残暑

# 東京 残暑


東京にいる理由を探して1ヶ月が過ぎた。


あれだけ暑かった季節も終わりを迎えつつある。


残暑なんて言って望んでもないのに延長する夏が少しだけ恋しくもなった。


季節が移り変わるまでにどうするか考えたかった。


考えることを放棄していた気がする。


『もう、地元に帰ることにした。』


朝起きたら、元恋人からLINEが来ていた。


私は前日の夜に彼女にメッセージを送っていた。


「元気してる?今仕事辞めてさ今後東京で過ごしていくのは無職には厳しいから悩んでて愛美ちゃんはどうしてるかなって思って」


彼女からの返事の続きはこうだった。


「実家もそろそろ継がなきゃと思って今年24になるし丁度今の仕事もキツくてそろそろ辞めたいなって考えてたんだけど。来年から妹が大学で関西の方に行くみたいで親も寂しがってたから年末には引き上げようと思ってる。私は元気だけど、そっちは大変そうね。私に言ってくるってことは相当悩んでるのね。」


寝起きで返信するにはしんどくてとりあえず二度寝する事にした。


昼過ぎに起きた。コーヒーを入れて煙草に火をつけてから返信をしなきゃなと思いながらyoutubeでショート動画を眺めている。


返信めんどくさくなっきた。


元カノに連絡したところで現状が良くなる訳でもないし昨夜の自分どうかしていたんだなって後悔する方に意識を変えた。


考えるからと言い訳して2本目の煙草に火をつけたところでラインが来た。


久しく会っていないセフレからだった。


「久しぶり!来月子供生まれる笑」


ムカついてブロックした。昨夜の私はこいつとやりたくて連絡したんだと思う。


一人でお酒飲んで過ごすと寂しくなったのか何やってるんだ。2度目の後悔。


確か最後にやったのは一年半ほど前だったはずだ。


その間にこの子は妊娠していたらしく来月産まれるらしい。


驚いた。それよりも「笑」にイラついた。


何が笑いだ。文章を柔らかくしようとして「笑」「www」「草」とかを語尾につける人が嫌いだ。


いらない。特に草とwは本当に辞めて欲しい。読んだ時の精神状態が悪い時はトーク削除して二度と表示されないようにする。


文章のやり取りで感情を表現する必要はない。それなら「〜」でも使っていて欲しい。なんで無理して笑う必要があるんだと思う、何よりその笑いは蔑みを含んでいると思ってしまう。


ひねくれている。けど仕方ない見たくないから。私には使わないで欲しい。


ついでに文章の最後に「知らんけど」を付ける人も嫌いである。一言不要。


「と思うけど」とかでいい。


不必要かつ不愉快で文字を増やすことはやめて頂きたい。


一言多いってこういう事をいうんだ。


そんな来月子供が生まれる彼女とは今後もう二度と会うことも連絡を取ることも無いだろう。


LINE以外の連絡先を知らないのでブロックしたからもし次連絡するならSNSを巡回して探すしかない。


この時代、相手のSNSを調べることは容易くできる。


Twitterは匿名でやっていることが多いがInstagramやFacebookは本名でやっていることが多い為、ローマ字で打てばまぁまぁ見つかる。


Facebookは最近の子はしていないことが多いのでmixiででも探そう。


メッセージを送り伝える事はできるだろう。


一方的な相手に向けての発信である。ここまでいくと若干のストーカー要素があるから注意しなくてはならない。


などと考えたところで彼女の苗字がわからない事に気がついたからもう交わる事はないんだなぁと思った。


「子供が生まれる」との事だったが相手はいるのだろうか、もし結婚するなら「結婚するし来月には子供生まれる!」っていう送ってくるんじゃないかって思った。少しだけ気になったが関わったところで何も出来ないから遠くから幸せを願う事にした。元気で立派な母になってください。


これを読む時があれば貴女の幸せを願った人がいたと思ってください。


さようならアキちゃん。


別れの挨拶はしていないけどこうやって相手に別れを伝えないまま二度と会わなくなる人が増えた。


今はもう会わなくなった人にさよならと伝えたい。


さよならなんて小学校の帰りの会の挨拶でしか言ったことが無いかもしれない。


さよならで別れの挨拶をしてみたい。この先も多くの別れがあるだろうから一度くらい笑い合ってさよならって言ってもいいだろう。


先月、吉祥寺で会った彼女とはもう連絡が取れないしもう二度と会えない。


彼女の名前が今は思い出せない。


微かに覚えているのは彼女が緑色のネイルをしていた事くらいだ。


別れ際は「またね、次は美術館に行こうか」とかだった気がする。


結局、その約束は叶わなかった。少しずつ彼女の顔を思い出せなくなるだろう。


マスクを外した時にほっぺが想像よりもぷっくりしていたことが可愛いと思ったこともいつか忘れてしまうのかなと思うと少し寂しい。


あ、やっぱり好きだったのかも知れない。好きって気持ちに今更になって気が付きたくなかった。


恋をしていると幸福な気持ちよりもネガティブを産むことの方が多い。


好きで好きでたまらないって思った人と付き合えない人生を歩んできた。


振られる覚悟でダメ元の玉砕覚悟で告白を出来る人が羨ましい。


大抵、振られると思うけど、自分の気持ちを100%相手に伝えることが出来る人って中々いないと思う。


中学生の時にそんな人がいたがその人が最後だった。


大人になると安パイな告白しかしないのか。


私もなんとなく「付き合おう」と口に出して付き合ってきた。


その時に「好きだから付き合おう」って言えていないし最初は相手のことを本気で好きではない。


ただ居心地の良さ、どれだけ自分が自然体で自由でいて相手が受け入れてくれるかで相手を選んでいると思う。


結局は自分が好きなんだ。自分より好きになる人と出会いたい。


ここでの好きは性的興奮をしてsexをしたいって気持ちが好きに変換されていたのかも知れない。


やりたいって気持ちよりも一緒にいたいって気持ちが好きって事に気が付くのに時間がかかった。


異性に対する恋愛の好きか友情としての違いは相手の容姿で決まると思う。


失礼だな。それで相手の容姿がアレでも仲良く友情を育むなら相手の性格が自分に合っているんだろう。


不細工は面白さと優しさ(都合の良さ)で勝負しないといけないからって事ももちろんあるだろうが。


本当に人に言えたことではないし、吉祥寺の彼女にもう連絡しても返ってこない私は容姿も性格もお気に召してくれなかったんだろう。


ただただ、落ち込んできた。


なぁ頑張ろうな。


また嫌なことを考えてしまった。


今日がいい日になることがないだろう。


昨夜の自分の責任を取る為にも元恋人への返信を考える事にする。

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