第96話 第二次世界大戦 開戦
「準備はできているか、ラミア、オルグ」
「いつでもいけますよ、ロード様」
「私もです」
オーディンを倒し、一週間。
ロードは軍備を整えていた、そしてすべての準備が整い世界に宣戦布告した。
「ですが、ロード様がまさかそのような野心をお持ちとは……私はてっきりもう戦はないのかと」
「恥ずかしながら私もです」
「そうか、誰にも話したことはないからな。兄上だけはどこか気づいていたようにすら思えるが……」
「私は嬉しいですぞ、戦場で死ぬことこそ、騎士の誉。成し遂げましょう! 世界の統一を!」
「しかしロード様、ソード・シルフィードは本当に謀反を?」
ラミアは信じられないとロードを見る。
ソードのことをラミアは良くは知らない、それでもボロボロになりながらも帝国剣武祭を戦い抜いた彼が謀反をするとは思えなかった。
「……あぁ。今はヴァルハラ城の隔離塔にいるよ。疑いだけだからな」
「……そうですか、彼の戦力は国家戦力級ですので……残念です」
「……あぁ」
ロードのその表情をラミア、オルグは見た。
悲しそうになその目は何を意味しているのか、でもきっと自分の騎士が裏切ったから。
そう思うことにした。
そしてアースガルズは世界に宣戦布告した通りに戦争を仕掛ける。
「兄上は良いものを残してくれたな、浮遊航空艦ゼウス。これで戦場の近くで指揮をとれるな」
オーディンが残した最新鋭の浮遊航空艦の乗り込むロード。
そして進軍を開始するアースガルズ帝国、進軍目標は世界すべて。
「さぁ、始めようか。最後の戦いを」
ロードは宣言する。
「第二次世界大戦の開戦を宣言する」
二回目の世界大戦を。
…
「父上!」
「あぁ、聞いているよ。もう動き出したか」
ここは世界連合総本部。
そこに緊急の連絡が届く、アースガルズを監視していた前線基地から敵軍が動き出したとの報告だった。
ロードが宣言してから、まだ一日。
余りにも早い軍事行動、世界連合の足並みもまだそろわないままに。
「でます、父上。ロードの言う世界は確かに理想だ。しかし」
「今の時代に生きる私達にとっては地獄だ。白蓮頼むぞ」
白蓮だって戦争がない世界を望んでいる、ロードの言い分だって理解できる。
教育の果てに手をつないで笑い合う子供達はきっと世界の理想だろう。
それでも、今の時代を生きる自分達すべてを滅ぼすと言ってのけるロードを受け入れることなどできない。
そしてそれをロードは理解している。
だから滅ぼすという強い言葉を使っての世界侵攻、世界統一。
そして白蓮は、トールと共に出撃した。
アースガルズと真正面からぶつかり合うために。
ロードは、そしてアースガルズは未来のために。
白蓮は、世界連合は今のために。
互いの正義をぶつけ合う。
(正直……分は悪い。士気が最低だったとはいえ、オーディンの軍を加えてなお勝利できなかった相手だ)
オーディンを世界連合に加えた時オーディンの軍の士気は最低だった。
それでもあの数の合流は単純な力として十分だったのだが、今やそれはすべて敵となった。
戦力としては2倍近くだったものが、今や五分となる。
KOGの数、弾薬、燃料、食料。
すべてにおいてほぼ同等の戦力がぶつかり合う。
ならば。
「あとは人……だけか」
差がつくのは人の差のみ。
しかしその人こそが、アースガルズが最強の国家たりえる理由でもあった。
白蓮の脳裏に一機のKOGが浮かぶ。
あの日世界連合軍5万をたった一人で足止めした存在。
剣の神と名付けたその男。
「剣神ソード・シルフィード。奴がでてきたら……叶わぬな。しかし戦うしか選択肢は我々にはない」
そしてこの日、第二次世界大戦が開戦された。
戦うのは、アースガルズと世界連合。
第一次のような戦いではない、最後の最後まで。
どちらかが滅びるまで戦う、正義の戦いが始まった。
…
一方 隔離塔。
ロードに拘束されて、塔の中に幽閉される剣也。
地獄のような日々が待っている……そう思っていたのに。
「ソード様、お食事です」
「あ、はい。どうも」
しかし幽閉というには、少し贅沢な暮らしをしていた。
三食飯付き、しかもうまい。
剣也としては、オーディンの異端審問を思い出して、またあんな生活をさせられるのかと内心びくびくしていた。
しかしふたを開けてみればどうだろう。
「お名前を聞いても?」
「ソフィと申します。本日からソード様のお世話をさせていただきますのでなんでもお申し付けください」
専属のメイドまで現れる。
しかも正直めちゃくちゃ可愛い。
「俺幽閉されてるんですよね?」
「はい、ロード様からはできるだけ不自由しないようにと。ですからここから外には出れません。申し訳ありませんが」
「でもあなたを俺が無理やり押し倒せば」
「私は特殊な訓練を積んでおります。残念ながらKOGではなく生身のソード様ではいささか無謀かと……」
「あ、そうですか」
剣也の戦闘力は世界最低クラス。
勝てるといえば、ロードか、小学生以下ぐらいだろうか。
KOGに全能力値を全振りしてしまった剣也では、この美しい金髪のメイドさんには勝てなさそうだ。
(レイナもかぐやも強かったし。この世界の女性はすごいな……)
「なんでこんなに良くしてくれるんですかね、ロードは」
「私にはロード様の真意の理解など、恐れ多く」
剣也がソフィさんに話しかけるが、大体何を聞いてもこれで返される。
(でもここまで待遇良くされると、逃げたいという気持ちも弱まるな……それが狙いなのか?)
「外のことって教えてもらえたり……」
「申し訳ございませんが、一切外の情報はお伝えすることができません」
「ですよねーー」
とはいえ、この部屋にいてもやることと言ったら食って寝るだけ。
一切の娯楽はなく、それはそれで拷問のようだった。
「あーー暇で死ぬーーー」
「お申し付けいただければ、夜伽も致します。お暇でしたらご自由に私をお使いください」
「ふぁ!?」
暇だなーとベッドでゴロゴロしていた剣也。
それをみてソフィが一切の感情を持たずにその美しい顔でドエロいことを言ってくる。
「い、いまなんと?」
「夜伽でございます。私は特殊な訓練を積んでおりますので……ご満足いただけるかと」
「特殊な訓練!?」
(特殊な訓練ってそっちなの? 戦闘的なものではなく? いや、ベットの上での戦闘力という意味ですか?)
「私の立場では失礼かと思いますが……ソード様の帝国剣武祭での戦いは、アースガルズ中の女性の憧れでございます。力こそ帝国の理念。今やソード様に叶う御仁など世界にはいらっしゃいません。ならばこそ帝国中の女性があなた様のお相手をしたいと思いますのも自然かと」
するとそのメイドさんの顔がほんのり赤く、剣也を熱のこもった目で見ていることに気づく。
「私も例に漏れないとだけ……お伝えしておきます。どうぞ、いつでもお申し付けください」
そのほんのり赤いほっぺは正直エッチすぎた。
健全な男子高校生にはその誘惑に抗うことなど並みの精神力ではできないだろう。
剣也だって、性欲の権化となりうる年齢。
そのお誘いは正直。
「ロードォォ!!」
拷問と同等だった。
剣也は恨んだ、ロードを。
血の涙を流しながら拳を強く握りしめる。
(こ、これはなんてきつい拷問なんだ!! 異端審問会のほうがはるかにましだぞ!!)
俺がその誘いに乗れない、乗ってはいけないことを知っていてこんなエッチなメイドさんをつけたというのならお前の策略は大成功だ。
「いかがいたしました? ソード様?」
ベッドでうずくまる剣也の横に座るメイドが話しかけてくる。
同じベッドに座って。
「ロードォォぉぉぉ!!!」
その日から剣也の戦いは始まった。
世界連合とアースガルズの戦いにも負けない孤独な男の戦いが。
…
イラッ
「何か今イラっとしました。かぐや」
「奇遇ね、私もよ」
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