砂かけ

ツヨシ

第1話

ある日、山で一人キャンプをしていた時のことだ。

ぱらぱらぱら。

突然、俺の頭に砂が降りそそいできた。

――なんだ?

周りを見わたした。

もちろん上も。

俺はその時河原でキャンプをしていた。

周りには木も生えていないし、人も誰一人いなかった。

そして風は、完全に無風だ。

砂が頭上から降って来る要素など、微塵もない。

怪訝には思ったが、俺はそのまま夕食の準備に取り掛かった。

すると少し間をおいて、また来た。

ぱらぱらぱら。

砂が降ってきたのだ。

どれだけ周りを見てもどれだけ考えてみても、導かれた結論は、砂が頭の上から降って来るなんてありえない、の一つしかなかった。

――いったいなんなんだ、これは?

気にしないように無理矢理自分に言い聞かせて、夕食を作り終えて食べていると、また砂が降ってきた。

ぱらぱらぱら。

砂は大した量ではなかったが、喰いかけの夕食の中に砂が少し入ってしまった。

――おいおいおい。さっきからなんだあ。

俺は次第に怒りを覚えるようになってきた。

すると今度は間髪入れずに砂がぱらぱら降ってきた。

――もしや、これは……。

俺は思いついた。

これはいわゆる、砂かけ婆という妖怪なのではないのかと。

そう言えば、砂かけ婆は目で見ることができないと言う。

目で見られないし声も発しないのに、なんで婆と言われているのかは俺にもわからんが。

わからんが、とにかく迷惑なことには違いない。

俺は上に向かって叫んだ。

「いいかげんにしろ、このクソ婆。そんなちょっとの砂、全然痛くもかゆくもないぞ」

すると音がした。

ざっざっざっ。

砂を掘っているような、もしくはかき集めているような音だ。

そしてその音はしばらく続き、不意に止んだ。

俺がそのまま耳を澄ませていると、突然今度は信じられないくらいの大量の砂が俺に降り注いできた。

その砂で俺の身体は完全に生き埋めにされてしまったのだ。


       終

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砂かけ ツヨシ @kunkunkonkon

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