第11話 父エルクカイン
私はサム兄さま以外の兄姉にサム兄さまの話をし、そしてお父様にサム兄さま以外の兄妹みんなで会うことにした。
ガンフ兄さまが代表して、ノックをする。
「父上、ちょっとよろしいですか?」
中からお父様の声が聞こえた。
「ガンフか。どうした?入ってこい。」
「失礼します。」
そう言って私たちは揃って中に入る。
「どうした、みんな揃って。」
「実は、父上に話があって……。」
そうお兄様が言っている間に、お父様に【鑑定】を使う。
――――――
エルクカイン・ウォスター・ヴァルクハイン
年齢:35歳 性別:男性 レベル:25
肩書き:ヴァルクハイン男爵
HP:405 MP:10
筋力:7 器用度:4 敏捷力:5 知力:5 精神力:5 体力:6 魔力:1
職業:騎士Lv7
スキル:槍Lv5 騎乗Lv7 剣Lv4 盾Lv2 礼儀作法Lv5 指揮Lv6 回復魔法Lv2 書類整理Lv5
信頼:98 忠誠:- 向上心:62 不満:30 諦め:12 邪心:0
生まれ:ヴァルクハイン男爵家
――――――
おお、お父様はまともでした。これなら話をしやすいですね。
兄姉さまがこちらを見ているので、私は頷いた。
「……そうか、よかった。」
お兄様はそう呟くと、お父様に向かってこう告げた。
「実は、フィーネに領主の仕事を任せてもらえないかと頼みに来ました。」
「!!」
お父様は目を見開いて驚愕されました。と言うか、お兄様はいろんなところをはしょりすぎです。
仕方ないので、私は一歩前に出て、お父様にすべてを話そうと思います。
「お父様、私に【鑑定】のスキルが目覚め、能力を見ることができます。お父様は[騎士]の職業で、あと普段使っておられませんが、回復魔法や盾もお使いになられますよね。魔力が低いのでMPが少なく、回復魔法は気休め程度なのでしょうが……。このように見ることができます。そして私には3つの職業があり、そのうち一つが[領主]です。【人材発掘】【人材育成】【領地経営】【領地開発】のスキルもチート――――常識はずれの高い能力で持っています。この力を使ってこのヴァルクハイン領を裕福な領地にしたいので、権限を私に預けてもらえませんか?
まあ、いきなりこんな話をしているので、ゆっくりと頭を整理してください。」
しばらく静かになる執務室。
そうしていると、お父様が口を開いた。
「……フィーネ、これはわかるか?」
そう言って私に渡したのは何かの書類だった。よく見ると、予算案でした。なぜ私にこれを?
すこし見てるとおかしい部分に気づきます。
「お父様、この予算、多すぎませんか?半分あれば十分ですよ。それに、こっちは予算が少なすぎるので3倍くらい回してもいいかと。」
「「「…………。」」」
あれ、みんな固まってますね?
「どうしましたか?」
「フィーネが規格外なのはわかったし、領主としての力があるのはわかった。」
お父様は眉間をほぐしながら話す。
「――――して。お前は、この領地を裕福にして何がしたいのだ?」
「何が、ですか――――、んーお兄様の婚活?」
ブッフっと後ろから笑いが漏れた。犯人はシア姉さまだろう。お父様は唖然としている。
「まさか、領地経営をしようとするものに聞いて最初に出る答えではないな。」
「一番最初の目標がそれでしたからね。私は陞爵には興味ないですし、民が幸せに暮らせる土台を作れればそれでいいと思います。まあ、形を整えてお兄様に丸投げしてもいいのですが。」
「いや、俺は予備で構わんよ。フィーネが領主になり俺が補佐をする方が回るだろう。」
「ですがお兄様、そもそも我が国では女性が爵位を得るのは後継者がいない場合だけですよ。今回は無理です。」
「なら、お前が爵位を得るほどの功績をあげればいいのではないか?」
なるほど、そうなれば確かに私が当主にはなるけど。
「それってお兄様の婚活に影響でない?」
「いや、問題ないと思うぞ。」
「どうして?」
だって、お兄様は当主の親族にしかならないんじゃ……。
「そりゃあ、お前がとんでもない功績をあげて、お前と同世代の男子がいなかったらどうすると思う?」
「え、どうって……、あ。」
「そう、俺たちに来るんだよ。」
「なるほど。」
うん、貴族ってすごい。
お父様は腕組みをして、
「まあ、領地経営はフィーネに任せよう。その方が良いみたいだ。予算案もお前の言う通りにしよう。」
と言ってくれた。
「ありがとうございます。あと、もう一件お話ししておかなければならないことが……。」
「なんだ?」
「実はサム兄さまのことなのですけど、自分がガンフ兄さまを差し置いて領主になろうとしています。」
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