第115話 番外編 解放戦争
小麦畑でボロボロの少女と軍人が立っていた。
その国の軍人はポケットからチョコレートをその少女に差し出した。
腹を空かせて、それでも農業に勤しむまだ小さな少女へと。
その軍人の目には少し涙が浮かぶ。
「ねぇ、お兄ちゃんはなんで軍人さんなのに優しいの?」
「……」
その軍人は何も答えなかった。
この現代において、ボロボロの衣服を着て朝から晩まで農作業。
自由など何もなく、だがそれが普通だと教え込まれたその少女を見て、軍人は何も言えなかった。
ただ優しく抱きしめてこういった。
「もう少し……もう少しだから」
「? ……なにが?」
少女の疑問に答えずにその軍人は去っていく。
本来国民を守るはずの軍人は、この国の国民達からの恐怖の対象だった。
しかし、その軍人だけは他とは少し違っているようだった。
…
今日は少女の誕生日。
「パパまだかなー。おなかすいたなーチョコ本当に買ってきてくれるのかな」
まだ10歳にもならない少女は暗い家で夜、一人でパンと水を二人分用意していた。
母親も兄弟もいない少女は独りぼっち、でも寂しくはなかった。
なぜなら大好きなパパがいるからだ。
今日は王都へと小麦を売りに行っているのでそろそろ帰ってくるころだった。
いつも二人で食事をするこの時間だけが少女の人生の中で唯一の楽しみだった。
どんなに大変でも二人なら笑って過ごすことができる、大好きなパパとなら。
しかしその日は父は帰ってこなかった。
何かあったのかと心配で眠れぬ夜、その翌日の朝早朝。
ドンドン
「た、大変だ! ナギサちゃん! ナギサちゃん!」
うつらうつらしていた少女の家の扉がドンドンという音とが鳴る。
隣の農家の住人が慌てた声で少女を呼んだ。
「あ、フェルおじさんこんばんわ。どうしたんですか?」
「……お父さんが、君のお父さんが……王都で軍人に連れていかれた……異端審問だと」
「え? 異端審問?」
少女はとたんに血の気が引いていくのを感じる。
異端審問、それは取り調べとは名ばかりで殺すことが決まっている拷問。
王が支配するこの国ですべての国民は王族のもの。
王族や、それに従属する軍人がやりたい放題するための法律であり、この君主国家でそれは死刑と同義だった。
気に入らない、軍に歯向かった、根拠はなくても謀反の疑いがある。
この国の国民を恐怖で支配するための制度だった。
磔、火あぶり、串刺し、あらゆる拷問を経て、殺されるその異端審問はこの国の恐怖そのもの。
「なんで、なんで……」
「小麦を売ったお金で……禁止されてるチョコを買ったんだ。それを軍人に見られて……くそっ! あんまりじゃないか!! 俺達はチョコを買うことも許されないのかよ!」
「そんな……」
チョコが食べたい、少女が10歳になる誕生日に願ったたった一つの願い。
贅沢とすらいえないような、ほんの少しの願いだった。
だがその願いは今、少女の大切な人を殺そうとしている。
ナギサと呼ばれる少女は急いで王都へと向かった。
鼓動が脈打ち、汗が止まらない、体と心が乖離して地面を蹴っている感覚も薄れていく。
そして王都へと到着した。
人口40万人ほどの小さな国家、でありその大半が奴隷のような国民達。
しかし王都にある軍は、旧式であるがKOGを有している。
人がいくら束になろうともKOG相手では、鍬や鎌しか持たない農村など相手にならない。
その王城の前で今処刑がおこなわれようとしていた。
石づくりの巨大な王城は、奴隷達の血と汗と命で立てられている。
「パパ!!」
軍人達の包囲網の中心で磔にされているナギサの父。
体中痣だらけでぐったりしているが、まだ確かに息はある。
そしてその奥、王城のバルコニーから見下ろすのは、この国の王。
独裁絶対君主国家アルバスの王アルバス八世。
ガリガリの農民たちの中にあって、まるで豚のように肥え太り、横には裸同然の美女を数十人からはびこらせる。
「はやく、燃やしてよ。僕は断末魔が聞きたいんだよ。それが一番興奮するんだ」
横の美女の胸をわじづかみにし、自分の生殖器を加えさせながらふんぞり返るデブは、捕らえた男を燃やせと命令する。
「はっ。すぐに」
横にいる意地悪そうなこの国の宰相もすぐに了承した。
「ほんとうに、世界連合とかいうカス達が最近うるさくてイライラしているんだ。この国は僕のもの、国民も全部僕のもの、それをどう使おうがかってだろ、まったく話が通じないバカは困るよな?」
「はっ。その通りでございますアルバス様。アルバス様ほどの統治の天才は世界を見渡してもおりませんので」
「そうそう! 勝手に増えるんだから絞れるだけ絞ってちゃんと管理してあげないとダメなんだよ。わかってないよね~~自由? 家畜に自由を与えてどうするんだろうね」
「はい。その通りでございます。……アルバス様、それでは始まるようですよ? いい声で泣けるように拡声器も用意しておりますので」
「いい仕事するね~~」
その巨漢は、ゆっくりと身を乗り出し、バルコニーから下の磔にされているナギサの父を見る。
そして今には火をつけられそうになっていた。
周りにはこの国のKOGが立っている。
今日は恐怖を埋め込むためのデモストレーション、力を見せつけたいとで全機である100機すべて起動させている。
「パパ! パパ! 助けて! パパを助けて!!」
少女は必死に叫んだ。
軍人達に止められるが、それでも必死に叫ぶ。
その声は、あたりに響き、アルバスの元まで届いてしまった。
「……なんかうるさいのがいるな、あれも一緒に燃やしちゃって」
「……了解しました。おい!」
「はっ!」
その一言だけでナギサは軍人に捕らえられる。
同じように父の横にロープで縛られてつるされたナギサ。
「パパ! パパ!」
「……ナギサ? ……ナギサ!? なぜここに!!」
横から聞こえたその少女の声に父は目を覚ます。
そして状況を理解してしまった、娘は自分を助けようとここまできてしまったということに。
そしてそれをあの独裁者は許すはずがないということも。
「お、お願いします! アルバス様! 私はどれだけ拷問を受けても大丈夫です! だからナギサを! 娘はお助けください!」
父は必死に王に嘆願する。
「お願いします、なんでも! なんでもしてみせます! だから!!」
それを聞いてアルバスは嬉しそうに答えた。
「じゃあ一分。一分声を上げずに火あぶりに耐えてよ。なら許してあげる」
悪魔のような提案を。
「……わかりました。耐えてみせます」
「パパ!? ご、ごめんなさい。あたし、あたし」
「いいんだナギサ、ありがとう、きてくれて。パパが頑張って助けるからな。少しそっちも熱いかもしれないけど我慢するんだぞ?」
父は心配かけないようににっこりと笑顔を娘に向けた。
そして父の足元に火がくべられる、火は一瞬で燃え上がり父の足元を焦がした。
一分、気づけばすぐの時間のはずが、まるで永遠にも感じた。
父は耐えた、涙と唇から血を噴出しそうになる激痛の中、一分という悠久の時間を耐え抜いた。
一度火は消され、父は助けられる。
といってもアルバスが様子を見たいだけではあったのだが。
足は重度のやけど、しかしまだ原型は残っている。
だが、父は耐えた。
観衆見守るなか一度も声を上げずに、耐えきって見せた。
「はぁはぁ、やった。これで……」
父は激痛の中安堵する、これで娘だけは助かるはずだと。
しかし。
「……耐えちゃったね。一分って短すぎた?」
「……そうですな。ギリギリというところでしょうか」
「ふーん、じゃあ次は10分で」
悪魔は契約など守らなかった。
「そんな! 一分耐えれば娘は助けてくださると!!」
「うん。じゃあ解放するよ、んでなんとなく殺したいからもう一回捕まえたということで」
「はぁ!?」
暴論過ぎるその発言に父はもう心が折れかけていた。
もはや、自分達はあいつらを楽しませるためだけの存在なのだと。
悔しくて涙が止まらない、しかし相手はこの国の王、助けてくれる存在などいない。
そして父は再度磔にされ、娘は横で泣き叫ぶ。
観衆達もただ目を下に向けるが助けることなどできない、もし声を上げるならば次に燃やされるのは自分達なのだから。
だから、諦めるしかない。
「ごめんな、ナギサ。ごめんな……」
「パパ、大丈夫だよ。次は……もっと楽しい場所でパパの子になりたいな」
二人は泣きながらも笑顔を浮かべる。
恐怖で引きつった顔を見せないように、必死に笑ってみせた。
この世界には、どうしようもない理不尽がある。
それでもこの大切な人を思う感情だけは支配させてやらないと。
そして一体のKOGが、足元に近づき火をくべる。
またこの国の二人の人間がただ死ぬだけ、世界の人口から2という数字が減っただけ。
そんな大したことのない事実が起きようとしている。
正義などこの国にはない、あるのはただの力の暴力。
その力の前には、正義は何の意味もなくただ沈黙することしかできない。
国民達は握りこぶしを作りながらも下を向く。
誰も声を上げないし、誰も行動に移せない。
だけど、そんな中に。
「ごめん、ロード」
いまだに青臭い正義を捨てきれないものもいる。
「!?」
突如火をくべようとしていたKOGが叩き切られる。
味方であるはずの旧型のKOGによって、一刀のもと破壊された。
それを見たアルバスは叫んだ。
「な、なにが起きてるの? 味方同士でなにやってるの!?」
「そ、そのKOGを捕らえろ!!」
その一機のKOGは、捕らえられていた二人の縄を一刀で断ち切り解放した。
そして、優しく告げた。
「ここは戦場になります、なんとか歩けますか?」
「あ、あなたは?」
「すみません、早く助けてあげられなくて。耐えきれるならそれがと……でももう大丈夫、俺が、俺達が全部終わらせます」
その声は優しかった。
軍人であるはずなのに、なぜここまで安心してしまうのだろうと父と娘は思った。
その声に娘のナギサは気づいた。
「この声……あの時のチョコくれた軍人さん!?」
ナギサの声に告りと頷くKOG、そして背中を向けて剣を抜く。
「こちら、御剣剣也。聞こえるかみんな。すまない、作戦は失敗した」
「なにやってんだよ、団長!!」
「作戦決行は来週でしたよね!! 失敗したというか、失敗させたというか」
「でも、なんとなくこうなる気がしてました。団長がいかなかったら俺がいってたかも」
「はぁ、それは私も思ってたけど。……でもそんな団長が」
「「最高っす!」」
剣也が通信するのは世界騎士団のパイロット達。
彼らはスパイとして軍に潜り込み作戦行動を行っていた、圧制に苦しむこの国を救うために。
そして四機のKOGが剣也を守るように四方を囲む。
合計で五機のKOG、対するは残り95機のKOG。
アルバスは叫ぶ。
「そ、そいつらを殺せ!!」
「俺が50受け持つから、お前ら10機ぐらいはいけるな?」
「建御雷神じゃないのに、そんなに大丈夫っすか?」
「私は20はやってみせます。これでもエース級に昇格したんですから」
「任せてくださいよ!!」
「相手は所詮、小さな国の軍人です、世界騎士団の私達の相手になるはずもないでしょう。余裕です」
たった五機のKOGは奮闘する。
20倍近い戦力差をものともせずに、同じ機体とは思えないほどの性能を見せて次々とKOGを撃破していく。
「な、なんだ。何が起こっている!! 宰相!!」
「わ、わかりません。一体なにが!?」
一時間ほどの攻防、城を守るように戦ったアルバス軍との戦いは一旦は膠着状態に陥った。
「どうします? 団長」
「いや、もうそろそろ来てくれるさ」
その時だった、空に巨大な浮遊艦が現れる。
「お、噂をすれば。やっぱり俺が勝手に行動するとおもってたのかな?」
見上げる剣也が見たものは、世界騎士団のものとなった巨大な浮遊艦、ゼウス。
そこから大きな音声が拡声器によって国中に流された。
そして直後アルバス王のいる部屋の通信が鳴る。
それをアルバス王は受け、映像による通信が始まった。
「初めましてかな? アルバス王。何度も使者を送ったのに突き返されたので言葉を交わすのは初めてだろうか。私はロード、フリーダム代表兼世界騎士団参謀だ」
「……ロード、こ、ここは私の国だ! それは侵略行為だぞ!! 世界騎士団の規定を破ることだ! これは報告させてもらう!!」
「そうだな、このままでは侵略行為だ。我々の世界騎士団憲章に触れる」
その解答にアルバスは光明を見つけてたたみかける。
他国への軍事介入など侵略行為でしかなく、それは世界騎士団の掟を破ることになる。
「ならばすぐに軍をひけぇ! 私の国からでていけぇ!! あいつらは私の所有物だ。お前達が横やり入れることは許されん!!」
「ちがうよ、アルバス王。国とは人だ。お前の者ではない」
「ち、ちがう! あいつらは私に支配されることに喜びを感じている!!」
「はは、ここまでいくと話し合いにもならんな。だから……国民に聞いてみようか」
「な、なにを……」
直後ゼウスの拡声器で国中へと声が流れる。
「予定よりもはやいが、この場で国民総投票を行う! 世界騎士団より提供したデバイスをもって、皆の総意をみせてくれ!!」
その声はゼウスから、そして当たりの国民達のポケットから次々と鳴り響く。
元々は真っ黒な箱、しかしこのロードの呼びかけの瞬間にシステムは起動しデバイスへと変形する。
世界騎士団の持つマスタ端末からでしか起動できないデバイス。
途中で軍人に見つかってもばれないようにするためのロードの作戦だった。
「な、何をする気だ!!」
「まだ国民へのデバイス普及率は70%だが、それでも十分だろう。ここまでひどい国は久しぶりだよ。アルバス王」
直後、国民達はデバイスの画面を見る。
そこには世界騎士団による軍事介入を是とするかの選択肢が表示される。
「あ、あいつらは奴隷だ! 反抗する意思などない!」
「違う、彼らは力を持たなかっただけだ。意思ある人間だ、お前にはそれが見えていない。そして」
ロードの背後に次々と投票結果が表示される。
棒グラフで現れされた投票結果の是という数値が圧倒的に伸びていき、非という数字が一切伸びない。
「これが結果だ。アルバス王」
「ば、ばかな……」
「さて、アルバス王。あなたの国の人口はいくらだったかな?」
「50,いや100万人はいる!!」
「それでもお前はこの国の王か、42万7600名。これ以上はお前のずさんな管理のせいで正確な人数はわからなかったがな。さて、この数値が見えるか?」
そこには棒グラフに表される28万人の文字、つまり普及していた7割の数値ほぼすべてだった。
「あ、ぁぁ……」
そしてロードはにっこり笑って宣言した。
その表情は笑っているのに一切優しくなく、悪魔のような表情で怒りすらにじませる。
「では国民の三分の二以上の賛成によって、世界騎士団は要請を受理。今より、アルバス王国への」
「や、やめろ!!」
「軍事介入を始める」
そして一機のKOGが、ゼウスから降りてきた。
白く美しい機体、それは剣也の専用機。
ロードが交渉している間に剣也はゼウスへと戻り、機体を交換していた。
「じゃあ、ロードいってくる」
「相変わらず、私の作戦をめちゃくちゃにしていくな。投票結果が三分の二に到達しなかったらどうするつもりだったんだ」
「その時はお前がなんとかしてくれるんだろ?」
「ふっ。そのとおりだ、というか予想していたよ。何年一緒にやってきたと思ってる。だがまぁ、不安要素はあるがこれが一番早く犠牲が少なかっただろうな。じゃあ頼む、この国の国民達を救おう。そのための道は作った。あとは」
「俺が切り開くだけだな」
そして白き騎士は飛び立った。
城を城塞として守る残り50機以上のKOG。
守りは万全、生半可な攻撃では貫けない。
しかし、最強の盾というほどではない。
ならば最強の矛を止めることなどできるはずはなかった。
もの数秒で防衛戦は吹き飛んで、次々と世界騎士団が介入する。
そこには。
「あなた!」
「レイナもきたのか……」
「はい! 会いたくて会いたくて……作戦の間ずっと寂しかったんです。もうムラムラです」
「レイナ……一応作戦中だし、みんなに聞こえてるからね?」
「はい♥ だから……すぐに終わらせます」
そういってレイナの専用機アフロディーテは怒りと愛の力で敵KOGを木端みじんに粉砕した。
その力は世界の頂点に名を連ねるだけはある、剣也を除けば間違いなく世界の頂点を争える。
「なぜだ! 僕はただ、お父様と同じように国民共を管理していただけなのに!!」
そのアルバス王の目の前に白きKOGが立つ。
「こうなるとお前も哀れだな……選んでいいぞ、この場で死ぬか、独房で一生を暮らすか」
「ふ、ふざけるなぁぁ!!」
銃を構えて建御雷神へと撃つ。
しかし効果があるわけもなく、傷の一つもつけられない。
だがあろうことか、アルバスは横にいた美女たちに剣を向ける。
「あ、あいつらがどうなってもいいのか!?」
「……」
アルバスはにやりと笑う。
まだ自分の活路は無くなってはいないと。
「俺も大人になったんだ。まぁまだロードには青臭いと言われるけど。この世界には死んでも治らないカスもいる。お前もその一人だろ?」
「ぼ、僕はこの国の王だぞ! だ、だまれぇぇ!!」
「その銃は撃たないほうがいい。その時がお前の最後だ」
「ぼ、僕が撃てないとでもいうのかぁぁ!! し、しねぇぇ!!」
興奮したアルバスがその美女たちに銃を放つ。
しかしその弾が到達することはなかった、銃弾が放たれるよりも早く建御雷神の剣がその間に刺さり守ったからだ。
それと同時に、アルバスは剣也によって切られ絶命した。
「……はぁ、だから打つなって。といってもお前の未来は拷問の末処刑だったんだから感謝しろよ。これが大人になるということか……殺さなきゃいけん奴もいるなんて知りたくなかったな」
そしてアルバス王朝はこの日潰えた。
世界騎士団の介入により、絶対君主国家アルバスは民主国家へと生まれ変わる。
自由と人権と学ぶ楽しさを与えられたこの国が世界最大のIT国家へと生まれ変わるのはもう少し未来の話だった。
…
「負傷者をすぐに! そうだ、ナギサちゃん!」
剣也はすぐにナギサの安否を確認しに行った。
この国にデバイスと、いつか来る投票の日に決起してほしいと伝え回っていた時にナギサと出会った。
たまたまだ、たまたま自分の娘と同じ名前の少女。
ほっとけなくなってしまったのは仕方ない。
つい、任務を忘れてボロボロの少女を抱きしめて優しくチョコを渡してしまうほどには感情移入してしまっていた。
「軍人のお兄ちゃん!!」
「ナギサちゃん!」
父の看護をしているナギサのもとへと剣也は向かう。
そのまま思いっきり抱きしめた、軽度の火傷は追っているようだったが何も問題ない。
父親のほうも傷は残るが歩けるほどには回復するようだ。
「嘘をいってごめん、俺はこの国の軍人じゃなくて世界騎士団団長 御剣剣也だ。はじめまして。ナギサちゃん」
「おかしいとおもった! だってお兄ちゃん優しすぎるもん!」
「はは、ばれてたか」
剣也は笑顔で頭をなでる。
本当に強い子だ、あの状況で立ち上げり命の危険があるのに父を救おうとしたんだから。
それに今ではしっかり一人で立ち、父親の介護までしている。
本当に強い。
「じゃあ俺は……いくよ、これから大変だと思うけど頑張ってな。もう君は自由だ、何にだってなれる。なんだって目指せる」
「お兄ちゃん……私。私も世界騎士団に入りたい! 私も同じように苦しんでる人を助けたい! 私を騎士団にいれてください!!」
「ナギサちゃん……そ、それは……」
「いいでしょう」
するとその後ろから一人の銀髪の少女というには年齢を重ねた美女が現れる。
目立つその風貌と美しさは周りの男性全員がため息をつくほどに美女だった。
「レイナ!?」
「元々別の人に渡すつもりでしたが、これをあなたに上げます」
レイナが手渡したのは一通の手紙のようなもの。
「これは?」
「それは世界騎士団養成学校の第一期生募集の手紙です。これからあなたたちのような新しい世代が必要ですから」
するとレイナがしゃがみその少女に目線を合わせる。
「入学条件は厳しいです。お金などは一切かかりません、ですが必要なのは強さです。才能という壁にぶち当たるかもしれません。ですが」
そしてレイナも頭をなでる。
「あなたは知っている。不自由の辛さ、抗うことの重要性。そして何より……大切なものを守りたいという信念と勇気を。それをもっているのなら才能など二の次です。頑張ってください。応援しています」
にっこり優しく笑うレイナ、いつの間にか起きていたナギサの父の顔面が真っ赤になる。
その笑顔は世の男性すべてを虜にするほどに綺麗で美しく、そして可愛かった。
「あぁ、君はなんにだってなれるんだから。頑張ろう。待ってるぞ」
剣也も再度頭をなでる。するとナギサからとんでもない発言が飛んでくる。
「それはお兄ちゃんの彼女でも?」
「え?」
「私、お兄ちゃんを好きになっちゃいました! 世界騎士団に入れたらお付き合いしてください!! かっこよかったです! お兄ちゃんみたいになりたいです!」
「あーはは、そうだね、入れたら考えようかな?」
剣也は笑ってその場は流そうとする。
所詮子供のいう事だ、いつか忘れてくれるだろう、だからその場は生返事で曖昧に返す。
しかし
「それは許しません」
冗談が通じない美女が一人。
「お、お姉さんは確かに美人で、巨乳で、KOGもうまくて優しいですけど……ま、負けません!」
「巨乳って……」
「いいでしょう。全力で相手します、しかし私達はもうすでに男女の中、逢瀬も何度も重ねています。それはもう大きな声で言えないようなエッチなこともたくさんしています」
「声が大きいよレイナ。それに相手はまだ子供なんでそういうことは……」
「わ、私だってあと10年もすれば悩殺ボディに、そ、それに若い身体を味わいたいと思うのは世の男性の常です」
「ちょっと、ナギサちゃん? どこでそんな言葉覚えてくるの? お兄ちゃん君の将来が心配だな」
それからナギサとレイナは言い合いをする。
といっても可愛いものだが、内容は正直生々しくて聞くのがつらくなってきたので俺はそそくさと退散した。
色々あったが、この国は解放された。
自由と人権を尊重する見本のような民主国家。
武力を持たず、国民は頭を使い世界最大の頭脳国家として立身出世するぐらいには。
そして。
◇10年後
「団長!! 今日こそは私を抱いてもらいます!!」
「アホ」
御剣剣也、三十路に差し掛かりつつある年齢。
20歳というぴちぴちボディに誘惑されるが、ある程度落ち着いてきている剣也は優しく交わす。
「もう! えい!」
しかし剣也の腕をその豊満な胸に挟み上目遣いで舌なめずりする少女に下半身が反応してしまうのも無理はない。
「や、やめろ、ナギサ!」
「だって……ほら、かぐやさんとレイナさん。二人も三人も変わらないでしょ? 私を愛人にしてみませんか? どんなプレイだって私受け入れてみせます! それはもうどんな変態的プレイでも! 奥さんにできないようなこと、私で遊んでみませんか?」
「はぁ……あんなに可愛かったあの子が……あの頃から片りんは見せていたけど……」
剣也が小さな声でため息をつく。
「何か言いました?」
「いや、なにも? だから今日もやるんだろ? 模擬戦」
「はい! 勝ったなら抱いてくれる約束ですよね?」
「売り言葉に買い言葉でいってしまったからな、死んでも負けるわけにはいかない、レイナとかぐやに殺される」
「じゃあ!」
「おう!」
3,2,1……Fight!
この日も世界騎士団の日常的訓練は行われた。
世界平和へと一歩ずつ確実に世界は進んでいる。
それはきっと青臭いけど、捨てられないその正義のせい。
でもだからこそ、みんなが彼についてくる。
きっとこの人ならどんなときでも自分を守ってくれると信じて。
その小さな繋がりはやがて強固な絆へと変わり心でつながる平和を愛する世界の騎士団。
これはそんな彼の世界平和のために奮闘した一ページ。
このあとナギサを抱くことになったかどうかは、誰も知らない。
「もう! そろそろわざと負けてください! 本当は抱きたいんでしょ!!」
「男には耐えねばならぬときがある! でも正直そろそろきついから許してくれぇ!!」
新連載
https://kakuyomu.jp/works/16818093079151440623
神殺しの
コードギアスをナーロッパの世界に降臨させたような作品です。
めっちゃ面白いよ!
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