生産プレイヤーと気になるもの

 ――ダイブイン、アルターテイルズ


 軽く水を飲んでトイレに行ってから、再度ログインする。まだテイムモンスターを手に入れてないので、早急に手に入れる必要がある。


 取り敢えず草原エリアはまだ混雑しているので、また森林エリアに行く必要がある。


 とはいえ、さっきまでの戦いでかなり回復アイテムを消費してしまったため、一度補充する必要があるだろう。


 後は、AGI辺りを増やす装備を確保したい。


 流石にアッシュウルフに対抗するには無理があるが、フォレストウルフには翻弄される事なく戦いたいものだ。


 そんなこんなで再びイアンの店に行こうとしたが、残念ながら不在のようだ。もしかしたら一度きりのイベントだったのかもしれない。いい人だったんだけどなぁ……。


 仕方ないので、取り敢えず周りをぶらぶら歩いていく。徐々にだが、露天商を営むプレイヤーも多くなっていった。


 まぁ、2時間もやって未だにジョブについていないのはかなりレベリングに時間がかかってしまったか、余程の凝り性なくらいだろう。


 俺はまぁ後者になるよなぁ……。


 そんな中、ふと一つの露天で売られているものに目が惹かれる。その商品を置いていた鍛治士スミスらしい格好の女性プレイヤーさんに対して声をかける。多分歳上だろう。


「あの、お姉さん」

「へっ!? あ、はい! なんでひょう!」


 話しかけたら凄い動揺された。話しかけられるなんて思ってなかったのだろう。噛んでしまって恥ずかしがっているところを見ると、申し訳ない気持ちになってしまう。


 っと、そんなことより本題本題。


「あの、そのペンダントが欲しいんだけど」

「えっ、これですか? でも、これなら他のプレイヤーさんやNPCさんの店のほうが効果が高いですよ?」


 そうその女性プレイヤーさんは語る。確かに、単純なステータス効果を見れば、他の店売りの商品よりは少しだけ劣ってしまっている。イアンは別として、おそらく普通のNPCの職人の方がまだ性能がいいものを作りそうだ。


 それでも、俺にはこのペンダントが欲しい理由があった。


 と、そこまで話してて所持金のことを思い出す。そうだった。今、400FGしか手持ちないんだった……。


「あーっと、ところでこれって幾ら?」

「えっと、一応1500FG、です」


 まぁそりゃそれくらいはするよなぁ。普通に鉄製だし。


 どうしようかと思って悩んでいたが、ストレージを見たらさっきまでのホーンラビットとフォレストウルフ狩りで溜まっていたモンスター素材が結構あることに気づく。そうだ、これを使えば!


「あ、お姉さん! この素材の中から欲しいやつとかない? ちょっとお金が無くて、物々交換してもらえると助かるんだけど……」


 そう俺が言うと、その女性プレイヤーさんは一瞬ぽかんとした眼差しを俺に向けるが、すぐにクスクスと笑い出す。


「ふふっ、いいよ。じゃあ、交換するからフレンドコードを交換してくれる?」

「え? あ、そうか。トレードはフレンドじゃないと……あ、はい! ちょっと待って下さい!」


 急に敬語から親しげに話してくるので、こちらは逆に慌てて敬語になってしまう。


 フレンドコードは登録することでフレンドチャットやトレードが行えるようになる。まぁ親しい人や今後とも仲良くお付き合いしてくれそうな人と交換するのが普通の使い方だ。


 俺はその女性プレイヤーさん――サザンカさんとフレンドコードを交換する。まだ蓮司とは合流してないので、これが初めてのフレンド登録となった。


「じゃあ……そうね、この獣骨【中】と獣骨【小】3つだったら……いいかな?」

「あぁ。それなら大丈夫。じゃあ送るね」


 そうして、俺は幾つかの獣骨をサザンカさんに送り、変わりに俺は目的の『星森のペンダント』を手に入れる。


『星森のペンダント(☆2):アクセサリー。宝石・結晶アイテムを中に入れることができる。入れたアイテムのレア度で効果アップ。

 AGI+10』


 それは、中にものを入れることができるロケットタイプのペンダントだったが、その効果が面白かったので惹かれてしまった。


 宝石や結晶アイテムのレア度で効果が上がるので、これに精霊石【風】を入れればかなりの効果が得られるのではないかと思ったのだ。


 まぁ使ってみてダメなら仕方ないけども。


「ふふっ、ありがとう。君が私の初めてのお客さん。良かったぁ、これでダメなら辞めようかなって思ってたから」

「いやいや、勿体ないって! サザンカさん、結構センスあるし! アビリティやスキルの腕だって、鍛えてナンボでしょ?」


 俺なんて幾らやっても【テイミング】のレベルは上がらなかったがな!


「そうだね。ありがとう。もう少し頑張ってみるよ。ユークくんも、頑張ってね」

「あぁ、俺も絶対従魔士になるから! そしたらまたサザンカさんのところで装備を新調するよ」

「ふふっ、その時までにもう少しいいものを作れるよう頑張るね」


 そう言って、サザンカさんの露天から離れていく。ついでに近くのNPCの店で残りの素材で不要そうなものを選んで売りつける。これで残金は3800FGになった。


 先に売ってからサザンカさんの店に行けばよかったが、その場合はサザンカさんとフレンドになれなかったので結果オーライだ。


 まぁ、回復アイテムを補充したのでお金はすぐに無くなってしまったのだが。

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