第6話 メイリン

 時間は遡って午後、二人は練兵場の向かっていた。


「お嬢様、こちらが練兵場になります。」

「ありがとうエリザ。」


 練兵場では10人ほどの騎士が剣術の訓練をしていた。


「あと、ここにはいませんが魔法使いが数人います。」


 十数人の騎士団。規模の小さい男爵領なら、この程度が限界ですね。【人材発掘】には1人反応はある。【鑑定】の結果を見ると……、逸材ではあるけど、今の私や騎士団では扱えない。


「お嬢様、誰かよい人材はおりましたか?」

「んー。いますけど……、残念だけど今の私たちでは活かせないですね。」

「そうですか。」


 残念がるエリザ。


「あとは事をなしてから在野の人材を発掘するだけです――――」


 練兵場を眺めていた私の【人材発掘】が反応した。どうやら今出てきた魔法使いの一人みたいだ。


―――――――


メイリン

年齢:16歳 性別:女性 レベル:6

肩書き:ヴァルクハイン男爵騎士団魔術師見習い

HP:36 MP:63

筋力:2 器用度:5 敏捷力:4 知力:7 精神力:3 体力:3 魔力:3

職業:官僚Lv1

スキル:政策Lv1 適材適所Lv1 水魔法Lv4 風魔法Lv3 野営Lv3 危険感知Lv2 料理Lv2

信頼:26 忠誠:73 向上心:56 不満:5 諦め:0 邪心:0

生まれ:農家


――――――


 うーん、逸材ではあるけど方向は違うわね。でも、今あるスキルは私が逃げ出した後には使える。もう一人の方だとスキルのバランスがねぇ。


「今来たあの子、スカウトしてもらえないかしら。3日以内で。」

「お嬢様がスカウトするんじゃないんですか?」

「逸材ではあるのですけど、それより今あるスキルの方がの時有用です。なので、最初は貴女が私の目的に会わせてスカウトし、その後、最適の方に進ませましょう。」

「なるほど……。わかりました、私の方からスカウトしておきましょう。」

「お願いしますね。」


 そう言い、私たちは練兵場を後にした。




 ある日の夜、宿舎にいると――――


「メイリンいる?」


 魔法隊長が声をかけてきた。


「あ、はいいます。」

「実は、メイドからお前に話があるって言うんだけど、通していい?」

「えーと、メイドに知り合いはいないんですが……。」

「俺もそう思ったんだが、是非会いたいってことだったんでな。」

「うーん。どうしましょう?」

「俺としてはどっちでも構わんぞ。」

「まー、会うだけだったら。」

「内密の話だそうだから、お前の部屋か応接室になるんだか、どっちがいい?」

「内密っすか?隊長も一緒にいてくれるんすか?」

「どうだろう、聞いてないな。」

「んー、まー会うだけ会いますか。」

「じゃあ、お前の部屋でいいか?」

「一応応接室で、隊長も来るんならうちの部屋じゃヤバいっす。」

「なにがヤバいんだよ。」

「一応うち女っす。女性の部屋に男が来るなんて、ねぇ。」

「あー、うん、そうだな。応接室にしよう。」


 応接室でしばらく待つと、メイドがやって来た。身長はうちよりちょっと高いかな。


「夜分すいません、エリザと言います。」

「メイリンっす。よろしくお願いするっす。で、隊長も一緒でいいっすか?」

「ええ、今日のところは顔合わせと相談みたいなものなので、構いませんよ。」


 少しホッとしつつ、本題に入る。


「で、うちに何のようっすか?」

「ええ、近々私がお仕えしているお嬢様が外に出られるということで護衛をお願いしたいのです。」

「なんで内密に?」

「まだ未定ですけど、お忍びで出られる事もありえるので、その場合の根回しを兼ねてですね。」

「では、何でうちなんですか?他に女性の騎士はいるとおもうんすけど。」

「一つは若いと言うこと、もう一つは鎧を着て剣を履く騎士ではお忍びになりません。」

「確かに。でも、うちは魔法を専門としてるんで、荒事には対処しきれないっすよ。」

「ええ、そこについてはおいおい詰めていければと。まあ、打ち合わせが無駄になるのが一番いいのですが……。」


 うちは少し笑って返す。


「確かに。万が一は無駄になるのがいいっすからね。」

「では、応じていただけると?」

「そうっすね。まだ、誰の護衛するのかは聞いてないっすけど、いいっすよ。」

「ありがとうございます。ちなみに、護衛する方は三女のミルフィーネお嬢様です。」

「……それって今言っていいんすか?」

「私がミルフィーネお嬢様付きなのはよく知られてますから。」


 苦笑いするメイドさん。


「ああ、そういうことっすね。じゃあ、打ち合わせはどこでするっすか?」

「そうですね、できる限り内密にしておきたいのと、私に魔法の才があるので、それを学びに来ると言う体で明日からこの時間にこちらに来させてもらいます。」

「そっすね、簡単に魔法の練習をした後、うちの部屋でってことでどうっすか?」

「同じ女性で気があってと言うことなら説得力がありますね。」

「じゃ、そう言うことで。夕食後に魔法訓練場で合流ってことでいいっすね。」

「それがいいと思います。」

「じゃあ隊長、明日の夕食後にエリザさんを連れて訓練場に来るっす。そのタイミングでうちと合流すれば、色々隠せるっす。」

「お、おう。」


 すっかり空気になっていた隊長は完全に気を抜いていたみたいだ。

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