第4話 二人目

――――翌日。


「それじゃあ見て回りましょう。」


 二人は男爵邸を巡っていく。


「ここが厨房です。普段お嬢様が来ることはない場所ですが、このお屋敷の中枢の一つと言えます。」

「なるほど、いつも私たちの食事を作ってくださるところ。確かに中枢ですね。」

「お嬢様がこちらにいらっしゃるなんて珍しいですね。」


 そこに現れたのは、180センチを超える身長の人物だった。肩まで伸ばした赤い髪を後ろで一つにまとめた――――女性だ。


「おおー、大きいですね。」

「いやあ、なんか知らんけどでっかくなっちまってねぇ。ああ、アタシはミリィ。この厨房の主、料理長さ。」


 まさかこの女性が料理長とは。


「いつも美味しいお料理をありがとうございます。」

「いえいえ、皆さんが美味しそうに食べてくれるのが一番さね。ま、火とか刃物とか危ないものもあるんで、気をつけて見ていってください。」

「ありがとうございます。危ないところはエリザに守ってもらいます。」


 では、と言って料理長は仕込みに移った。私は、厨房を見学しながら、【人材発掘】スキルでいい人材がいないか見てみる。


「はいにゃー、ちょっとどいてにゃー。」


 後ろからお皿のタワーが近づいてくる。高く積み上げられたお皿のツインタワーをあろうことにお盆の上にのせて向かってきている。

 私たちが通路を開けるとすぐ横をすり抜け洗い場までタワーを崩すことなく運んで行き――――


「にゃーんにゃにゃにゃー。」


 鼻歌?を歌いながら洗い出した。


「何かすごいですね、あれ。」


 青い髪の猫獣人の少女がものすごい勢いで、皿洗いしている。


「あーあの娘はリンですね。今月入ったばかりの新人ですね。」

「そうですか。まあ、あの様子だと何かの才能はありそうですね。」


 そうこうしている内に、皿洗いも終わったらしく……。


「姉御!次は何するにゃ?」

「姉御言うな!」


 料理長から拳骨を貰っていた。


「ん?」


 この娘から【人材発掘】の反応がある。とりあえず【鑑定】してみる。


――――――


リン

年齢:8歳 性別:女性 レベル:1

肩書き:ヴァルクハイン男爵家新人メイド

HP:25 MP:2

筋力:3 器用度:7 敏捷力:7 知力:2 精神力:2 体力:5 魔力:1

職業:暗殺者Lv1

スキル:短剣Lv1 忍び足Lv1 危険回避Lv1 空間把握Lv1 回避Lv1 探索Lv1料理Lv2 洗濯Lv1 掃除Lv2

信頼:30 忠誠:61 向上心:66 不満:0 諦め:0 邪心:0

生まれ:孤児


――――――


「おおー。」

「お嬢様?」

「あの娘……、暗殺者の職業ですね。」

「!暗殺者ですか。」


 さすがにお屋敷勤めのメイドが暗殺者だと、不味いですよね。


「いえ、成長の方向がです。それに、スキルが殆ど最低レベルしかないですから、彼女じゃ私はともかく、エリザも殺せそうにないですね。」

「そうですか……。では、彼女も?」

「そうですね、引き込みたいです。」

「じゃあ、彼女もお嬢様付きにさせますか?」

「そうですね。礼儀作法は後から覚えさせればいいでしょう。」

「では、私だと年が少し離れているので、歳の近い彼女も専属にすると言うことで申請しましょう。」

「よろしくお願いします。」

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