第116話 番外編 世界中で踊ってみた。

まえがき

ちょっとした読み切り。

※あとがきに色々お知らせあるので、よければ読んでください!






「なんで、あんたこっちに来てるのよ。ベル」

「察しろ、渚。今日かぐやさんとうちのお母さんは、お父さんのところだ」

「……すごく嫌な想像をしたわ」


 俺の名前は、ベル・シルフィード。


 世界最強のKOG乗りの御剣剣也を父にもち、それに迫るほどの強さを持つレイナ・シルフィードを母に持つ。


 いわゆる、有名人の二世である。


 今日は俺の父親の第2夫人、いや、この言い方すると滅茶苦茶怒るな第一、もしくは第二婦人のかぐやさんとうちのお母さんが家に泊まるので逃げてきた。


 まぁあの年でいまだにイチャイチャと仲良くしているのは、良い夫婦なのだろうが子供からしたらとても辛い。


「あ、そうだ! ちょっとちょっと! せっかく来たんだから私の動画に出なさいよ!」

「えぇぇ……」


 そして俺の眼の前にいるのは、年は一緒だが一応は俺の妹に上がる御剣渚だ。


 趣味でアイドルをやっているらしい。


 いや、本人はそっちが本業だと言い張るが、本職は世界騎士団の第8部隊所属のエースパイロット。


 まぁ俺の方が若干強いが相当な強者ではある。


【お兄ちゃんのベル・シルフィードとKOGで踊ってみた】


 よくわからないタイトルだが、俺と渚は自宅にあるシミュレーション室へと入り仮想世界へとログインする。

さすがに動画を取るためだけに人型決選兵器のKOGを使用するわけにはいかないからな。


 そして俺は渋々、KOGを操作して目の前で踊る渚と同じ踊りをKOGでやって見せた。


 このレベルの操作ができるのは部隊長レベルだけだろう。


「せっかくだからさ! いろんな人と踊ってみた動画取りに行って滅茶苦茶バズらせない?」

「他って?」

「うーん、ロードさんは確定でしょ? あと一応レイナさんとうちのお母さんとお父さんと……白蓮さんと……一心おじさんと……」

「お前、出てくる名前のビックネームがすごいぞ。全員国の代表ばっかりじゃないか」


 ロードさんは解体されたとはいえ、その手腕によって経済的にも世界最強国家となったフリーダムの代表だ。


 平等の名の元に毎回全国民投票をしているのに、ロードさんが負ける気配は一向にない。


 さらにいえば世界騎士団の参謀であり、世界連合の副議長。


 白蓮さんは、世界連合の議長だし、一心さんは日本の総理大臣だ。


「とりあえず、頼んでみようよ! ロードさん、踊りませんかっと」

「そんな気軽にメッセージ送れるお前が俺は怖いよ」


……


「ははは、いいとも。ダンスなんて得意ではないが5秒ほどでいいんだろう?」

「はい! 編集で繋げていくんで!」

「まさかのOKでちゃったよ……」


 俺達はロードさんの職場へと押しかけた。

巨大な摩天楼の最上階で、ロードさんへとダンスを教える渚。

結構すごいことなんだが、まぁ俺達にとっては父親並みに距離感の近い人なのは確かだ。


「ありがとうございました! お仕事頑張ってください!」

「あぁ、剣也によろしく」


 挨拶を済ませた俺達は部屋を出る。


「次は誰にしよっかな……あ、騎士団のトールさんにも依頼しよっと!」

「俺はお前の怖いもの知らずが怖いよ」


 トールさん。

かつてEUで最強を誇ったKOG乗り。

今は世界騎士団の第四師団の師団長、俺と渚よりも強い人で、歴戦の騎士。


 その厳しさは折り紙付き。


……


「ははは、良いだろう。世界騎士団のイメージアップ映像ということだな」

「はい! 普段怖いイメージがありますからね!」

「OKでちゃったよ……」


 それからも渚は片っ端から偉い人を躍らせまくる。

こんなことできるのは、下手すると世界でお前だけだよと俺はツッコミしたくなった。

なのに、案外みんな最初は驚くがとても快くOKしてくれる。


 そしていよいよ。


……


「なるほど。とてもいい案だな!」

「ありがとうございます、白蓮さん!」

「ついに世界一偉い人のOKでちゃった……」


 世界連合の最高評議委員長、白蓮さん。


 かつてのアジア連合の代表であり、今はロードさんと二人で世界を動かしているともいえる人。


 ついに俺達は国を渡って、こんなところまで来てしまった。

さすがに自由過ぎる気もするが、世界騎士団はちゃんと有給も消化できるホワイトな職場だからな!


「しかし、良い世界になった」

「ボタンぽちっで動画がとれますからね! 一瞬で世界配信ですよ!」


「……ふふ、いやそうではない。ほんの20年前では考えられないことだよ。これは」


 そういう白蓮さんは少しだけ昔を思い出していたんだろう。


 俺はロードさんから聞いている。


 世界を征服しようとしたアースガルズ帝国のロードさん、それを止めた世界最強の騎士。


 世界大戦は始まり、あわや何億人が死に憎しみの連鎖がどこまでも広がっていく寸前だった。


 でも俺の父さんがそれを変えた。


 ロードさんの処刑ではなく、自分のエゴで憎しみの連鎖を断ち切ることで。


 賛否両論あったのは知っているが、結局今の世界が全てだ。


 世界は平和になったのだから。


「全く新しい価値観の君達が大人になり、ロードがいったように本当の意味で心から手を繋げる世代がもうすぐそこまできている。いまだに世界には憎しみを持つ者もいるが、それでも君達はこうやって何ものにも縛られずに世界を渡り歩いている。これほどうれしいことはない」


 そういって白蓮さんは俺と渚の頭を撫でた。


 それを見て俺はやっと気づいた。


 なんでこんな面倒なことに世界の代表達は一切嫌な顔せずに承諾してくれたのか。


 きっと彼らが目指している世界はこんなことが当たり前にできる世界なんだ。


 だからどこかロードさんもトールさんも白蓮さんも一心さんも、嬉しそうだったのかもしれない。


「世界を頼むぞ、若き騎士よ」

「「はい!!」」


……


「ただいまーー!!」

「お、おかえり!! ちょ、ちょっと待って! ちょっと待てよ、二人とも!!」


 夜、勢いよく家の扉を開く俺と渚。


 すると滅茶苦茶焦った父親の声がする。


「はぁはぁ、二人とも急に帰ってきて……おかえり」

「お父さん、服の裏表逆」

「え!?」


 渚がとても低くて冷たい声で父さんの服が逆になっていることを指摘する。

慌てている父さんと、すると後ろから乱れた髪の俺のお母さんと渚のお母さんが出てくる。


「ベ、ベル。今日はかえってこないといってたのに……」

「お、おかえり~」


 火照った肌、乱れた髪と服。


 とても嫌だ。


 とても嫌だがおそらく今までよろしくやっていたのだろう。


 この年でどんだけだよ、想像するだけで吐き気がしてくるぜ。


「ほら、見て! レイナさん、お母さん、お父さん!」

「ん?」


 そして渚は今日とった動画を見せる。


「あとはお父さん達だけだよ! さぁはやくはやく!」


「全く、仕方ないな……」

「えぇ、そうですね。踊りましょうか、あなた」

「まだまだピチピチでセクシーなところ見せなきゃね!」


……



「よし、完成! そしてアップロード!」


 完成した動画は光の速さで世界中を駆け巡る。


 まさか世界の重鎮達がダンスを披露するとは思わなかった世界中の国民達はその動画を何度も再生した。


 子供達の反応は大人が何してるんだと冷ややかなものが多かった。


 しかし、対して大人達に限ってはそうではない。


 その動画を見て涙を流すものすらいた。


 少しずつみんな実感していったんだ。


 かつて殺し合い、奪い合い、永遠に続くかと思われた人の戦いの連鎖。

それが今少しずつ変わって言っていることを。

人は永遠にわかり逢えないとばかり思っていたのに、気づけば国と国が手を取り合っている。


 一緒に笑って踊っている。


 その動画の意味がわかる大人達はこれからの世界の行く末に期待せざるを得なかった。


「すご……再生数、億超えたんだけど……めっちゃインセンティブ入るじゃん……」

「俺にも半分よこせよ」


 この動画を仕掛けた本人達だけはそんなことより、これから入る広告収入に笑みを浮かべているのだが。



 



あとがき。


二つお知らせがあるので、ちょっと久しぶりに短編です!

こんなことをここに書くべきじゃないですが、いつか現実世界もみんなで笑い合える日が来るといいですね。




一つ! この作品のコミカライズが決定しました!

キャラデザなんかも考えて、ストーリーもコミカライズ用に修正したりと中々面白くなりそうです!


しかも担当してくれる漫画家さんがすごい!

ロボットの漫画を描かせたらこの人でしょ、と言えるような超有名作品も手掛けたレベルの方でとても興奮しております! 

連載が続くかは売れ行き次第なので、まじでみんな頼む。

俺が一番みたいんだ、お金とか正直二の次で。

と、まぁコミカライズはまた近況ノートにでも書きますんで、お楽しみに。



二つ目。次回作

https://kakuyomu.jp/works/16818093079151440623

神殺しの英雄アルゴノーツ~世界唯一の闇属性を発現させた俺は、剣一本でスラム孤児の底辺から帝國最強にまで成り上がる~


コードギアスをナーロッパの世界に降臨させたような作品です。

めっちゃ面白いよ!







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