さびたラック

@zoe

さびたラック

これは、Aさんが

荷物の梱包のアルバイトをしている時の話だ


作業の内容は

指示書に書かれた品物を箱につめる

Aさんの作業はこれだけだった

さらに先の作業は別の方が担当


その作業の際

簡易的なテーブルの上で行うのだが

箱をテーブルにのせて

荷物をつめる

その時、指示書の紙を

机の上に置くのではなく

目の高さ確認したいと思い

壁にガムテームで止めていた

壁をつかいたいため

テーブルを壁によせていると

「そこで作業するな」

と言われてしまい、困っていた

この目の高さにあわせるのがよかったのだ


すると

次の日、作業場に

現場の上司であるBさんが

なにか持ってきた

それは、下が台車になっていて

その上にパイプで枠が立っている

なんというか

パイプのラックとでも言おうか

台車のすべての面にパイプがあるわけじゃなく

一面にだけあった

そして、それはさびていた


Bさんはそこに

指示書を貼り付け

「これでいいか」

とだけ言い、いってしまった


どこから持ってきたかは

わからなかったが

確かに、これならテーブルを壁につけることなく

指示書を目の高さにあわせられる


Aさんはその後

契約期間が終了し、その現場からは離れる


「そこから、ふしぎなことがはじまりました」

Aさんは言う


あの作業に使っていた、さびたラック

あれをいろいろな場所でみかけるようになったのだ


それは

ある会社に就職していた時

会社から離れた場所で、昼食を取り

会社に帰る時だった

交差点の信号待ち、なにげなく道端をみると

見覚えのある、あのさびたラックが

道端の芝生にスペースに置いてある


そんなのどこにでもあるもの

とは思いつつ、よくみると

さびたパイプのところに

特徴のあるパーツがついていて

それが、まさにあのラックのものだったのです


その時は

「こんなところにもあるんだなあ」

くらいに思ったそうです


アルバイトの頃

あのラックはどこから持ってきたか?

という話を、Bさんにしたことがあった

あれは、別のところでつかっていたのが

置いてあったので、勝手に持ってきた

だが、あと3ヶ月しかつかえない

と言われた

これから先、ずっとやる作業につかうのに

そんな、勝手に3ヶ月だけって

と思ったが、その時点でAさんは

あと2ヶ月の契約だったので

「そういうものか」

と思ったそうです


次にみたのは

仕事で、地方都市に出張にいった時

取引先の工場で

中を案内されていた時

敷地のはしっこに、あのラックがあったのです

少し遠くからでしたが

やはり、あの特徴のあるパーツがみえたので

同じラックでした


この後も

あらゆるところで、あのラックをみかけるそうです


謎のところは

それぞれ、同じ具合にさびていること


最近

みかけて驚いたのは

海外のドキュメントで

過酷なサバイバルもの

かつて、炭鉱があったという場所にたどりついて

「なにか、使えるものがあるかもしれません」

という言葉とともにあけたくずれかけた倉庫の中に

大量の、あのさびたラックがあったのみた時だそうだ


この話を

まわりの人間に話していたのだが

ある日、あのアルバイト先から電話があり

出ると

「あれの話をするんじゃない」

バリバリにわれた音声の声が聞こえた

その声は、上司のBさんだった

その後もBさんの怒鳴り声は続いた

後日、Aさんは

かつてのアルバイト先を訪ねた

すると

事務所と作業場はあとかたもなく

更地があるだけだったそうだ



結局

あれが、なにに使われいて

一体なんなのか、まだわからないという




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