第97話 剣也奪還作戦会議
「ねぇ、剣也は今何してると思う?」
「どうでしょう、でも私の直感が囁きます。何かいい思いをしていると」
以心伝心するかぐやとレイナ。
なぜか捕らえられている剣也がいい思いしている想像がふと脳裏に浮かぶ二人。
急に怖い顔をする美女二人。
一心は、この怖い娘二人に好かれている剣也が可哀そうにすら思えた。
(絶対尻に敷かれるタイプだな……私と一緒だ……)
しかしさすがは日本のトップ。
一心は頭を切り替える。
「わけのわからんことをいってないで、今後の作戦を考えるぞ。剣也君を救うんだろう?」
「はい、すみません。一心叔父さん」
「それで、剣也は今どこにいるのよ」
「正確にはわかりません、ですが多分ヴァルハラ城です。隔離塔といってました。ならばヴァルハラ城にある離れの塔のことかと」
「ふむ。ヴァルハラ城つまり、帝都ヴァルハラだな。敵の本陣真っただ中だ。そう簡単にはいかんぞ」
「一心さん。世界連合に助けを求めるのは難しいですか?」
「……難しいだろうな」
「私もそう思います、世界連合軍の力では難しいと。軍事力では、軍事力を当てられるだけですから」
「あぁ、しかも敵地の真っただ中。圧倒的に不利だから戦争で助けることは難しいな」
一心とかぐや、レイナ、そして田中が剣也救出作戦の会議を行っている。
ここは、第13番特別区軍事養成学校の校長室。
つまりは元ジークの部屋だったが今では日本軍の総司令本部として活用されている。
レイナとしては少し複雑な心境ではある。
それでもあの日かぐやと涙を流したあの日からレイナの中で何かが吹っ切れていた。
そしてそれはかぐやも同じこと。
今二人は剣也を助けるという目的のもと心を一つにしようとしていた。
「では、やはり少数精鋭ですね。私は行きます。そして」
そしてレイナはかぐやを見る。
「当たり前でしょ。私も行くわよ」
「はい。あなたなら信じられる」
レイナはかぐやの実力を認めている、KOGのうまさではオシリスと訓練した今なら負けないと思っている。
それでも白兵戦の強さではかぐやは自分と同等だと考えていた。
あの日、本気で殴りあったからこそわかる、かぐやは相当な手練れだと。
「わかった、なら私もいこう」
「パパも!? 日本軍は!?」
「すべて白蓮や、トールの指揮下に入ってもらう。私よりも優秀な指揮官などごまんといるからな。それに」
一心はかぐやとレイナを見る。
「白兵戦なら私は君達よりもずっと強いぞ。かぐやに技を教えたのは私だからな」
KOGこそ訓練をしていないため、大して操作もできない一心。
しかし白兵戦に関しては、世界最強クラス。
オシリス、ジークとですら戦える本物の強者だった。
「わかりました。一心叔父さんお願いします」
「……わかった。お父さんお願い」
「任せておけ、あの日彼には命を助けてもらったんだ、この命彼のために使っても惜しくはない」
「あとは……私も輸送機で待機します。剣也君を確保したあと、建御雷神に乗ってもらわないといけないのでね。しかしどうしたものか……」
「田中さん、私のアフロディーテはどうなってますか?」
「あぁ、レイナ君のなら今は帝都の整備場だよ。建御雷神があった整備場の隣だ」
「了解です、それも回収しなければ」
「では、話を整理しよう」
そして一心が話を整理しようと決定したことを述べていく。
「目標は剣也君の奪還。メンバーは私と、レイナ、かぐやの三名。田中は後方支援だな。あとはどうやってアースガルズまで行くかだが……」
「私の加具土命で護衛するから、建御雷神を乗せた輸送船でいきましょう。多少の敵なら私が倒せる」
「そうだな、今世界連合とアースガルズが本気でぶつかっている。たった一機ならば遠回りして陸路からゆっくり行けば比較的安全に到着するだろう」
「そして、私が建御雷神を操縦し、隔離塔まで一心さんをつれていきます。かぐやの加具土命は敵戦力を落としてください。一心さんと私で、隔離塔から剣也君を救出します」
「そして建御雷神に放り込む、そうすればあとは剣也がやってくれるわ。そうね、これが一番妥当だと思うわ。あとはヴァルハラの戦力ね。実質KOG私一人だけで守り切れるかどうか」
「多少は博打になるだろう、だが多すぎればさらに敵を呼ぶことに繋がる。あくまでこれは戦闘ではなく、救出作戦だ。戦闘は最小限で行くならこれがベストだろう」
そして作戦は決定した。
アースガルズにいくのは、田中、一心、レイナ、かぐやの四名。
かぐやは加具土命を、レイナは建御雷神を操作する。
田中は待機し、一心はレイナと共に隔離塔へと向かう。
かぐやは、基本的にレイナと一心が白兵戦に専念できるように、敵KOGを撃破する。
「では作戦決行は、二週間後でどうだ。世界連合とアースガルズの戦いが激化してからの方が成功率は高いだろう。逆に経ちすぎても問題だからこれぐらいがいいと思うが」
「了解、私はそれでいいわ」
「……一週間剣也君成分を吸えないのですね。でも仕方ありません。了解です」
「あんた、私がいない間に変な事してないでしょうね」
「どうでしょう、半裸でまたがったぐらいですね。剣也君は喜んでましたが、でも約束は破ってくれませんでした」
「そう、それはよかった……いや、良くないわ。なんでそんなことになったのよ! ど、どうせあんたが迫ったんでしょ! この痴女!」
「痴女で結構。剣也君にだけは私はド淫乱でいくことにしています」
「ド、ド淫乱!? ふ、ふざけるなぁ!!」
そしていつも通り言い合いを始めるレイナとかぐや。
それを見て一心は、頭を抱えるが娘たちのそんな話は聞きたくないので田中と一緒に退散する。
一心達が部屋を出てからもずっと言い合いをしている二人を見て、一心と田中は呆れたようにつぶやいた。
「全く仲がいいのか、悪いのか」
「でも似てますね、二人とも。さすが従妹。姉妹と言われても信じますよ」
「剣也君は幸せ者……いや、微妙だな、大変だぞ。あのじゃじゃ馬達は」
「でもきっと乗りこなすでしょう、なんたって彼は世界一のパイロットですから」
「ふはは、それもそうだな」
~
「剣也君はナース服が大好きなんです!」
「ちょっとそれ詳しく!」
「見てないふりしますけど、ずっと私の胸と足を見てました。いつもよりも情熱的に。あれは完全にエッチな目でした」
「わ、私もやってみようかな……喜ぶかな……」
「じゃあ、剣也君が次入院したら二人でやってあげましょう」
「入院前提!?」
そんな馬鹿な会話をする二人。
今が戦時中だという事も忘れて、まるでガールズトークに勤しんだ。
失った青春を、友と過ごすはずだった幸せな青春を埋めるかのように。
でも世界は待ってはくれない。
ロードの意思は揺らがない。
…
「ロード様、準備が整いました。しかしこれだけの数を……把握するなど、それはもう神でもなければ」
ここは浮遊航空艦ゼウス、オーディンが残した最新鋭の航空艦。
まるで空母のように、空を支配するその機体は、ロードが戦場で指揮を執ることを可能にした。
その玉座に座る一人の少年、そして目の前には100を超えるモニターの山。
「つけろ」
「……はっ!」
そして映し出されるのは、EU、アジア連合含む全世界で始まった第二次世界大戦の戦場。
そしてロードは、大きく深呼吸して目を閉じる。
「お前達一言一句聞き逃すなよ」
そして全戦場の指揮を執る。
100の戦場すべてを把握する、そして100の戦場すべてで勝利する。
彼の前に敗北はなく、世界のすべてを飲み込んで、世界を壊す覚悟を持つ。
彼の願いはただ一つ、世界の平和。
それを切に願う心優しき少年、ロード・アースガルズ。
ただし。
「私は神にはなれないが……悪魔にはなってみせようか」
この時代の人々にとっては、悪魔と何ら変わりない。
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