第5話一文字の策略

「はい、いい事だわ」

「じゃあ」

亮はベッドから出ると服を着はじめた

「今日はありがとう」

「久しぶりにジュディを抱けてうれしかった」

「はい、やはりエッチしないと

心がつながらない感じ」


「S○Xは愛情と信頼感を受ける為に週に

1回しなくてはいけないそうです」

「じゃあ、週一しなきゃね」

「ははい」

亮は自分で言って墓穴を掘ってしまった。


「実は大阪店も名古屋店も亮に相談し難くて

勝手に決めちゃってこの有様」

「すみません」

「ううん、戻ってきてくれたから」

「じゃあ、また今度の何曜日?」

「火曜日、うふふ」

ジュディは亮をドアの前で見送った。


亮が8時過ぎに蝶へ行くと

美也子と絵里子が待っていた

「いらっしゃい」

美也子は腕に抱きついて店の奥の

席に座った。


「久しぶりね」

「はい、早速だけど例のママ派遣の仕事で

明日新宿へ行きましょう」

「誰かと会うの?」

「はい、歌舞伎町のドンです」


「はいっ?やくざ?」

「大丈夫、女性ですから」

「ああ、よかった」

そこへ絵里子ママがやってきた


「ママ、明日歌舞伎町のドンと会うんだって」

「えっ、飯田さん?」

「ママ知っているの?」

「もちろんよ、名前だけはね。うふふ」

絵里子は飯田を亮に紹介した事を内緒にしていた。


「亮、元気になったの?」

「はい」

「よかったわ。来年も銀座コレクションやるつもりで

電広の島崎さん動いているわよ」

「はい、大丈夫です。シンディに連絡してあります」


「亮、今までどうしていたの?」

「はい、毎日がやる気がなくて」

亮は警察の訓練を受けていた事を秘密にしていた

「みんな心配していたわよ」

「すみません」

亮が謝ると美也子が立ち上がろうとしていた。


「じゃあ明日」

亮が不思議な顔をした

「あれ?もう終わり?」

「ごめんね。向こうのお客様に呼ばれたの」

「ああ、そうですか」

「一文字大介って聞いたことある?」

「だれ?」


「一葉学園の理事長、2代目だから

若いのよ31歳だって」

「あの一葉学園か、うちの会社にも出身者がいます」

「亮、TV局の人気アナウンサーや

モデルも一葉学園出身者が多いのよ」

「そうなの?」

「だって文化祭は人気で入場制限があるんだから」


「あはは、みんな美人に弱い」

「うふふ」

「じゃあ僕は帰ります」

「ごめんね」

美也子が謝ると絵里子が

立とうとしている亮を止めた。

「まだだめよ」

「はい?」


「最近、絢香がパパに会いたいと

言ってうるさいのよ

ディズニーランドに連れて行ってあげて」

「はい、もちろん行きます」

「だから、私が相手するからいなさい」

「あ、はい」

「まったく、今まで何をしていたのよ」


「仕事です」

「なんの?」

「色々、実はスパイの訓練を受けているんです」

「あはは、スパイかっこいいね」

絵里子は亮の言う事を信じていなかった。


「でも、あそこの一文字さんの方が

花があるような気がするけど」

「あの人はだめよ。冷たい感じがする」

「それで、ママに相談があったんですよ」

「はい、それなのに帰ろうとしていたの?」

「いいえ、仕事の話だったので昼間

相談しようと思っていたんですけど」


「良いわよここで」

「はい」

「それで、今度は何をするの?」

「実は、ジュディの経営している

マテリアの件で」

「はい?どうしたの?」

「私も順子ママも行っているわよ」

「はい、東京店はうまく行っているんですが。

名古屋と大阪が」


「ああ、チェーン化しようとしたのね」

「はい」

「チェーンはプロがいないと難しいわね」

「はい、そうなんです」


「それで、私何をすればいいのかしら?」

「はい、銀座OGの女性たちが

名古屋、大阪にいないかと思って」

「うふふ、そのラインか」

「だめですか?」

「大丈夫よ、名古屋へも大阪へもいい所へ

お嫁にいった娘も知っているわ」


「そうですか」

「任せて」

「ああ」

突然絵里子が声を上げた

「どうしました?」

「亮、またバージョンアップしたね」

「えっ?」

「近づいたら感じちゃった、今度しない?」


「もちろんです、ディズニーランドのホテルに

泊まりで行きましょう」

「ありがとう亮、今まで

言わなかった事が有るんだけど」

「はい?」

「スポンサーの話だけど」

「どんな男性だったんですか?彼って」


「すごい人、彼に逆らう人は誰もいなかったわ」

「えっ、やくざですか?」

「そうね、それ以上かも」

「国会議員ですか?」

「ううん。いわゆる、影のフィクサー」

「誰ですか?有名な人?」

「黒崎憲治よ」


「黒崎憲治って関西経済のドンじゃないですか」

「そうよ、私が黒崎の愛人」

「それで蝶はあんなに経済界のお客さんが多いんですね」

「はい、みんな黒崎に気を使ってきてくれたわ」

「でも、今のお客さんは絵里子さんの実力ですよね」

「ありがとう」

絵里子は亮の肩に顔を寄せた。


「私の事嫌になった?」

「いいえ、黒崎さん亡くなったので浮気じゃないですよね」

「あはは、そうよ」

「じゃあ、大丈夫です」

「よかった、話したい事あったんだけど。いいわ」

「なにか?」

「いいの、また今度ね」

「はい」

一文字のいる席には一文字の両脇に

美しい女性が二人座っていた

「いらっしゃいませ、一文字さん」

美也子が挨拶をすると二人の女性を見た。

「おお、すまないね。女性を連れてきてしまった」


「あら、時々連れて見える方がありますから大丈夫です」

「この二人はうちの学校の卒業生なんだが、

社会勉強に銀座のホステス志望なんだ」

「あらまあ」

「だから、銀座で1.2を争う

蝶を見せてあげようと思ってね」

「よろしくお願いします」

二人は声をそろえて言った

「あの、お二人の仕事は?」

「二人とも1部上場会社の派遣社員だ」

「わあ、すごい」

美也子が驚いたふりをしていると

一文字が二人に聞いた。


「どうだ?店の雰囲気は二人とも」

「はい、すごくえらそうな方がいますね」

「そうだろう。一流企業トップの交流は

夜銀座で行われると言っても過言ではない」

「そうなんですか?美也子さん」

一人の女性が美也子に聞いた

「それはちょっとオーバーだけど、

それなりの地位の方が多いですね」

「わあ、素敵!」


「でも、大変よ、毎日の出来事を調べて

話題つくりしなきゃいけないし。

企業の不祥事を話題にすると関連会社の

可能性があるから慎重に話さなくちゃいけないのよ」

美也子はホステスの厳しい部分を説明した

「そうだな、いつここで敵対する

企業同士が出くわすかわからんな。

あはは」

一文字は二人言い聞かせるように言った


「うふふ、その覚悟があるならママに紹介いたしますよ」

美也子は立ち上がって亮の席へ来た

「ママちょっと」

「はい」

「じゃあ僕は帰ります」

亮は立ち上がった


「はい、帰っちゃうの?」

美也子が少女のように甘えて言った

「うん、じゃあ」

「じゃあ、明日ね。亮」

美也子が小さく手を振った


美也子と絵里子が一文字の席に来ると

美也子は二人の女性を紹介した

「ん?ママ今帰った若いのは何者だ?」

「どうしたんですか?」

「いや、奥の席から出てきたから」

「野暮なことは言ってはいけませんよ、一文字さん」

「そうだな」

「はい、彼のお父様からのお付き合いです」

「そうか、ボンボンか。俺もそうだけどな。あはは」

「二人に覚悟があるなら、ぜひお願いしたいわ」


絵里子ママは一文字にそう言うと明日二人がまた来る

約束をして絵里子と一緒に席を立った

「なあ、美也子。この後食事へ行こう」

「はい?どこ」

「どこへでも連れて行くぞ」

「そうね、明日が早いからまた今度にしましょう」

「そうか」

「でも、一文字さんはおもてになるでしょう。

私のような女を誘わなくても」


「いや、作られた女は楽しくない」

「作られた女?」

「いや、こっちの話だ」

「あ、そうなの」

「それよりさっきの若造気になるな」

「どうして?」


「人を引き付ける魅力がある」

「ちょっと見ただけでわかるの?」

「ああ、学校をやっているとな色々な人と会うから」

「じゃあ、また来れば会えるかも知れません、

その時はご紹介しますわ」

「うん、頼む」

~~~~~~

一文字が席を立つと五島商事の内村が来た

「よっ、美也子ちゃん」

「あっ、社長」

内村は相変わらず飄々として答えた

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