精霊の隠しダンジョン
「ここが、精霊の隠しダンジョン……」
恐る恐る周囲を見回していく。何やらアスレチックのような構造の作りになっているが、何が待ち構えているのか……いやまぁ精霊には違いないのだが。
胸につけていたペンダントからは光が失われている。試しに取り出すと『精霊石【空】』となっていた。精霊装備の素材には使えなくなっており、また精霊が好むという文章もなくなっている。
とはいえ、☆5の結晶アイテムであることは変わらなかったので、星森のペンダントの中身としては問題はなさそうだ。
取り敢えず一安心し、星森のペンダントに精霊石を戻すと、突如として目の前から突風が吹き寄せてくる。油断すると後ろに飛ばされそうな勢いだ。
何とか耐えきり、目を開くとそこには宙に浮かぶ小さな子供のような何かがいた。
宝石がちらほらついたポンチョコートのような外套を纏っている格好で、短い髪は青紫色に輝いている。
そのエメラルドグリーンの真ん丸な瞳は、眼鏡をかけた俺の姿をはっきりと写し出していた。
「お前、来訪者か。来訪者がここに来るなんて珍しいな」
「珍しい……? 初めてじゃないのか?」
その子供のような存在は、来訪者が来たことが珍しいのかくるくる回りながら俺の周りを飛んでいく。
その言葉に疑問を抱いた俺はその存在に問いかけるが、特に返事はない。変わりに俺の眼前で宙に止まると、その存在はにんまりとした笑顔を浮かべる。
「おいらはゼファー! 風の上位精霊だ! お前、おいらと遊んでくれよ!」
そう、風の精霊ゼファーが告げると、それまでアスレチックのような形だった床や壁が動き出し、本当にアスレチックの形になった。危なさそうな所には蔦のような植物が生え、下には水が流れ込む。
どこかのスポーツアスレチックのようなギミックが多く見えるが、一体これはどういうことなのか……。いや、なんとなく分かるのだが。
「お前は、このアスレチックを進んで、先にいるおいらを捕まえてみな! もしおいらを満足させられたら、契約してやるぜ!」
そうゼファーが叫ぶと、瞬く間に先の方へと進んでいく。そしてある程度行ったところでゼファーは止まった。しばらくはあの場所で待っているようだ。
「マジか……まさか、ゲームでこういうのやるとはなぁ……まぁゲームならではって感じがするから嫌いじゃないけど!」
割と体を動かすのは得意ではないが嫌いではないので、こういうアスレチック系なら楽しんでやれそうだ。現実だとここまで本格的なやつは中々体験できないしな!
取り敢えず、意味があるのか分からないが、ストレッチを行ってから遠く向こうの方で楽しそうに待っているゼファーに向かって走り出す。
そしてそれから2秒後、ジャンプが届かなくて水の中に落ち、次の瞬間にはスタート地点に戻されていた。
……ゼファーはケラケラ笑っていた。
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