酒呑坂めいVSデスワーム 地底怪獣から大会を守れ!

予告状

 射握しゃあく緑地公園。四方を木々に囲まれ、その中は芝生が広がり、敷地の中央を横切るように小川が流れている。そんな、小さな緑地公園である。平日の昼間とあって、人の姿はない。いや、一人と一頭だけ、この公園内を闊歩する存在があった。


 藍色の狩装束をまるで丁半の壺振り師のように着崩し、左肩やさらしを見せつけるように露出した女が、鹿毛かげの馬に跨って公園の中を進んでいる。

 やがて馬の歩みを止めた女は、馬上で大きな竹製の弓を構え、腰に帯びた矢筒から鏑矢かぶらやを取った。


「今度も面白おもしれェモン見せてもらうぜ、酒飲みさんよ」


 この女こそ、鱶川ちひろである。


 鏑矢の先には、ふみが結びつけられている。その矢をつがえ、引き絞ったちひろは、緑地公園の外、道路を一本挟んだ向かいに建つ安アパート「鮫死森荘さめしもりそう」のベランダに狙いをつけて放った。


 そのベランダは、酒呑坂めいの住む部屋のものである。


 放たれた矢はひゅうっと甲高い音を立てて飛び、木々の間を通り抜けて、アパートのベランダに置かれた室外機に刺さった。

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