第58話 ただの無双
★★★★★★★★★★★★★★★
まえがき(更新分 2/2)
今日の更新分二つ目です。
読み飛ばさないようにしてください。
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「はは、これは僕らAチームの勝ちは決まったな!」
Aチームで最も撃墜数が多い5機と討伐した少年が高笑いする。
彼の名は、シグマ。
能力的には聖騎士になってもおかしくはない、攻守戦略すべてが高水準の少年。
「しかし良かった。最初はどうなるかと思ったが……」
思い出すのは作戦会議。
指揮官を決めようとしたら、そいつが有利な作戦を立てるだけだと反発され結果全員で適当に戦うことになってしまったAチーム。
対して対戦相手は統率された動きをしていたため敗北を感じていたが、終わってみればどうだろう。
「圧倒的ではないか! わが軍は!」
こちらの討伐数はわかっているため、すでにBチームは数機しか残っていないことがわかる。
対してこちらも泥仕合だったため被害は多いがまだ20機ほどは残っている。
そしてついに。
48……49!
Aチームの討伐数が49機。
「さてと、後一機か。どこに隠れているのやら……」
「なぁ、そういえば誰か戦ったか?」
すると仲間からの通信が入る。
「誰か? 何のことを言ってる?」
その通信にシグマは返答する。
「いや、だって。確か敵にはいるんだろう?」
シグマは忘れていた。
圧倒的な勝利を目の前にして、その少年の存在を。
機嫌良く、既に勝利の美酒を味わっていた。
「だから何のことだ? ちゃんと言え」
「ほら、あれだよ、あれ……名前は確か…」
そしてシグマ含め20機のKOG部隊の前に飛んでくる一機の白いKOG。
(はは、隠れていればいいものを。姿を現しやがったか、俺があれを討伐して聖騎士だ!)
シグマはその白いKOGに飛んでいく。
剣を構えて、叩き切るために。
のこのこと勝敗の決した戦場に来たこの騎士は、勝利を諦めているのだろうと勘違いして。
「名前は……」
「しねぇぇ!!」
「ソード・シルフィード。ロード殿下の騎士」
「……ふぁ?」
相対したシグマが激しい揺れのもと次に見た光景は、大破のメッセージ。
何が起きたかすら理解できずに、剣也の間合いに入ったシグマは切って落とされた。
(え? 何が起きた? なんで俺は負けている?)
理解できないシグマは、その場で爆破して敗北した。
もちろん切って落としたのは剣也、電光石火の早業で。
戦場に降り立った一機のKOG。
目の前には20機ほどの大部隊と、大破している味方のKOG達。
(あれ? もしかしてBチーム全滅してる? 嘘だろ……俺がスタンバってる間に? ……もしかして俺)
「は、はめられた!? あのブルーって奴! なんか胡散臭いと思ったんだよ!」
この状況を見れば自分がブルーにはめられたと理解するのには時間がかからない。
戦果を出せないように、戦いは始まっているのに離れに一人取り残されていたんだろう。
「か、囲んで倒せ!! ロード様の騎士だろうと、所詮は一機だ!」
囲まれる剣也、相手は20機。
一斉に飛びかかるAチームの騎士達。
「はぁ、ロードに色々教えてもらおうかな……いや、無駄か、俺そういうの苦手だし。俺にできるのは……」
剣を構えて、とびかかってきた5機ほどのKOGすべてを吹き飛ばす。
「これだけだ。それに全員倒せば聖騎士になれそうだし、結果オーライだな!」
…
「あ、あ、あ、……嘘でしょ? まさかここから勝つんですか? Bチームが?」
「がはは! さすがはソード! バカみたいに強いな! 多対一の経験でもあるのか? タイマンとはまた違うのだぞ?」
「これほどですか……殿下の騎士は」
次々と敵をなぎ倒すソード。
一分と立たずに10機のKOGが戦闘不能の傷を負う。
その映像を見ている試験官達は空いた口が塞がらない。
まるで負ける気がしないとはこのことで、一機だけ明らかに動きが同じ機体ではない。
もちろん、スペックは同じはず。
それを最大限引き出しているというだけなのだが。
「いかにロード様の騎士予定とはいえ……これでは聖騎士レベルなど簡単に越えている……ジン君を思い出しますな」
「いや、彼も化物だったが、それでも20対1だぞ、それを苦戦の色も何も見せないじゃないか……初めてだ、こんなこと」
唖然とする試験官、そして一人膝を叩きながら高笑いする少年。
「ははは、さすがKOGバカ。これは決まったな、たかだか騎士や見習いレベルの20機では君は止まらないよね」
(100機でも止まらなかったのだから)
その表情はとてもうれしそうに、そんな顔を見て試験官達は驚く。
ロードがこれほど無邪気に笑う姿など誰も見たことがなかったから。
そして戦場の勝者は決まる。
49、50!
Bチームの討伐数が50機、そして剣也の討伐数は最多の20機。
たった一人で倒した数としては、全ブロック最多となってその戦場はBチームが制することとなる。
「おめでとうございます、ロード様。これでソードは名実ともにロード様の騎士でございますな」
「あぁ、少しヒヤッとしたが。当然の結果だろう。レイナ君も順調に倒して討伐数は10機か、これは決まりだな」
他のブロックで戦っていたレイナは普通に戦って普通に無双した。
剣也ほどではないにしろ、それでも圧倒的強者の力を見せつける。
そして聖騎士試験は終了した。
…
「では、今年度の聖騎士試験合格者を発表する!」
そして会場に集められた1000人の受験者達。
一人ずつ聖騎士合格者が発表されて、壇上に上がり聖騎士認定証を受け取っていく。
「次! レイナ・シルフィード!」
(よかった、レイナも合格したか。俺みたいにはめられてなくてよかった……)
彼女の実力なら問題なく突破できると思っていたが、レイナも搦手には弱そうなので心配していた。
「そして! 最後の一人!」
すると、発表していたスター大佐が壇上から降りる。
マイクを一人の少年に渡す。
金髪で少し長めの小柄な少年、しかし遠目でもわかるそのカリスマとオーラに受験者達から拍手が巻き起こる。
「アースガルズ帝国の未来を担う諸君、大変すばらしい戦いだった。最後の一人だけは私が発表すべきだろうと思ってこの場を借りる」
上がったのは、ロード・アースガルズ。
そして呼ぶのはもちろん。
「最後の一人。こい、我が騎士ソード・シルフィード!」
呼ばれて壇上に上がるのは、銀髪の少年。
会場がざわめき、同時に拍手が巻き起こる。
この日噂であったロードの騎士予定は公の場で騎士と認められるためのパフォーマンス。
そして剣也がお辞儀をして、壇上へ上がる。
「なんだ、お前がくれるのか……」
「まんまと嵌められてたじゃないか。まったく……少しは考えろ」
「うっ。合格したんだからいいだろう」
「ふっ。……だが、まぁ今は素直に褒めておこうか、ありがとう、そしてよくやった。これで一歩近づいたな」
壇上で二人だけの会話。
その会話は聞かれてしまえば、不敬だと騒がれるようなまるで友の会話。
あの日ロードの過去を聞いて二人の間はさらに深まっていた。
ロードにとって、剣也にとって。
二人は共に初めて心から気を許せる友になった。
盛大な拍手と固く結んだ握手をして壇上を降りる二人。
そしてマイクをスター大佐譲る。
「以上をもって今年の聖騎士試験は終了する! あ、それと二度と聖騎士試験を受けられないといったのは嘘なので安心するように!」
「……」
「えぇぇぇえ!!!」
会場に今日もっとも大きな声が響く。
半分近くの生徒達が安堵と共に声を上げた。
「嘘も方便、なーに、戦場だったらお前達は死んでいたんだ。がははは! では解散、半年後また頑張るように! あ、聖騎士合格者だけは残れ!」
…
残された聖騎士合格者達。
「全部で10名か……各ブロック一人の合格者って感じかな」
見渡すと剣也とレイナ含めて10名の合格者。
するとスター大佐が口を開く。
「二度目となるが、合格おめでとう! これで君達は帝国の守り手として認められたわけだが……実は今から面接がある」
(え? 面接?)
「そうだ、とはいっても落ちるとかそういうことはない。まぁ変なことをしない限り多分な!」
そして案内される10名の聖騎士合格者。
面接と聞くと、とても緊張する。
前の世界の日本では面接には圧迫面接というものがあり、心を折られた学生達も多いと聞く。
噂だけ聞いている剣也は、面接に良いイメージは全く感じない。
「では、次。ソード!」
教室で待機していた剣也達。
次々と呼ばれ面接室へと入っていく。
ついに順番が来て剣也も呼ばれる。
緊張しながらその部屋へと入った。
(ノックは三回? 二回? どっちだっけ? とりあえず二回でいいか)
「はいりたまえ」
中から返事が返ってきて剣也は扉を開く。
巨大な部屋。
後ろは一面巨大なガラスで太陽の光で部屋は明るい、ここは首都ヴァルハラが一望できるほど高い場所だったようだ。
目の前には豪華な長机と対面するように、一席の椅子が置いてある。
その椅子が剣也の座る場所なのだろう。
そして長机には三人の軍人が座っていた。
その一人が口を開き、名前を告げる。
「はじめまして、ソード・シルフィード君。私はオシリス・ハルバード」
その軍人はにっこりと笑って鋭い視線を放つ堀が深いイケメンの。
「ジンが世話になっているね」
三英傑のお父さんだった。
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