第18話 二人目のお父さん

「お父さんってどんな人?」


「パパは、強い人です、あと厳しいです」


 レイナの話を聞くとKOGをレイナに教えたのはジーク・シルフィード。

幼き頃から教養を学び、体術を学び、そして15歳になってすぐKOGを教えた。


 そのかいあってか、同年代ではレイナは最強レベル。


 だから最前線とはいえこの島国にレイナより強い存在がいるとは思っていなかったのに。


「で、俺が目をつけられたわけね、それにしてもみられるな」


 レイナと二人で歩いていると1級アースガルズ民にすごく見られる。

じろじろと、にやにやといやらしい顔でレイナと剣也を交互に見られる。


「そうですね、もしかしたら性処理用の従者と思っているのかもしれません」


「ふーん…はぁ? 今なんて?」


「性処理用の従者です」


「せ、性処理!?」


 レイナからでなさそうな言葉トップ3には入りそうな言葉、性処理。

その突然の発言に剣也は素っ頓狂な声が出る。


「私はこれでも男爵家の貴族ですから、異性の2級国民を連れているとそうみられる場合もあります」


「あ…そ、そうなんだ」


 一応法律上は2級、3級といえど人権が全くないわけではない。

殺せば罪に問われるが、それでも重罪ではない。

よくて現代日本の窃盗罪ぐらいだろう、しかし金にものを言わせて好きにすることはできる。


 なぜなら食べ物すら満足に食べることができないのだから。


「もしかしてレイナにも性欲はあるの?」


 するとレイナは思い出す。


◇過去のレイナ


「レイナよ、人間の三大欲求をコントロールできるようになれ」


「三大欲求ですか?」


 父から鍛錬を受けるレイナ。


「あぁ、睡眠欲、食欲、性欲の三つだ」


「睡眠欲は、眠い、食欲はお腹が減った時に感じるものですよね、性欲だけがよくわかりません」


「異性に対する興味だ、しかし弱い男に感じることはできないだろう。お前よりも強いものに感じる気持ち。それが性欲だ」


「じゃあ、パパにですか?」


「ただし、肉親は除く。いつかそう思える相手が見つかるといいな」


◇回想終わり


「はい、最近強くなってきました」


「え!? そ、そうなんだ…」


(意外だ…レイナにも性欲はあるのか)


 まさかの爆弾発言の連続に驚く剣也。

聞いてるこっちが恥ずかしくなるがレイナは少しも動じない。


「はい、剣也君に性欲を感じてます」


「ふぁ!?」


「あ、つきました。ここが家です」


「え? ちょっと、え? それで終わり?」


「?……はい。とりあえず入りましょうか、父を呼んできます」


「は、はい」


 何事もなかったかのようにすれ違いを起こしながらむんむん、もといムラムラしながら剣也はレイナの家に一歩を踏み出す。

家は、豪邸。

現世なら数億円はするだろう、綺麗な庭と巨大な宮殿のような豪邸が立っていた。


 そんなことより、ムラムラする剣也はそれどころではないが、レイナがこれ以上話さないので性欲の話題は終了した。


 テレビでしか見たことないような長い机の部屋に案内されて座らせられる。


「じゃあ、待っていてください」


 レイナが父親を呼びに行った。

豪邸といってもお手伝いさんがいるわけではないようだ。


 確か男爵といっていたが、男爵って一番下位だしそんなものなのかな。


 しばらくそわそわしながら待っていると扉が開く。


「ご苦労だったな。御剣」


 そこから現れたのは入学式でみた軍人。

しかし剣也は何度も見てきた、なんならプレイヤーとしても操作したことぐらいある。

それほど有名で人気のキャラ。


「は、初めまして! 御剣剣也です!」


「あぁ、私はジーク・シルフィードだ。よろしくな」


 そして差し出される右手。

今日は握手を良く求められる。

剣也にとっては、自然なことだがこの世界では異常なのは理解している。


(硬い…)


 その手は硬くて、戦士の手という感じ。


「ふふ、なるほどな」


 剣也の手を握ったジークは笑いだす。


(この手のまめ、まるでKOGしかやってこなかったような出来方だ)


「御剣、食事はまだだろう。食べていけ」


「いいんですか?」


「あぁレイナ、準備を頼む」


「はい」


 するとレイナが部屋を出ていく。

それを後ろで見送ったジークが扉を勢いよく締めた。


「これで邪魔者は…」


 いきおいこちらを振り向いて、にやりと笑る。

熱い視線を剣也に向けて、艶めかしい声で言い放つ。


「消えた」


「へぇ!?」


「さぁこっちへ来るんだ、ふふふ。楽しませてもらうぞ。たぎってくるな」


 涎を垂らしながら剣也の腕を強く握り別室へ連れて行こうとするジーク。


 その目はまるで獲物を狩るトラ。

猟奇的な将軍に掴まれた剣也は抵抗むなしく力づくて連れていかれる。


(これが貴族のやり方か! まさか目的は俺!? 手籠めにするつもりか!)


「さぁ、跨りなさい」


(くっ! 殺せ!)


「ほら、どうした。テクニックには自信があるんだろう?」


「わ、わかりました」


 そして剣也はまたがった。

硬くて……無機質なシュミレーターの上に。


 うん、いつもの感じです、ホモーな展開ではなかった。


「まさか家にあるとは、高そうですけど」


「あぁ、私は今も腕がなまらないようにしているからな。それにこれでもこの国の軍のトップだ、問題ない」


 ジークが剣也を呼んだ理由。

それは自らの力をもって剣也の実力を測りたいから。


 その目は熱くたぎっており、まるでおもちゃを見つけた少年のよう。


「この親にして、あの子あり…か」


 思い出すのは、あの日レイナから挑戦を受けたこと。


 しかし今日剣也が相手するのは間違いなくこの世界の強者。


 どこまで自分の力は通用するのか。


「準備は良いか、御剣」


「倒してしまっても怒らないでくださいよ」


「ふふ、ははは! 本国でもそんな口きかれたことはないな! 面白い!」


 そして二人が乗り込み、開始される。


 3,2,1……Fight!

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