第7話 長女レティシア
翌日からは兄姉達とお茶会をすることにした。お兄さまお姉さまの能力も把握しておきたいですし。
まず最初に会えたのは長女のシア姉さまです。
「シアお姉さま、お久しぶりです。」
5日ぶりに姉妹に会う。シア姉さまは、政略結婚を願われて王立学園に行ったりしましたが、その勝ち気な性格からか婚約者はおらず、色んなお茶会や夜会に出席していい人がいないか探しています。
「いやー久しぶりだねフィーネ。元気にしてた?」
「ええ、元気です。」
今のうちにお姉さまの【鑑定】をしておきましょう。
――――――
レティシア・シータ・ヴァルクハイン
年齢:16歳 性別:女性 レベル:4
肩書き:ヴァルクハイン男爵子女
HP:32 MP:0
筋力:6 器用度:5 敏捷力:4 知力:5 精神力:3 体力:4 魔力:0
職業:騎士Lv1
スキル:騎乗Lv1 槍Lv1 指揮Lv1 礼儀作法Lv4 情報収集Lv2
信頼:35 忠誠:- 向上心:58 不満:63 諦め:12 邪心:0
生まれ:ヴァルクハイン男爵家(長女)
――――――
お姉さまの職業がまさかこっちだったなんてビックリです。これは、男爵家にいてもらった方がいいですね。
「お姉さまは、元気でしたか?」
「んー、まーね。」
「そうですか。私は最近、特別な力に目覚めました。」
「……!?」
「お姉さまは、体を動かす方が得意ですよね。馬に乗るのも。」
「え、なんで……。」
「魔法は使えないですよね。」
「え、ええ。もしかして……。」
「はい、【鑑定】が使えます。他にもいくつかありますけど……。」
「そうなんだ……。でも、私なんかに教えてよかったの?」
「大丈夫です。ある程度準備をしてますから。もし、今、ここから脱出しなきゃならないとなっても、ある程度対応できます。」
「……フィーネ、あんた何歳だっけ?」
「6歳です。もうすぐ7歳になります。」
はぁ、とため息をついて、姉は紅茶を飲む。
「ホント早熟もいいところじゃない。で、私に何をさせたいの?」
「そうですね……、シア姉さまなら、騎士団長になってもらえるといいと思います。」
カップを置こうとして、止まる姉さま。
「えっ、確かに体を動かしたり馬に乗ったりするのは好きだけど、えっ?」
「お姉さまの職業は、[騎士]です。」
「き、[騎士]!?」
「ええ、ですので、ヴァルクハイン男爵騎士団の団長を目指してもらえればと思ってます。まあ、私が実権を持てたらですね。」
「ちょ、ちょっと待って。フィーネはどこを目指すの?」
「あー、私は職業が3つあって、そのうち1つが[領主]です。」
「え…………、ええーーーーーーー。」
まあ、そういうリアクションになりますよねぇ。
「私の力については、秘密にしてくださいね。」
「いや、まあ、そうなるけど。……それにしても、3つも職業があるなんて、ものすごく強そうね。」
「そうですね。能力値は差はないですけど、他のレベルは段違いですね。」
「そうなんだ。で、どう違うの?」
「能力値は、体そのものの数値と言った方がいいですね。力がある人は筋力が高く、頭のいい人は知力が高い。で、レベルは……職業やスキルの強さで、どれだけ技術があるかになりますね。」
「ふーん。で、私のレベルはどうなの?」
「職業の方は、まだ訓練してませんからか1ですね。」
「あ、そうなんだ。で、フィーネは?」
「25です。」
「そうなんだ……。って言っても、どれだけ凄いかはわからないけど……。」
「達人クラスだと10レベルですね。一流は5レベル以上ですね。」
「…………あんた、達人を超えてるじゃない。」
「チートらしいです。」
「ちーと?」
「ええ、”常識を超えた存在”になります。まあ、この年齢でこんなこと言ってるんですから、ねぇ。」
「ああ、なるほど。」
納得いったみたいね。
「それで、シア姉さまにお願いしたいことがありまして……。」
「なに?」
「もし、お父さまが領主に向いていなかったり、私の意見を取り入れようとしない頭の固い人だったりした場合、協力してほしいのです。」
「……どう言うこと?」
不振な顔をするシア姉さま。まあ、父親にこういうことを言うのは普通に怪しいので、そういう顔をされても問題ない。
「簡単に言えば、お父さまを廃して、私が領主になります。」
「えっ!?」
驚いた顔をするお姉さま。驚かない方がおかしいので、スルーする。
「領主が無能だったら苦しむのは民です。お父さまが民を苦しめ、この領を衰退させかねないのなら排除するしかありません。お父さまが有能で、私の意見も聞いてくれるならいいんですけどね。」
「……他の兄妹には話した?」
少し考えたシア姉さまが聞いてくる。
「いえ、シア姉さまが一番最初です。」
「そう。」
シア姉さまが笑顔で返事をする。
「まあ、予定が空いていた順なので、シア姉さまを先にしたかった訳じゃないですよ。」
それを聞いて、お姉さまは明らかにショボーンとした顔になる。
「……それは、言ってほしくなかったなぁ。まあ、領民を護るためなら喜んで協力するよ。」
シア姉さまとのお茶会は終わった。
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