第5話 リン
うちはリンにゃ。領主さまのお屋敷でメイドをやってるにゃ。お屋敷に来る前は孤児院にいたにゃ。両親は知らないにゃ。今年は収穫も少にゃくて孤児院でも口減らしが必要だったにゃ。そしたら、買い物帰りに孤児院の院長先生と誰かが話していたにゃ。
「――――しかし。」
「領主様も、本来ならこういう時に補助金を増やしたいのは山々なのですが、無い袖は振れないので……。」
「今いる子たちを育てるにもある程度大きい子は必要なので……。」
「ですが、できれば10代の子でないと、兵にもメイドにも難しいですし……。」
「にゃら、うちが行くにゃ!」
「リン……。だが、お前はまだ8つではないか。」
「にいちゃんねえちゃんが頑張ってくれてるんだから、うちも頑張りたいにゃ。」
「だが……。」
「嬢ちゃんは何ができる?」
「おい。」
「料理洗濯掃除くらいはできるにゃ。」
「そうか……。では、嬢ちゃんがメイドをしてくれるなら、院長も俺も助かるな。」
「おいルーク、この子はまだ――――。」
「いや、実はな、領主さまの末娘が今年7歳になられるんだ。上の双子のご兄妹も8歳離れてる。なので、彼女に歳が近い子供が殆どいないのだ。」
「そうなのか?」
「ああ、一番近い者で14だと聞いている。」
「それでも7歳差か。」
「ああ、だがこの子なら歳も近い。将来嫁がれるときにも付いていきやすいだろう。」
「なるほどなぁ。ならば、しばらく見習いでということか、ならば――――。」
「あのにゃ。」
「ん?どうされました?」
「メイドって住み込みかにゃ?」
「住み込みですね。孤児院の方とはお休みの日にしか会えなくなりますね。」
「会えにゃくにゃるかはどうでもいいにゃ。と言うことは、三食付きかにゃ?」
「まあ、確かに三食は付くな。」
「制服は支給かにゃ?」
「当然支給される。」
「にゃら、給料を全部孤児院に送ってもらいたいにゃ。」
「なるほど……、孤児院のためですな。頭がいいんだか悪いんだか……。」
男は苦笑いをしたあと。
「ですが、肌着や消耗品、あとお休みの日に着る服などは自身で用意されることになっています。そうですね…………、給与は、2000ジンほどになるはずですので、1割ほどを生活用に残して、残りを孤児院への仕送りという形はどうでしょう?」
「いいにゃ。それでお願いするにゃ。」
「契約成立ですな。いいですか院長?」
「しかたないですね。リンが心を決めているのに断れませんよ。ルーク、リンをよろしくお願いします。」
「わかった。リンといったな、今日のところは孤児院で過ごすがいい。」
「今日からでお願いするにゃ。」
「いやいや、すぐにとはいかないんだ。書類を調えたり、君も身辺整理――――片付けがあるだろ。それに、君はよくとも他の孤児院の子に伝えてやらんとな。」
男はリンの頭を撫でる。そして彼女は孤児院から男爵邸に行くことになった。
男爵邸にに来て17日たったある日の業務後。
「リン、貴女は明日からミルフィーネ様付きになります。エリザに付いていくように。」
「ええーにゃ。まだ半月しか経ってにゃいのに、そんにゃ大役を受けていいのかにゃ?」
「ええ、先ほどエリザと話し合いがありまして、その上で貴女をミルフィーネ様付きにすることになりました。」
「にゃー!?にゃんでにゃ!?」
「上からの指示です。まだ色々教えなければならいのですが、仕方ありません。これ以降貴女はエリザに学びなさい。」
「わかりましたにゃ。」
納得はしないものの、仕事なら仕方ない。次の日から新たな仕事を頑張ろうと考えるリンであった。
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