第3話 真相

カスミの実家についたタケルはまず両親に挨拶をした。実家といってもそんなに田舎なわけではなくわりと近いとこだ。ピンポンを押すと中から

「はーい。どちらさまー?」と聞こえてきた。タケルは玄関のドアが開くと

「こんにちは!カスミさんの…」

別れに来たのに彼氏って言っていいのか迷いながらもそこは誤魔化した。実はカスミの葬式の時に一度ご両親とはあって連絡先も持っている。なのでこれが会うのは初めてではなかった。

「なにを言いに来たのかは大体わかるわ。きっとそれは辛い選択ではあるけれども、同時にあなたを楽にさせることなのね。娘もきっと応援してくれるわよ。」

お母さんはそういうと仏壇のある方に連れて行ってくれた。すると落ちている一つの日記に目がいった。名前の欄にはきれいな字で「前田香澄」と書いてある。タケルは何の気なしに日記を開いた。そこに書いてあることは衝撃的だった。


〇月△日

今日私の彼が死んだ。目の前で車にはねられた。私は助かったけど、彼は即死だった。私をかばったばっかりに。ごめんね。


〇月△日

もう何もしたくないしできないけど、この日記は続けようと思う。

最近夢に彼が出てきて私を怒鳴るの。そうだよね。悪いのは私だもん。ごめんね。


〇月△日

久しぶりに外に出てみたらBARがあったから入ってみたら。なんかナンパされた。お酒をおごってもらったの。

その人どこか彼に似ててびっくりしちゃってうまく笑えなかったけど、久しぶりに楽しかった。


〇月△日

また彼が私に怒ってる。私が幸せになるなんてずるいよね。でもいつからそんな怒るようになっちゃったの?優しい彼に戻ってよ。


「まさかカスミのPTSDって…。そんなことが…。」

カスミはいまのタケルとまったく同じ理由で悩んでいた。一つ違うのは、カスミはあまりに自分を責めすぎた結果、架空の彼の性格を作り出しいたるところで自分を苦しめていたことだ。これを知ったタケルはまたも自分のこと責めた。最終的にカスミを追い詰めたのは何も知らずにカスミの悩みを増やしていた自分だったからだ。そしてショックのあまり気を失ってしまった。

 「タケル!タケル!」

タケル「その声は、カスミ!カスミなのか!」

カスミ「タケル聞いて。あなたは悪くないの。あの女の子と付き合っていいんだよ!私にとってもそれが幸せなの。それに私には、」

「おーい、カスミー?」

カスミ「優しい彼もいるもんね!だから安心して。タケルはタケルの道を選んで。絶対幸せになってね。」

タケル「そうか。寂しくはなるけど安心したよ。最後に会えてよかったよ。」

二人はそう話すと涙を流しながら、最後のお別れをした。

 タケルが目を覚ますとそこはカスミの実家だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る