精霊術スキルを使用する際の補助をしてくれるのだが、その効率はかなり高い。


 どちらもかなり強いジョブだが、ユニークはクラス3相当なので当然の話になる。


 しかし、今回すでに俺がなるジョブは一つに決まっている。


「俺は『従魔士』を希望する!」

『分かりました。では、あなたに従魔士の力を与ましょう』


 女神が俺の宣言に対して返答すると、静かに掌を前に出して、光の奔流を俺に向けて放っていく。


 ジョブの力をここで感じるのだろうが、生憎にも従魔士はステータス補正がないため、いまいち実感を持つことができない。


 だが、ジョブを習得できたことは脳内に響いたアナウンスではっきりと理解できた。


〈ジョブ『従魔士』を習得しました。ジョブを初習得したのでボーナスアビリティポイントを5手に入れました〉

〈ジョブアビリティ【テイム補助】【従魔成長】を修得しました〉

〈ジョブスキル『モンスターコール』『モンスターリンク』を修得しました〉

〈ジョブアーツ『号令』『鼓舞』を修得しました〉


 脳内にアナウンスが響く。これで無事にジョブを習得することができた。


 ジョブの習得と同時に習得したジョブアビリティやジョブスキル、ジョブアーツはそのジョブについている状態であれば効果を発揮したり、使用したりできるものである。


『新たな従魔士ユークよ。あなたが従魔士以外のジョブを望むのであればジョブチェンジチケットを手に地上の神殿へと歩みなさい。ただし、その時はそれまでのジョブでの歩みをすべて失うことになります』


 女神の言葉の真意は、別のジョブに変えればそれまでのジョブでのジョブレベルはリセットされるということである。因みにジョブレベルはそのジョブにあった行動、戦闘職なら戦闘、生産職なら生産を行うことで上げることができる。


 ジョブレベルが上がれば、新しいジョブアビリティやジョブスキル、ジョブアーツを覚えることができる。


 しかし、ここで女神がジョブチェンジを勧めてくるということは、一部のクラス3ジョブは他のジョブでの戦闘経験なんかが必要だったりするのだろうか?


『ジョブにはレベルが存在します。そのレベルを極限まで高め、ジョブマスターとなれば自由にジョブを変えられるようになり、またアビリティの一つをあなた自身のアビリティとして習得することが可能でしょう』


 女神が呟く。ジョブにはジョブレベルの極限であるマスターレベルが存在し、それが上限まで行くとジョブマスターに認定され、異なるジョブに変更してもジョブマスターとなったジョブのレベルはリセットされない。


 そして、ジョブマスターとなったジョブのアビリティを一つ、習得可能にするという特典がある。基本的にジョブアビリティはその系統のジョブを習得していなければ覚えることはできないため、そのジョブアビリティはジョブ関係なく使えるのは有利になりうる。


 勿論、それがうまくハマればの話ではあるが。


『さぁ、行きなさい。従魔士ユークよ。あなたの物語はここから始まるのです』


 そう女神が告げると、再び意識が混濁していく。これからジョブチェンジするたびに同じことになるのかと思っていたが、最後に女神は『次からは神殿でジョブを授けます。今回は初回ボーナスです』と呟く。


 成程、たしかに形式上はこれもチュートリアルだからな――。

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