従魔士を目指して

はじまりのキャラメイク

 ――アルターテイルズ・フロンティア・オンライン サービス開始日。


「よし、ようやくプレイできるな……!」


 蓮司やシグねぇを始めとするβテスターは少し早めにアーリーアクセスとして午前9時に、そしてファーストロットの抽選販売で見事当選を勝ち取った幸運の持ち主たちは本サービス開始となる午前11時に合わせてダイブコネクトからゲーム内サーバーにログインすることができる。


 基本的にβテスターが優遇されているのはこのアーリーアクセスとキャラメイク時のステータスポイントが少し多いことくらいしかない。


 とはいえ、早くログインできるということは、それだけ早く進めることができるということになる。


 つまり、βテスターである二人は既にアルターテイルズの世界で遊んでいるのである。少しだけ羨ましい。


 しかしそんなことを考えてるうちに11時をちょっと過ぎたので、俺もようやくアルターテイルズの世界に入ることができる。


 気付けば自分がかなりこのゲームのことを楽しみに思っていることに気付き、笑みが浮かんでしまう。


 因みに有沙はカフェの手伝いがあるということで、夕方以降にダイブコネクトの初期設定を終わらせてプレイし始めるということになった。なので、その時に蓮司と共に合流するということになった。


 双子はまだ中学生なので、18歳以上のプレイヤーが一緒にいないとプレイできない仕様となっている。


 そのため、今日はシグねぇがつきっきりで面倒を見るとのことだった。ログイン時間も高校生以上と比べて制限されているため、偶然遭遇するなんてことがない限りは、今日は会えないだろう。


 まぁ会ったところで名前も容姿も知らないのだが。シグねぇがβテストの時の姿のまんまなら、かろうじて分かるかもしれない。


「さて、さっそく起動してみるかな……」


 あらかじめソフトのインストールを済ませたダイブコネクトを起動し、意識データのコネクト端末であるチョーカーを首につける。


 このチョーカーは意識データだけでなく、バイタル情報を正確に測定するため、もしダイブ中に肉体に異変があればすぐに強制ログアウトされる仕様になっていた。


 次に、眼鏡を外して催眠誘導用のモニターゴーグルを顔につける。ここから顔面をスキャンすることでアバターを作成するのだという。


 このモニターゴーグルが無ければ催眠状態にならないため、意識データをネットワーク接続することができない。ダイブコネクトでは唯一純正以外のサードパーティー製品の使用が認められているパーツでもあり、他にもヘルメット式やグラスタイプなどが出ていたが、そこまでお金をかける意味が分からなかったので悠人はメーカー純正品をそのまま使っている。


 ゲーム内では視力がどうであれ、意識データそのもので視力の補正がかかるため、眼鏡は不要となっている。


 以前行ったゲームサロンにあるVRマシンでは、座席に座って催眠誘導用のモニターが顔を覆うことで自動的にシステムにログインすることができたのだが、ダイブコネクトの場合はゴーグルをつけた状態で音声でのコネクトが必要となっていた。


「ダイブイン、アルターテイルズ」


 そう発言するとダイブコネクトが動き出し、モニターゴーグルに催眠誘導用の映像が映し出される。


 あっという間に催眠状態になったのであろう。自然と眠気が押し寄せてきて、意識は電子の海へと飛び込む形となった。


 俺の意識は無意識のまま不定形の姿となり、クラウド処理されてゲーム『アルターテイルズ・フロンティア・オンライン』のサーバーへと到着することとなる。


 なお、今回は直接アルターテイルズのゲームへとログインしたが、ゲームを指定しなければダイブコネクトのパーソナルバースにログインすることとなり、そこからプレイするゲームを選択したり、メタバース空間へとログインすることができる。


 パーソナルバースやメタバース内ではダイブアバターと呼ばれるアバターの姿を持つのだが、今回アルターテイルズをプレイするために必要な最低限の設定しかしていないため、ダイブアバターはまだ未設定の状態である。


 因みに未設定の場合、意識データは光の玉の姿となる。




 ――ようこそアルターテイルズ・フロンティアへ。




 意識が覚醒した時、そこは眩い光に包まれた見知らぬ神殿の中であった。


 その神殿で俺の意識の前にいたのは、翼を持った一人の女性であった。その格好は古の神話に出てくる女神のように純白の布をぐるっと巻き付け、衣装としているようであった。


『ようこそ、フロンティアへ。歓迎します、来訪者よ』


 その翼を持った女性――その容姿から女神と呼ぶことに決めた――は口を開くことなく直接俺の意識に向けて語り出す。


 どうやらここがゲーム開始前、キャラメイクをする場所のようだった。


 キャラメイクではプレイヤーの分身たるアバターを作成する。


 身体データはモニターゴーグルやチョーカーからバイタルデータをスキャンすること、そして、意識データ内の記憶からほぼ正確に読み取ることが可能であり、身長や性別は個別に変更できないが、体格や髪型などの各種身体的特徴は細かく調整することができる。


 また、設定上ヒト種族とされている7つの種族から一つを選択することができ、それによって変更できない身長や体の部位も変動することがある。


 選ぶことができる種族は人間族、獣人族、エルフ族、ドワーフ族、ハーフリング族、竜人族、メカノイド族の7種類となる。


 それぞれの種族によって成長しやすいステータスと成長しにくいステータスがあったり、習得できるジョブが種族によって偏りがあったりするのだが、それは人間族以外を選んだ場合になる。


 基本的に人間族を選べば、ステータスの成長度合いすべて均衡で、なおかつジョブは全種類から習得することができる。


 ここはDEXが上がるドワーフ族が良さげではあるが、残念ながら従魔士は人間族しか習得することはできない。まぁ、人間族の他の種族にはモンスター内に始祖種族とやらがいるらしいので、その始祖をテイムしてしまう『同族飼い』という問題もあるのだろう。


 まぁ、果たして同族というべきなのかは定かではないし、そもそもそんなのテイムできるのかという話ではあるのだが。始祖とかめっちゃ強そうだし。


 なのでここは人間族を選択することになる。


 女神に背を向けてアバターの調整を進め、結果的に、髪色を真っ黒にし、髪を少しだけ伸ばす程度でアバターの調整を終了する。眼鏡の項目もあったが、取り敢えずつけないことにした。不要だろう。


 顔も、あまり変えすぎると蓮司たちに認識されない可能性はある。……とはいえ、ゲームの世界でまで眼鏡をかける気はない。これで俺も眼鏡からの開放だ!




 ――――――――――

(7/27)アビリティの説明で、現在の設定と齟齬がある部分があったので一部修正しました。また、ステータス値の略称にふりがなを追加しました。


(1/6)内容が長かったので途中から別ページとして分割しました。また一部内容を改定しました。

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