陽と月の姫の目覚め

 その様子を見た星矢は唸る。


「そろそろ解除するか」


 その球体のエネルギーを開放させるつもりなど全く彼にはなかった。


 ただ、最後にこれを止めることが出来たら試練の終わりと考えていたのだ。


「・・・二人は解を得たようだからな」


 風花の叫びに陽菜と月菜の雰囲気が変わっていた。


――――本当に荒療治にも程がある。


――――あえて悪役になることで気付かせる点といいねえ


「しかたないだろう。二人とも自分の幸せを見失っていたのだから」


 星矢が懸念していたのは二人自身の幸せだ。


 守るのはいい。だが、自身の幸せを犠牲にしてはいけない。


 それだと何も残らないのだ。


「もっとも護りたい人・・・風花には感謝だな。あいつの問題も前進したし・・・だが・・・」


 星矢の目がマスク越しに細められる。


 それは轟音でかき消され陽菜と月菜には聞こえなかった風花の叫び。


 彼女が叫んだ名前を見てしまったのだが・・・


「どうやって見抜いたのか。まあ、薄々感じてはいたことだが、あいつも何か持っているということか。ここからややこしいことになりそうだ。さて・・・んん?」


 そこで星矢は気づく。


「なんだ?マナが急速に高まって・・・」


ーーーー第三神器召喚!!


 その叫びと共に黄金球が粉々に打ち砕かれたのだ。




 その光景を風花は呆然と見ていた。


 こなごなに打ち砕かれ光となっていく黄金球。


 それ背に二人は立っていた。


 手に新たな神具を伴って。


 陽菜の右手にあるのはフェニックスの頭部。


 月菜の左手のあるのはフェンリルの頭部だ。


 ―――――ピーコックナックル!!


―――――フェンリルシールド!!


 新たな神具その登場である・


 二人の体から光が立ち昇る。


「・・・私たちも万能じゃない。全て護る・・・だなんて一人じゃできない」


「うん。でも、一人じゃなく二人なら・・・」


 彼女達の後ろには助けることが出来た風花がいる。


「これで罪を償えるとは思えない。でも・・・もう嫌なんだ。幸せを奪うのも、奪われるのも」


「だから・・・私たちは戦う。一緒に」


 二人の言葉が・・・


「うん一緒に」


「一緒に」


 重なっていく。


『一緒に、護ろう・・・私達の幸せを!!』


 心もまた重なる。


 それと共に彼女達の姿が光と共に変わっていく。


 より鮮やかな赤と金、白を纏い変わっていく陽菜


 同じく鮮やかな青と銀、そして黒を取った月菜。


 二人頭には陽菜には太陽、陽菜には月のようなシンボル。


 それを背に彼女達が契約していた守護神達も姿を現す。


 フェニックスはまるで太陽のごとき鮮やかな紅と金の炎を纏う。


 フェンリルはまるで月のような深い青と銀の氷を纏っていたのだ。


 その変化にその場にいた皆が驚き固まる。


「属性昇華による転生だと?」


 それは上空にいるガーディドラゴンも例外ではない。


 だが、ガーディドラゴンは何が起きたのかすぐに理解した様子だ。


「ほう・・・面白い。久しぶりに見る転生だが、契約の段階があがったことといいどれだけの力を得たのか試してやろうか」


 その言葉に二人はそろって飛び上がり、それぞれ手にした新たな神具で殴りかかってきたのだ。


 その動きは綺麗にシンクロしており。まっすぐにガーディドラゴンに向けられ・・・彼は右手で受け止めた。


「・・・一撃の威力が上がっているな」


 手から伝わるのは確かな重み。


 絶大な破壊力を持つ右手が重みを感じるほどの一撃を彼女達は放っていた。


「だが、その程度ではあるまい。ここからどうやって・・・っ?」


 そこから反撃しようとして・・・後ろから飛んでくる何かに気づきとっさに左の杖を払う。


 それは月菜が放ったダガーだ。弓のように連結したそれをブーメランのように飛ばし、ガーディドラゴンの背後を突いたのだ。


 その隙を二人は見逃さない。


 それぞれにしていた神具の口が開く。


――――――フレア・・・


――――――コキュートス・・・


 それはそれぞれの属性を伴った砲撃。


『バスター!!』


「ぬぐお!?」


 至近距離の砲撃にたまらず吹きとばされるガーディドラゴン。


「不意を突かれたとはいえ、余に一撃を入れたか・・・やってくれる」


 すぐに体勢を整える彼にたいしたダメージは見られない。


 だが、彼女達は明確に彼に一撃入れたのだ。


 これまでとの違いは大きい。


「得た答えの力、見せてもらおうか」


 二人が大魔王に挑みかかる。


 二人同時の攻撃を杖で受けた彼だが、その瞬間に違和感を覚える。


「ぬ?」


受けたと思った部分がほんの僅かにずれた。


「なんだ?」


 僅かなずれ。だが。そのずれが大きいものだった。


 受け流せないのだ。 


 一度だけではない。


 二人の攻撃は彼の目測よりも僅かにずれていく。


 そのずれが彼に今まで行っていた紙一重の回避を許さない。


 必然的に受け続けることになり、追い込まれていく。


「やっぱりあなたは目を始めとして、色々な感覚が鋭いのね?」


 その一言にガーディドラゴンも気づく。


「幻術か・・・」


幻を見せる技。しかも視覚だけでなく、聴力なども狂わせる類。


 本来ならガーディドラゴンには効かない。


 彼も目はそう言ったものを無力化する。真実を見抜く力も持っているのだ。


 だが、現に惑わされている。


 その理由は単純だった。


「さすがに私達二人でやれば・・・効くみたいね?」


「物理と精神・・・両面から惑わしてくるか!!」


 月菜は精神的な部分から感覚を狂わし、陽菜は蜃気楼などの物理の面から惑わしてくる。


「力技にもほどがあるぞ」


 ほんの僅かな攻撃のずれに対して、二人の全力で惑わしてきたのだ。


 無力化すら上回る力技である。


 僅かなずれ。だが、それがガーディドラゴンの攻守のリズムを狂わせている。


 それに加えて、二人の連携の質がさらに向上していた。


 進化したと言い換えてもいい。


 個別の技も当然早く、重く、鋭くなっている。


 だが、それ以上に二人の息の合いようが普通ではなくなっていたのだ、


 攻撃を同時に重ねてくることは当たり前。


 陽菜の剣が繰り出す無数の突きの壁。


 その突きの合間を潜り抜けるようにして月菜が飛び込んできて回転斬撃を繰り出してくるのだ。


 その斬撃一発一発が突きと合わせて、互いの威力を倍加させるように。


「ぬうううぐううう!?」


わずかとはいえ惑わされている状態でそんな訳の分からないレベルの連携をされたらいくらガーディドラゴンとはいえたまったものではない。


 必死で攻撃を捌く。


 すでにその場から移動しないという縛りをやっている余裕すらない。


 それでも二人の猛攻をしのいでいるあたりは彼もまた普通ではない。


「いい加減にしてもらおうか!!」


 右手で強引に掴みかかろうとして、それをガーディドラゴンは躊躇った。


 右手の威力が高すぎるからだ。


 故に、右手で空を押し、二人吹き飛ばしにかかる。


 それに対して、右肩にフェンリルシールドを装備した月菜が動いていた。


――――――フェンリルブリザード!!


 フェンリルシールドから放たれる猛吹雪。それと右手の圧が拮抗し・・・


 翼をはためかせた陽菜が続く。


――――――ファイヤーストーム!!


 翼から吹き荒れる炎の嵐。吹雪とぶつかり、水蒸気を伴う爆発を起こしたのだ。


 それに視界が遮られるガーディドラゴンだが、すぐに右手でその水蒸気をすべて吹き飛ばす。


 そこで彼は目にした。


 ピーコックナックルとフェニックスソードを、くちばしから刀身が出る形で合体させた陽菜。


 同じく二本のファングダガーを連結させ弓とし、その連結部分にフェンリルシールドを合体たせた月菜。


 そんな二人の姿を。


「・・・第一神具と第三神具の合体だと?」


 剣に翼の形に圧縮した炎を纏わせた陽菜。


 弓を引き絞り、開かれたフェンリルの口から氷の矢が生まれた。


 二人は新たな必殺技を放つ。


―――――不死鳥の炎飛翼<フェニックスウィングスラッシュ>!!


—————神狼の氷牙矢<フェンリルファングアロー>!!


 放たれた翼の形をした炎の斬撃と牙の形をした氷の矢。


――――黄金竜の顎<ドラゴンバイト>!!


 それを迎え撃ったのは竜の顎だった。


 ガーディドラゴンの顎が二つの攻撃を嚙砕こうとしたのだが・・・できなかった。


 噛み砕こうとする力と氷と炎が拮抗。


 二つが顎の中で合わさり、黄金の輝きを伴ってさらに勢いを増したのだ。


「噛み砕けぬだと?!」


 拮抗する両者。


 そこに二人は追い打ちをかける。


『もう一発だぁぁぁぁぁぁ!!』


 炎を纏った剣と氷の矢をもう一発放ったのだ。


 それらは交わり合い。黄金の砲弾となって・・・拮抗していた部分に衝突。


 大爆発と共にガーディドラゴンは吹っ飛んだ。


 地面に激突する寸前で身を翻し、着地する彼。


 彼は煙を上げている右手を見てうなる。


「違う。威力もそうだが、二人の息の合いようも・・・何もかもが・・・」


 彼女達の想像を超えたパワーアップ。それに圧倒されていた。


―――――いい加減本気を出せ


―――――あやつらの力の増大は無視できんぞ?


「そうだな」


 彼は笑う。二人の成長に歓喜していた。


 それと共に彼の纏う空気が変わる。放たれた圧だけで地面がへこむほどに。


「いいだろう。ここから本気で・・・?」


 そこで彼は自身の体に違和感を覚える。


 体が全く動かないのだ。


 その理由はすぐにわかる。


 幻術で隠していた孔雀の尾羽のような鎖が全身に巻き付き、特に入念に右腕と左腕を縛り封じ、脚が凍っていたからだ。


 その答えは彼女達が手にしていた新たな神具によるもの。


 陽菜の背中から出ている尾羽の鎖と月菜の生やした尻尾から出ている氷の杭によるもの、


―――第四神具・・・


「ピーコックチェーン!!」


「テイルバンカー!!」


 二人は温存していたのだ。拘束に適した新たな四番目の神具を。


「なあ・・・にっ!?」


 その拘束は長くは続かない。だが、少しでも、その手を封じ、その場に縛り付けておくだけで十分であった。


―――――解き放て・・・守護神のすべてを


 二人は最後の切り札を開帳する。


 背後に現れる炎の鳥と氷の狼。


 その手には第一神具と第三神具を合体させた状態にある。


 陽菜の背後にフェニックスが合体、上空へ飛び上がる。


 月菜はフェンリルに飛び乗り、その姿が無数へと分身。


 陽菜は炎の鳥化し、月菜は氷の狼と化す。


 そのまま彼女達は突っ込んでいく。拘束を解こうとしていた大魔王へと。


「しまっ・・・」


————太陽を纏いし不死鳥【シャイニングフェニックス】!!


――――満月の牙を突き立てし神殺しの狼【フルムーンファングフェンリル!!】


 それは守護者たちが一回の変身で一回だけしか使えない最後の切り札。


 守護者と合体しての最強攻撃を行うといったものだ。


 通称ファイナルアタック。


 それが大魔王へと炸裂した。





 黄金の大爆発が当たりに巻き起こる。


『はあ・・・はあ・・』


 荒い息で膝をつく陽菜と月菜に他の守護者たちが駆け寄る。


 皆、ボロボロだ。


「二人とも!!」


「みんな…大丈夫なの?」


「うん、突然二人とも消えちゃって」


 駆け寄ることが出来たのは、他の守護者たちを相手にしていた二人が突然消えたからだ。


 二人とも拘束され、陽菜と月菜のファイナルアタックをまともに受けようとしていたガーディドラゴンを見て焦った様子だったのだ。


 爆発の余韻で立ち込める土煙のほうをみて海花は問う。


「倒したの?」


「少なくともよけられた感触はなかった」


「何とか本気を出される前に圧倒できたと思いたいけど」


 陽菜と月菜は荒い息を必死で整いながら立ち上がる。


「・・・流石に驚いたぞ」


 土煙の向こうから声が聞こえてきたのだ。


 それに彼女達は驚いた様子はない。


「やっぱり、倒しきれなかったか」


 彼女達は気づいていた、大魔王はまだ本気を出していないことに。


 出される前に圧倒して、倒そうとしたのだがそれに失敗したのだ。


「いや、危なかったぞ。弟達の切り札を開帳させたのだかな」


 大魔王の前には盾を構えたガーディブレイブと長いマフラーのような布を纏ったガーディファングの姿があった。


「二人とも済まぬな」


「あれは仕方ないと思う」


「勢いがやばすぎる。むしろよくしのいでいたと思う」


 二人が急いで駆け付け、ファイナルアタックを防いだのだ。


 二人が手にしている物が普通の道具ではないのは明らかだ。


「守護鱗盾イーガス・・・それに影毛戦衣・・・ヤトノキヌ」


 二人の手にしている者を見て守護神達は唸る。


「もしかして——武神具?」


「ああ・・・」


 新たな武神具の登場に天を仰ぎたくなる守護者達。


「本来なら一人一つしか装備できないはずなのに・・・」


 リリスが表情を引きつらせて告げる事実に大魔王は当たり前のように告げる。


「我が弟達を舐めるなよ?二人は特別なのでな」


 リリスは頭が痛そうに皆に警告する。


「気をつけなさい…あの武神具は防御に優れている。盾は武神具の中で一番、布は三番目の防御性能を誇っているわ」


「ファイナルアタックが防がれるのも納得だわ」


「ホントに理不尽な・・・」


 双子の守護者の言葉に大魔王は笑って告げる。


「はははは・・・覚えておくがいい、武神具はどれも理不尽だと」


 そして、すぐに笑いを引っ込めて双子を見る。


「二人とも、繋がっていたな」


 その問いに二人は正直に頷く。


「お互いの考えていること、感じていることが伝わってきた」


「二つの意思を一つにした感覚」


 二人はすべてを共有していたのだ。お互いの無意識の動きすらも。


「・・・エプリスク」


 その二人に大魔王は太陽と月が重なる日蝕の名を送る。


「今後、そのスキルをそのように名乗るがいい。太陽の姫と月の姫よ」


「私達の昇華した属性も見抜いていたのね」


「厄介」


 陽菜と月菜はその心の成長により、契約の段階が上がっただけでなく、属性が変わったのだ。


 陽菜は光と火が合わさり、太陽へ。


 月菜は闇と氷が合わさり月へ。


 二人は上位の天体の属性を得ていたのだ。


「この場は余の負けだ。想定をはるかに上回ってきたのだからな」


 その上で大魔王はこの場での己の敗北を認めた。


 それは卑屈ではない。


 二人が彼自身の想定を上回り、圧倒されたことを認めたからだ。


 素直に相手を称賛できるだけの度量も彼はあるのだ。


 途方もないほどの人としての器の大きさにかつて別の世界を統一した存在だと守護者たちは思い知らされる。


「逃がさない!!」


「あなたはここで止める!!」


 足元に黄金の魔法陣を展開、撤退しようとする大魔王を止めようとするのも当然だろう。


 それだけ大魔王の存在は危険だった。


 だが、守護者たちの足は止まる。


 彼女達の目の前に振り下ろされた何かによって大地が叩き割られたからだ。


「悪いが、やらせるわけにはいかねえよ」


 そこに現れたのは漆黒の昆虫人間だった。


「ベブゼブブ!?」


「何故あなたが!?」


 名前を叫ぶ月菜とアリス。


「体は大丈夫なの?」


 なぜか心配してくれる言葉に頬をかきながら彼は告げる。


「大魔王のお陰でな・・・お前たちに新たな姿を見せてやる」


 昆虫人間のような姿に亀裂が走り、昆虫の殻が剥がれ落ちる。


 その下から現れたのは黒の契約者の姿。赤い二つの複眼に額の目。触覚だけ残した新たな契約者の姿だ。


 不安定だった昔のベブゼブブを知るリリスは驚愕に言葉を詰まらせる。


「・・・お主。どうやってベブゼブブの力を物に・・・」


「大成功かクライム・・・いい仕事だ」


――――魔導書のおかげだ。


 大魔王の言葉とベブゼブブの周りを飛ぶ黒の魔導書を見てリリスは理解する。


「そういうことか・・・」


「まさかクライム。お前・・・本来の力を・・・」


 守護者たちも誰の仕業か即座に理解したようだ。


「俺は魔王軍につくことにした。だが、あんたら二人には何度も世話になっている、故に足止めだけだ。それでいいよな?」


「当然だ。恩は大切にするべきだ」


「まったく、器がデカすぎる男だ」


 そう言いながら彼は腕に巻き付いた鎖を振るう。


 すさまじい破壊力に大地がまた叩き割られる。


 そして、陽菜達の目の前にはいつの間にか無数の弾丸が立ちはだかっているのだ。


 それを行ったのは間違いなく右手に銃を手にしたベブゼブブだ。


「しかも、お前まで武神具を二つだと?!それは呪縛肉鎖 バクジュと喰口絶砲 ファインブルではないか!!」


 リリスの言葉に守護者たちは理解する。


 たった四人の魔王軍。だが、その実態は古代の超兵器――武神具をすでに七つ集めている猛者たち。


 それがこの場で力を見せつけ、再び暗躍するために姿を消そうとしている。


「余はお前たちを過小評価しているつもりはない。撤退の準備ならしているさ」


 不敵な笑みをこぼしながら大魔王は黄金の魔導書を展開させる。


――――召喚――エレメンタリアン!!


 その言葉とともに大魔王の前に現れる大量の先兵たち。


 それはクライムがよく使う兵士たちだ。


「たっぷり用意しておいた。戦のあとのクールダウン代わりにでも使うがいい」


 その言葉と共に消えていく四人の魔王軍。


「さらばだ。また会おう!!」


 あとに残されたのは四桁に届くくらいの数のエレメンタリアン。


「完全にしてやられた」


「あいつ、最初からこのつもりで」


 完璧な撤退の打ち合わせ。彼らは最初からこうやってこの場から離脱するつもりだったのだ。


 相手はガーディアンズを過小評価していないのだ。


 しかもエレメンタリアンもまた新しくなっていた。


 人型だけではない。四足獣型。鳥型。蛇型までいるのだ。


「逃がしたのは大失態ね」


 幸いなことに彼らは勝手に暴れることはない。周りに来ていた野次馬を襲うことは全くしないのだ。


 世界を制した後に民となる者たちを傷つけることはしないようだ。


「新たな敵の登場・・・か。あのクライムを従える大魔王だなんて・・・。まったくどうにもならないわね」


「でも、私は戦うよ」


 月菜は陽菜に、他の守護者たちに改めて告げる。


「みんなと一緒に・・・私の・・・みんなの幸せを護る」


 そんな姿に皆が歓声を…応援の声を上がる。


 かつてクライムの部下として戦った月菜とアリスにも惜しみない称賛を応援が送られているのだ。


 彼女達が守護者として認められた証として。


 それができたのはガーディドラゴンのおかげとも言えた。


「・・・まさかね」


 初めからこのような結果になるように仕組まれていたのではないか。


 陽菜はそんな感想を抱いていた。


 その考えに月菜は驚いている、


 いうなれば、自分たちのためにこのようなことをしたということになるからだ。


「私もそう思ったわ」


 海花もまた同じ考えだ。


 そうなれば、どう見ても足止め用のエレメンタリアン達のことも説明がついてしまう。


「・・・食えないわ。あいつ世界征服を企んでいるのよね?」


 そんなことを抱きながらも海花もまた後始末代わりのエレメンタリアン達の大群に向かっていく。


 その雄姿をすべての人たちが見ていた。


「・・・・・・」


 呆然としていた風花も。





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