第14話飯田と名古屋へ
「別れた」
「いつ?」
「3ヶ月前」
「えっ?」
「彼が出来たけど1週間もたなかった」
「相手は誰ですか?」
「ああ、知らなかった?」
「はい」
「新橋病院の志村先生」
「はいっ?知らなかった」
「うふふ、亮はそこのところ鈍いんだね」
直子はケラケラと笑った。
~~~~~~
亮は7時半に東京駅の待ち合わせ
場所に着いた。
「おはようございます」
「おはよう」
「今日はお一人ですか?」
亮はボディガードが居ないのに気が付いた。
「大丈夫だよ、歌舞伎町に比べて安全だ」
「そうですね。弁当を買ってきます?」
亮は急いで「カニめし」と「カニいくらホタテ弁当」
を買ってきた。
「カニ食べられますよね」
「ああ、大好きだ」
亮は新幹線が走り出すとすぐに弁当を開けた。
「うむ」
「飯田さん、どちらが好きですか?」
「カニいくらホタテ弁当がいい」
亮はニコニコ笑って飯田の前に置いた。
朝8時の新幹線はサラリーマンばかりで
名古屋に9時36分、大阪に10時30分到着は
日帰りでビジネスするのにはベストだ。
乗り物が好きな亮は新幹線の乗り心地に
ウキウキしてスピードが270㎞になった時は
ニコニコ笑った。
「ちょっといいか」
「は、はい」
「まずは名古屋化学の件は礼を言っておく。
私は名古屋化学の株をけっこう持っていたから
良い情報だったよ。」
「儲かりました?」
「うん、かなり後で小遣いをやろう」
「良かった・・・」
亮は世話になった飯田が儲かった事が嬉しかった。
「亮、名古屋人は性格が悪いと言われるのは
中々よそ者を受け入れないんだ。だから名古屋で
成功したらどこでも成功すると言われてる」
「聞いたことあります。ケンタッキーの1号店舗は
散々だったそうですね」
「ああ、ただ一度受け入れると大事にしてくれる。
ケチだけど見栄っ張りだから高級美容院も
信頼を受ければヒットするだろう」
「わかりました。飯田さん詳しいいですね」
「私は今の瑞穂区出身なんだ」
「どんなところですか?」
「下町だよ、雁道商店街が風情ある」
「そうですか・・・」
「それで今から行くのが私の会社だ」
「えっ?そうなんですか」
亮は飯田の事を全く知らなかった。
「普段は取締役役に任せきりだが基本
週一、多くて週二名古屋に来ている」
「亮、だから時々私と一緒に
名古屋に来て欲しい」
「わかりました」
「ずいぶん返事が早いな」
「はい、ひつまぶし、みそかつ、
味噌煮込みうどん、手羽先
をご馳走してください」
「食べ物か」
「もちろんです、食べ物は世界中通じる文化です」
「ああ分かった、ただ味仙の台湾
ラーメンは辛いからよしておけ」
「はい、了解です」
亮は飯田の貧しい子供からの
話を聞かされていった。
しかし、飯田のビジネスに関する考え方は
学校で学ぶ経営学と違った泥臭い、
まさに商売と言う考え方だった。
亮は飯田を改めて尊敬した。
「飯田さん、やはり僕が老後を面倒を見ます」
「ありがとう、亮」
亮と飯田が名古屋駅に着くと
駅前に黒い車が待っていた。
「亮、これに乗るんだ」
「はい」
亮と飯田は栄にあるビルの20階にある
IIDと言う会社の会議室に行った。
そこには、五人の男が座って居た。
「お疲れ様です」
男たちが立ち上がって飯田に頭を下げた
「うむ」
長テーブルの一番奥に飯田が座りその脇に亮が座った。
「この男、團亮が私の跡継ぎだ。これからよろしく頼む」
「えっ?」
男たちが驚いて亮の顔を見た。
「社長!」
「なんだ、異論があるのか?」
飯田がきつく言った
「いいえ」
「この團亮の経歴書と謄本がある」
一番近くにいた山本がそれを受け取り
亮の経歴書を見て目を丸くした。
「どうだ文句なかろう、それに亮は
香港の財閥ユニオン・チャイナ・
グループ劉一族と繋がりが有る」
「ユニオン・チャイナ・グループ」
山本は膨大な力を持っている組織に
知っており亮に対して頭を下げた。
「飯田さん、状況が読めないんですけど・・・」
亮は心配そうに飯田に聞いた。
「この連中は私の会社IID飯田商会の部下だ」
「専務の山本です」
「常務の鈴木です」
「同じく伊藤です」
「財務担当取締役田中です」
「取締役の中村です」
「社長の私が東京なのにも関わらず
しっかり利益を出している。
みんな、素晴らしい部下だ」
「ありがとうございます」
五人が飯田に向かって礼をした。
「さて、亮にはこの会社の取締役に入ってもらう。
さて今回私がこちらに来たのは、
栄にある美容室マテリアの集客を上げてもらう事だ」
「はい?」
五人が不思議そうな顔をした。
「亮、この先はお前が説明しろ」
「はい」
亮はマテリアのコンセプトと美容枕、
コラーゲン風呂の関連性の話をした。
「すみません、飯田商会さんのメインの仕事は?」
「私どもは不動産、不動産管理、
清掃業、飲食店経営、
物販、ネット関連、等々を経営しています」
山本が説明した。
「凄いですね」
亮はその後各部門の話を聞いて行った。
「わかりました、マテリアの件は我々で検討します。
それと美容枕は購入販売できますね」
山本が興味深く聞いた。
「もちろんです。石橋商事から連絡をさせます。
中身の漢方はDUN製薬から供給します。
もちろんシャンプーも」
「ありがとうございます」
取締役役の反応が良く亮はホッとした。
「飯田さん、
名古屋には何回くらい来るんですか?」
「週1回の会議の時だ」
「結構ハードですね」
亮は飯田のエネルギッシュな活動を尊敬した。
「だから、お前さんに手伝って
貰いたいんだよ。私も歳だからな」
「はい、わかりました」
「さて、お昼でも食べるか?」
「はい」
亮の頭にはひつまぶしが
あった。
「みなさんも、ご一緒にひつまぶし食べましょう」
亮の言葉に五人は唖然としていた。
「ほら、亮がそう言っているんだ、行くぞ」
七人はビルの地下にある鰻屋に入った。
座敷のテーブルに座ると伊藤と
中村に挟まれて、話を始めた。
「團さん、ナチュラルグリルの
運営に携わったそうですが?」
「はい一応」
「社長の息子さんが友人なので」
亮が謙虚に答えた。
「團さん、友人が多いんですね」
「そうでも無いですよ。信じられる友人は、中々」
亮は中村の問に答えた。
亮はひつまぶしが来ると面々の
笑みを浮かべて食べていた
「飯田さん、美味しいですよ。
これなら毎週でも来ます」
あまりにも亮が喜ぶので五人は
亮に親しみを感じていた。
名古屋人は正直者を好む傾向があるのを
亮は知らなかった
「飯田さん、この後マテリアに
行きたいんですけどいいですか?そこで飯田さんの
ヘアメイクしてもらって下さい。
もちろん僕が費用を出します」
「それはありがたい」
亮と飯田は取締役に見送られマテリアに歩いて行った。
高級感のある内装は名古屋にあっているが、
美容師の服装は地味な感じがしていた。
「お母さんどうしますか?」
亮は親子を装っていた
「そうね…」
飯田が髪を撫でると亮は受付で指示をした。
「カラーリングと軽くカットお願いします」
「はい、かしこまりました」
亮は待っているあいだ美容師の会話、
行動、服装をチェックして行った。
そこには高級感が微塵もなく、
店長の指示も無いようだった。
「まさか?」
亮は外に出てジュディに電話をかけた。
「亮です」
「どうしたの?」
「名古屋の店長の経歴分かりますか?」
「うん、いいわよ。すぐに送るわ」
「お願いします」
10分後にジュディからメールが送られてきた
その内容は羽山和夫38歳
神奈川県生まれ
亮は店長が神奈川県出身と聞いて、
従業員に馴染んで居ない事に気がついた。
お互い無視し合っている雰囲気
は否めない。
さらに、亮はブリリアンスショーの
取締役統括本部長の新藤好美に電話を掛けた。
「お疲れ様、團です」
「社長、お疲れ様です。今日は?」
「名古屋店を締めたのはいつでしたっけ?」
「今年の秋です」
「在庫は?」
「バーゲンの後、来年の春に型落ちの販売を
する予定で倉庫にあります」
「在庫票を僕の方にメールをください」
「かしこまりました」
亮は続いて鈴木妙子に電話を掛けた。
「團です」
「お疲れ様です」
「鈴木さんにデザインのお願いが有ります」
「なんでしょうか?」
「高級美容室のユニフォームデザインをお願いします
スカートは膝丈、上は半袖、襟開き、
白と紺の二色がメインでとりあえず
イメージデザインでお願いします」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます