第2話 そして出会い

 カスミが死んでから月日はあっという間に流れた。タケルはもう何もできなかった。バイトもやめ、大学にも行けていない。タケルはいまだに自分のことを許せずにいた。あの時無理にでも話を聞いていれば、悩みを聞いていれば、自分が告白さえしなければ。いくつもの自分の罪を数えていた。朝、目が覚めスマホを触るとき普段は、仕事に行く前にカスミがメッセージをくれていた。それがない。夜になっても、「つかれたよー」なんてメッセージは来ない。何をしても何を見ても彼女がいないという事実が突きつけられてくる。でももう寂しくなって電話をかける相手はいない。ずっと一人になってしまった。

 しかしこのままではよくないと思いタケルは外に散歩に出た。久しぶりの外だ。今日は空がものすごく綺麗で、少し気分が晴れた気がした。カスミとの最後のデートからはどのくらいたっただろうか。外は少し熱気を帯びている。平日の昼間は人がいなくて気持ちがいい。そしてしばらく何も考えずに歩いた。

 何の気なしに足を運んだのは、あの公園だった。そしてあのベンチに座った。そこに座るとどこか懐かしくそれと同時に寂しくなった。でもこの寂しさは今までとは少し違った。ただ彼女がいない寂しさではなく、ベンチに彼女を感じられたからこそ湧き出てきた寂しさだった。ベンチに彼女を感じるだなんてとてつもない変態のセリフにしか聞こえないが、本音だ。変態ではない。

タケルはそんなことを思って少し涙を流した。こんな変な会話をよくカスミともしたことを思い出したからだ。そして一人で泣いているところに心配そうな顔をした女性が近づいてきた。

「あの、大丈夫ですか?」そういうとその女性はハンカチをタケルに渡した。タケルは驚き目を見開いた。彼女の顔がどことなくカスミに似ていたからだ。タケルは

我に返り、お礼を言ってハンカチで涙を拭った。

女性は何も言わずに隣に座った。

「このベンチいいですよね。よくカップルの方とかも来るんですよここ。」

タケルはそれを聞き少しドキッとした。自分も少し前までそのカップルだったからだ。すると女性が

「あ、私ハナっていうんですけど、よかったら連絡先交換しません?私近くの大学の3年で友達ほしいんですよ。」タケルは友達が多く、こういう明るい人とは気が合うので、躊躇わずに連絡先を交換した。そのとき少し罪悪感を感じた。これはカスミへの裏切りになるのではないかと。でももしここにカスミがいたらきっとカスミも連絡先を交換するだろうと、その罪悪感は消えた。

後から気づいたことだがハナとタケルは同じ大学に通っていた。それもあり二人は仲良くなっていった。ハナとは毎日メッセージを送り合い、時には電話がかかってくることもあった。タケルは次第に大学にも通うようになり、普段の生活を取り戻しつつあった。前まであった寂しさが和らいでいく気がした。それでもまだカスミが大事だった。まだ彼女を失った辛さや想いが消えたわけではなかった。

ハナと休日に遊ぶのが三回目になった時のこと、普段から二人がよく来る飲食店の中でハナはタケルにこう言った。

「付き合ってください。」一言だけだった。実はタケルもハナに気はあったので普通であればOKだった。だがタケルは一度最愛の人を失っている。そう簡単に彼女のことが忘れられるわけがなかった。でもハナに対する気持ちも本当の気持ちだった。だからタケルはこう言った。

「少しだけ待ってくれ。しないといけないことがあるんだ。返事はそのあとだ。」

タケルはこう言って何をするのかはハナに言わなかった。するとハナは

「何をするの?聞かせて、手伝わせて、お願い、一人で抱え込まないで。タケルと      初めて会ったときタケル泣いてたよね?それが関係あるんでしょ?」

予想外のハナの反応にタケルは驚いた。

「あぁ…。俺もあの時そうやって聞けばよかったのかなぁ…。そうすれば…カスミは…」店内なので必死に涙をこらえながらそう言い、すべてをハナに話した。

「だから俺はカスミの実家の仏壇に行ってハナと付き合うことをカスミに伝える。」

ハナは納得しうなづいた。

 そしてタケルは今カスミの実家に来ている。するとカスミの死の真相を知ってしまう。

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