古き友情
警察に届けたダイヤの指輪の持ち主は、三か月経っても現れなった。法律に基づいて、指輪は届けためいのものとなった。
その後、めいは手に入れた指輪を売り払った後に勤め先を退職した。社会人になってからの彼女を悩ませていた頭痛と肩こりは、会社を辞めてからというものすっきり消えてしまった。
「ひなちゃん久しぶり。連絡できなくてごめんね」
「めいちゃん? 久しぶり!」
「色々大変でね……本当にごめん。突然ですまないんだけど、一緒に旅行行きたいなって思って。沖縄か九州辺りで予定してるんだけど……」
ブラック企業から解放され、ダイヤモンドによって金銭面でも余裕が生まれためいは、気晴らしにどこかへ遊びに行こうと考えた。その一環として、メッセージアプリで幼馴染のひなちゃん――
めいが就職活動に入ったころから、以前の仲良しぶりが嘘のように疎遠になっていた。こうしてやり取りをするのもいつぶりだろうか……めいは懐かしく思いながら、スマホの画面を見つめている。これより以前に送ったメッセージの日付が二年前なのを見て、「歳月人を待たず」という言葉を思い出した。
メッセージを送った後で、めいは不安な気持ちになった。
――果たして突然の誘いに乗ってくれるだろうか。
何分まともに連絡を取り合っていたのは二年前までのことだ。それに向こうにも色々都合があるだろう。疎遠になっている間に彼氏でも作っていて、そっちとの付き合いを優先するかもしれない。はっきり言って、望み薄というより他はなかった。
バッグの取っ手に結びつけたお守りを握りしめながら、めいは返事を待った。このお守りは、比奈がくれたものだ。
しばらくして、スマホの通知音が鳴った。比奈が返事を寄越してきたのだ。めいはどきどきしながら、おそるおそるメッセージを読んだ。
――お願い、神様。
「旅行? いいねめいちゃん。実は私も行ってみたかったんだぁ」
比奈の返答は、めいの心配に反するものであった。そのメッセージを見て、めいはほっと胸をなで下ろすとともに、何だか胸の奥底がじんわりと温まるのを感じたのであった。
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