第75話 東京奪還作戦 開戦
★★★★★★★★★★★★
昨日の夜間違ってあげちゃいました。
よんじゃった人すみません。
★★★★★★★★★★★★
「剣也君……いってきます」
眠る少年の額にキスをする少女は、立ち上がった。
死闘を制した少年は、今なお深く眠る。
その健やかな顔にかかる髪優しく指で払いながら、愛しい人を見つめる少女。
ずっとこうしていたい。
そう思えるほどに幸せだった。
でもいかないと。
少年と同じぐらい大事な人を助けるために。
記憶をよみがえらせた少女は、今戦っている最後の家族を救うために立ち上がる。
だから少女は一人で向かう。
その先に、待っているのは終わりかもしれないのに。
…
「私だ、もう日本が見えている頃か?」
「父上…。はい、もう見えております。それで? 皇帝が決まりましたか? オシリス・ハルバードが負けるとは思いませんが…」
首都神威にて、前線に出ている息子の白蓮に連絡する玄武。
帝国剣武祭の映像を潜り込ませている部下からの映像で見ていた玄武は勝者を伝える。
「皇帝は、ロード・アースガルズ。オシリス・ハルバードは負けた。破ったのはソード・シルフィード。ロードの騎士だ」
「な!? バカな……そんな、そんなこと。……映像を送っていただけますか。確認したい、あのオシリスが負けるなんてこと…」
「あぁ、先ほど送信したから見てみるといい、画質は荒いからあまり何が起きているかはわからないだろうが……私には全力だったように見えたよ」
「……ありがとうございます。はい、はい。では、また連絡します」
海洋上の軍艦で、かぐやと白蓮は玄武から送信された帝国剣武祭の動画を確認する。
アジア連合のスパイが隠し撮りした動画なので、画質は悪いので内容まではよくわからない。
「ソード・シルフィード……ロードの騎士になった最年少騎士ね…」
(騎士叙任式で見た。一瞬剣也かと思って驚いたけど……そんなに強い奴がいるなんてね)
あの日の映像はかぐや含め全員が見ている。
ただし剣也は銀髪だし、顔がアップされたわけでもないためよくわからなかったが。
それに剣也は死んでいる。
それを深く心に刻んでいた少女は、それ以上ソードと剣也を結びつけることができなかった、したくなかった。
そして映像を見るかぐやと白蓮。
「強いな……本当にオシリスを超えたのか」
「この白い機体……綺麗ね。両手の剣、それに」
(この戦い方……やっぱり剣也に)
しかしその考えを頭を振り払って否定する。
いつまでも過去に囚われていては戦うときに戦えないから。
この相手はアースガルズ人、ならばいつか戦うことになるから。
「この映像からだけでは、正直実力はわからんな」
「そうね、荒すぎてよくわからない」
「オシリスも実践を離れて久しい、おそらく腕は落ちていたんだろう……」
(でなければあの剣聖が負けるわけなんてない)
白蓮はそう決めつける。
アジア最強の自分をもってして、勝てないと思わされた敵。
それが自分よりも年下の少年に倒された事実を直視できなかった。
「で、ロード・アースガルズが皇帝になったわけだけど、それはどうなの」
「勝利するという観点からすると最悪だ。ただし人格者であると聞いているので、負けた時はまぁましだな」
「そ、じゃあ最悪なのね。負けるつもりなんてないんだし」
「そうだな、頼もしい限りだが、とはいえこの戦場には来ないだろう、まだ内部統制で忙しいはずだ」
するとアナウンスが入る。
「間もなく日本に到着、時刻は16:00。総員準備せよ」
「ついたか、ではな。姫、死ぬなよ」
「そんなやわな女に見えるの?」
白蓮は笑顔でかぐやを見送る。
そして二人とも準備を開始した、少女は真っ赤なKOGに、青年は蒼いKOGへ。
白蓮の専用機、その蒼い機体の名は青龍。
アジア連合の粋を集めて作られたアースガルズの専用機にも負けない最新鋭の機体。
そしてパイロットは、アジア13神最強の男。
「総員、準備はいいか」
KOGに乗る白蓮が各部隊からの報告を待つ。
「EUは準備完了している、白蓮」
「トールか」
白蓮に返事をするのは、EU最強の男、トール。
白蓮とは旧知の中であり、戦場でともに戦ったこともある。
「そちらの指揮は任せる」
「了解している、アジア連合軍はお前に任せた。私はEU軍を指揮し、西からだな」
「あぁ」
世界連合軍は大きく分けて二つ。
アジア連合軍とEU軍の二つ、それぞれを指揮するのは世界連合軍総司令 白蓮。
実際に戦場にでて指揮をする戦う指揮官。
そして副総司令にトールとなっている。
トールの機体名はミョルニル。
黄色い機体は、まるで稲妻のような速度で戦場を駆け巡る。
ついたあだ名が雷神トール、その機体性能は建御雷神に迫るほど。
かつて現役時代のジークを追い詰めたEU最強の男だった。
指揮官は各部隊にもそれぞれ存在していて、すべてを二人が指揮するわけではない。
しかし実質世界連合の軍事においては白蓮とトールこそ、2トップとなる。
「あちらも準備は良いみたいだな、白蓮」
トールの視線の先には隊列が組まれたアースガルズ軍KOG。
まだ距離はあるが、防衛線を張ることには成功しているようだった。
「あぁ、そのようだ、一番槍はいつものように私が努めようか?」
トールが提案する。
彼はいつも誰よりも早く戦場を懸けた、だから今回も。
しかし白蓮はその提案を受け取らない。
「いや、今回は預けてもらえないか?」
「?…それは構わんが、らしくないな」
「いや、私ではない。どうしてもと聞かない我儘な姫がいてね。私はその後ろを守ることにするよ」
「そうか、了解した。援護に回ろう」
そして、既に銃弾が届きそうな距離まで両陣営が向かい合う。
「はじまるのね、ふぅーーー」
(お兄ちゃん……剣也、どうかわたしを守って)
「よし! あの時の気持ちを思い出せ! なんのために戦うのかを思い出せ! 本当に怖いのはなんなのかを思い出せ!」
呼吸を整え、深呼吸。
かぐやにとっても実践は初めて、本物の大戦は、殺し合いは初めてだった。
でも迷いはない、しかし後悔はある。
あの日届かなかった想いを今この場で届かせる。
あの日逃げた自分を変えたくて、二度も失ったものを心に刻んで。
その一心で、アジア13神にまで上り詰めたのだから。
時刻は夕暮れ、季節は冬。
日は落ち始め、太陽は隠れだす。
目の前には陸地、旧東京湾。
対面するは世界最強のアースガルズ軍のKOG。
対するこちらは世界最大連合国家、世界連合軍。
今ここに帝国 対 世界連合の戦争が始まった。
「全部隊に伝達! 総員飛翔! 戦闘開始! 目標は旧東京都! 全軍をもって! アースガルズ帝国軍を殲滅せよ!」
白蓮は叫ぶ。
そして、かぐやが、火之迦具土神が、誰よりも早く敵部隊に突撃する。
「はぁぁ!!」
真っ赤な閃光が、夕暮れのオレンジを上書きし。
敵前線を吹き飛ばす。
「私はもう逃げない!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます