第10話絵里子の秘密

「昨日はごちそうさまでした」

「うん」

内村は亮に椅子に座るように手を向けた

「はい、失礼いたします」

「どうだ、葉子君立派になったろう」

内村は亮の気持ちを読んでいた。


「はいとっても」

「それで新しいビジネスとは?」

「はい、経営者が年をとって

売り上げが落ちたスナックを

チェーン化していく計画を立てています」


「それでどれくらいを目標にしている?」

「1店舗あたりの売り上げは1日10万円

100店舗を目標にしています

「月商3億か利益率は?」

「25%です」

「年間9億か」

「はい」


「亮君、君がやる仕事じゃないだろう」

「いいえ、僕がやりたいのは口コミなんです」

「ん?」

「スナックを利用した口コミなんです」

「なんだ」

「新製品のお酒やインスタント食品、酒の肴の

アンケートも取れますし、

一番情報がとり難いと言われている

中年の男性への販売サンプリングもスナックで出来ます。

そしてスナックで出す軽食は冷凍食品を使います」


「なるほど、中年男性か。それに冷凍食品か」

「はい、中年女性は美容院に置いてある女性自身か

週刊女性に掲載すれば効果があると

言われているんですが。


男性は美容院と言う時間がかかる場所が

無いので媒体が分散してるのです」

「なるほど、今床屋と言えば10分で終わってしまうからな」

「つまり、スナックのママが営業マンとなるんです」

「そうなれば、別な収入が店に入ってくるわけか」

「はい」


「しかし、スナックが何百軒もある場所でそんなに

客を来させる事が出来るか?」

「はい」

亮は自信を持って言った

それは、亮は誰も作る事のできない

媚薬を持っていたからである

「では、お手並み拝見と行くか」

「はい」

「その代わり、うちが持っている

スコッチウイスキー、

ワインは格安で供給しよう」


「お願いします」

「ところで運営母体は?」

「新会社を設立する予定です」

「設立メンバーは?」

「一応飯田さんと美也子さん」

「後は?」

亮は戸惑ったように小さな声で言った。

「私です」

「あはは、それなら私も株主で参加しよう」

「本当ですか?」


「当たり前だ、君が作る会社ならいくらでも

参加する連中が居るだろう」

「そうですかね」

「まだ自分がわかっていないようだな」

「はあ」

「さて、理恵たちが待っているから行くか」

「どこですか?」

「食事だよ」

「はい」

亮は社長室から地下の駐車場へ降りると

待機していた車に亮と内村が乗り

前の席には葉子が乗って来た


「あれ、葉子さんも一緒?」

「はい、ご一緒させていただきます」

葉子は上品に笑った


車が走り出すと亮が聞いた。

「社長そういえば一葉女子学園出身の社員は

何人くらいいらっしゃいますか?」

「ん?」

「秘書課には三人居ますが」

葉子が返事をした

「なんだ?おとといそこの理事長と会ったぞ」

「いいえ、ただ美人が多いと聞いていたので」

「松平さん、それは当たっています。

秘書課の三人はモデル級ですよ」


「そうだな、でも私は葉子君がいいな、あはは」

内村はおどけて見せた

三人は汐留のホテルRのレストランに

着くとボーイが奥の席に案内した

「いらっしゃいませ」

「来ているかな」

「はい、おそろいです」

個室の部屋に入ると理恵が亮に抱きついた


「亮」

「久しぶりだね」

「うん、元気していた?」

「うん」

それを見てうれしそうに笑っていた

母親の杏子は離婚した夫と

葉子の関係は知る由も無かった

「あの~昼からこんなところで食事ですか?」

「まあ、ランチだからそんなに重くないよ」

「あっ、そうですか」

「亮、この後は?」

理恵が聞いた


「えっ、会社に戻りますよ」

「そう、お買い物付き合って

もらおうかと思っていたんだけど」

亮は困ったような顔をしていた

「明日ならいいけど」

「うん、じゃあ明日」


「松平さん、美宝堂に案内してくださる?」

杏子が言った

「は、はい。わかりました」

姉たちがいる美宝堂に案内すると言われて

亮は仕方なしに承諾した

「お父様いいでしょ」

「ああ、いいよ」

亮は何がいいのかわからなかったが、この家族の

じわじわと迫ってくる感じが怖かった

葉子は亮の困った顔を見て笑っていた。

~~~~~~

亮は食事が終わると新宿へ向かい

飯田のところへ出向いた

「謄本持って来ました」

「うん」

「五島の内村さんの計画を話したら

株主になっても良いそうですが、どうしますか?」

「それはお前が決める事だ」

飯田はうれしそうに笑った


「はい、ではお願いしようと思います」

「そうだな、がんばれ」

「はい、飯田さんの資金は会社のほうでお借りするとして、

資本金はどれくらい要りますかね」

「そうだな、5000万円も有ればいいだろう」

「そんなにですか?」

「あはは、お前さん何もわかっていないようだな」

「は?」


「私が1000万円」

「はい」

「美也子さんが1000万円」

「お前さんが1000万円」

「はい?」

「後は美也子さんと内村氏と何人かで

株主をすぐに探しておきなさい」

「わかりました、誰にしようかな?」

亮は考えていた。


「絵里子ママにもお願いしたらどうだ」

「絵里子ママお金あるのかな?」

「おまえさん、何も知らんのだな」

「はい?」

~~~~~~~

亮は飯田の事務所を出ると

絵里子に電話をして新会社の話をした。

「昨日話したマテリアの件大丈夫ですよね」

「はい、今出かけるところよ」

「了解です」

亮は絵里子と待ち合わせをした銀座四丁目で待った。

「絵里子さん、会社の出資金でお願いできますか?」

「良いわよ1000万円でいいのかしら?」


「そんなにですか?」

「うふふ、私銀座のクラブ蝶のママよ

それくらい持っているわよ

それに私は黒埼憲治の遺産をもらったの」


「すごいですね」

「旧愛宕証券の株よ。その株を私が受け継いでいるの」

「そうなんですか」

「それが、今愛宕ホールディングスになって

関連会社をコントロールしているのよ」

「すごいですね」

亮はあまり興味が無いのでそっけない返事をした


「うふふ、亮その返事、ピンと来ないみたいね」

「はい。まあ」

「ねえ、本当に興味ないの?」

「何がですか?」

「この世界のトップに」

「はっきり言ってないです」

「そうか」

絵里子はちょっとがっかりしたそぶりを見せた


「僕は僕の周りの人たちが幸せになればいいんです」

「そうね、私も?」

「もちろん、絢香も」

「うれしい」

「ところで絵里子さん、淳子さんと

雅美さんちょっとおかしいですよ」

「やっぱり」

「気がつきました?」


「あなたに気が行ってないのよね、

他の娘たちはあなたに夢中なのに」

「はい、心が無いロボットみたいな

感じがするんです」

「そうね、どうする?」

「今度森さん連れてお店に行って良いですか?」

「あの探偵さんね。もちろんよ」

「あの、安くしてくださいね」


「あなたの飲み代なんていらないわ」

「でも・・・」

「いいのよ、私の店なんだから」

「ありがとうございます」

亮は頭を下げた

「それで。彼女たち調べるの?」

「はい、なにか気になるので」

「そうね、何でも無いのに一文字理事長の

手前彼女たち首に出来ないし」

「はい」


~~~~~~

亮と絵里子が銀座マテリアに着くと

店にはちょうどジュディがいた

「あら、松平さん」

ジュディが声をかけた

「ああ、こちらクラブ蝶の絵里子ママです」

「いつもありがとうございます。ジュディヤマトです」

絵里子はジュディに丁寧に頭を下げて亮の耳元で囁いた


「彼女と出来ているでしょ」

「は、はい」

「うふふ、まあ良いけど。

セットが終るまで待っていてね」

「はい」


亮とジュディは店の奥の事務所に入った

「明日にでも伺おうと思っていたんです」

「名古屋店のプランの件?」

「はい、それと岡本さんの件も」

「どうしたの?」

「岡本さんの経歴詐称です」

亮は森が作った報告書を見せた


「経歴を悪く書く人は始めてみました」

「はい。かなり落としているわね」

「はっきり言って怪しいです。

彼女なら国家公務員試験に

受かってもおかしくない」


「そうね、この経歴でうちの

会社の秘書はおかしいわ」

「やはり、彼女から情報がもれた

可能性がありますね」

「どうする?辞めさせる?」

「もう少し泳がせて見ましょう。

黒幕がわかるまで」

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