第8話 長男ヴォルフガンフ

 シア姉さまとのお茶会の翌日、今度はガンフ兄さまとのお茶会です。ちなみに、シア姉さまは、早速槍を持って馬で遠乗りをしに行きました。



「ガンフ兄さま、お久しぶりです。」

「うむ、久しいな、フィーネ。」


 ガンフ兄さまは、王立学園卒業後、お父様の手伝いで領地経営を学んでます。王立学園でいい人を見つけたみたいですが、家の格が合わず、婚約できなかったとか。貴族って面倒臭いですからね。


「しかし、フィーネがお茶会を開いて俺を誘ってくれるなんて、大きくなったものだな。」

「ええ、私ももうすぐ7歳になります。」

「そうか。今日はどうしたんだい?」

「ええそうですね――――。」


 お兄さまに【鑑定】をかける。

 その結果は――――――


――――――


ヴォルフガンフ・ディルス・ヴァルクハイン

年齢:18歳 性別:男性 レベル:5

肩書き:ヴァルクハイン男爵子息(次期男爵)

HP:40 MP:5

筋力:4 器用度:4 敏捷力:4 知力:5 精神力:5 体力:4 魔力:1

職業:執務官Lv3

スキル:礼儀作法Lv2 適材適所Lv1 情報分析Lv1 一般知識Lv3 書類作成Lv1 剣Lv4 指揮Lv3

信頼:82 忠誠:- 向上心:60 不満:50 諦め:84 邪心:0

生まれ:ヴァルクハイン男爵家(長男)


――――――


 お兄さまは、バランスタイプですね。領主も十分こなせるようになるでしょう。我が男爵家を存続させるのなら。お兄さまのスキル傾向は”今ある人材を有効活用する”のに向いてますが、私の【人材発掘】と【人材育成】のスキルはこれを上回りますし、【領地経営】と【領地開発】のスキルがさらに押し上げます。私が見つけた人材を私が育成してお兄さまに采配してもらうのが最適ですね。さて、現状を考えるとお兄さまが諦めていることがなんなのか……、って””でしょうね。


「私は、お兄さまが何をしたいか……将来の夢を聞きたいです。」

「俺がか……。そうだな……、父上の後を継げるように――――――。」

「いえ、やるべき事ではなく、やりたいことです。」

「……やりたいこと。」


 考え出すお兄さま。もうひと押ししてみますか。


「そうです。好きな女性の前でカッコつけるためにどうしたいかです。」

「なっ!?」

「場合によっては力になれるかもしれないですよ。まあ、そのお方に婚約者がいるなら無理ですけど……。」

「えっ!?」

「私に3日前、力が現れました。その力を使えばある程度なんとかなりますよ。」

「はぁっ!?」

「お兄さまの能力は官僚向き……というか、司政官ですね。【鑑定】で見ました。」

「…………。」


 お兄さまは目と口を大きく見開いて唖然としています。まあ大分ぶっちゃけましたからね。


「ふぃ、フィーネ!」


 あることに気づき、周囲を見回すお兄さま。


「大丈夫です。そこにいるエリザはもちろん知っていますし、人払いは済ませています。」

「そう、なのか?」

「はい、フィーネ様が覚醒されたとき、その場にいて真っ先に教えていただきました。」


 お兄さまの呟きに、エリザが頭を下げて答えた。


「……そうか。この事は他には?」

「直接知っているのは、そこのエリザとシア姉さまです。今後、状況によって増えますが……。」


 お兄さまは少し考え、一つ聞いてきた。


「……父上には、伝えないのか?」


 お兄さまの言葉は理解できる。だけど……


「私の力は強すぎます。それに、私が持っている職業の一つは[領主]です。」

「!!」


 唖然とするお兄さま。


「そ、それは……。」

「ちゃんと準備してからじゃないとお父さまに言えないですよ。もし、万が一お父さまが欲や嫉妬を持ってしまったらと思うと……。」


 思わず手を頭に当て、ため息をつくお兄さま。


「……まあ、そうなる、のか?」

「そのために、まず、逃走ルートと手札を用意しないといけませんでしたから。」

「そこまでか。」

「ええ、すでにその準備は終わってます。」

「そ、そうか……。」

「一番怖いのは悪意ある身内ですから。まあ、これで万が一の場合、お兄さまに領主になってもらえますから安心です。」

「……一つ聞いていいか?」

「なんですか?」


 お兄さまは一口紅茶を口に含み、喉を潤して


「もし、領主になるとしたら、この地をどうしたい?」


 私は少し考えて……。


「……そうですね、交易都市ですね。他国との交易をするのに悪くない場所ですし……。」

「……そうか。では、お前なら、高い爵位を持つ方と結婚できるか?」

「拒否しますね。強引に決められるのなら、お父さまやお兄さまから爵位をぶんどって結婚相手は自分で決めると言うか、逃げます。」

「は?……いやいや、俺がなんだが……。」


 ああ、そういうことでしたか。


「そうですね、お兄さまの思い人の家の爵位次第ですが、不可能ではありませんね。ただし相思相愛ならという前提がありありますが……。」

「それなら問題ない。俺とリーナは思いあっていた。」


 興奮して立ち上がるお兄さま。


「必要なら父上の首を――――。」

「落ち着いてください、お兄さま。それはお父さま次第です。」

「――――そうか……。」


 シュンと項垂れるお兄さま。


「で、そんなお兄さまの心を射止めたリーナ様はどんな方ですか?」

「ああ、リーナ――――エスフィリーナ・メフィーリア・ロウサインは、我がロウサイン王国の第三王女だ。」


 …………はぁ?

 思わず思考停止してしまった。我が国の第三王女ですか……。確か第三王女殿下は今年16歳なので、お兄さまと直接の接点はないはずですが……。


「お兄さま。どうやって知り合ったのですか?」

「ああ、それはシアのクラスメイトだったんだ。それで、シアに会いに行ったとき知り合った。」

「おお、シア姉さまの同級生でしたか。」


 これはシア姉さまに確認をとりませんといけませんね。


「馴れ初めはいいです。まー王女殿下が輿入れしたくなる領地にすれば可能ですね。」


 しっかりとのろけ話をガードして、提案してみる。


「そんなことできるのか?」


 ふにゃっとした顔でのろけ話をしようとしていたお兄さまは、真面目な顔に戻り疑問を投げ掛ける。


「ええ、意外と考え方は簡単ですよ。北の魔物のすむ森の向こうのベルシア王国と交易路を作ればいいだけですから。あとは、王都への最短ルートの作成ですね。これも西の樹海を抜ける道を作ればいいですね。」

「だが、それだと領地を取られるのじゃあ?」

「いえ、交易の契約を領主レベルで済ませてから国に報告すればいいです。そうなれば陞爵はあれど、領地没収は難しくなります。」

「だが、国家反逆にとられないか?」


 確かにお兄さまの懸念もわかる。だけど……。


「大丈夫です。現在ベルシアの製品が我が国に入るのに3つの国を経由しています。それがない分安く、早く買うことができます。ベルシアが万が一攻めてきても、我が領地自体旨味がないので、今はあまり意味がないです。ですが、交易路を作ってしまえば、我が男爵家の手柄です。そして、ある程度発展したら王家はうちとの縁を求めるでしょう。その時は」

「リーナとの婚姻を求めるわけか。」

「ですので、お兄さま。私がこの領地を采配できるよう協力していただけますか?」


 お兄さまはいい笑顔で、「もちろんだ。」と言ってくれました。


 ちなみに、お兄さまに私のステータスを教えると、顎が外れんばかりに驚かれました。当然ですね、チートですから。




 翌日、朝のうちにシア姉さまにガンフ兄さまと王女殿下について確認したら、相思相愛なのは確認できました。というか、シア姉さまと王女殿下が大親友でした。なるほど。

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